地震や水害など様々な災害が発生しています。災害に伴うリスクを考えるときは、災害による直接的な被害を減らすことだけでなく、長引く避難生活などが原因で発生するリスクを減らすことも大切なのではないでしょうか。
災害後に発生するリスクの一つに、災害関連死があります。災害関連死とはどのようなものなのでしょうか。
災害関連死とは
災害関連死とは地震、津波、火災、洪水など災害の直接的な被害によって亡くなることではなく、長引く避難生活や生活環境の悪化、災害による疲労やストレス、医療が十分に受けられずに病気が悪化するなどの理由によって亡くなることを言います。災害関連死の主な原因は、心筋梗塞、脳血管障害、エコノミー症候群、肺炎などです。高齢者や基礎疾患のある方は、特に注意が必要であると考えられています。
2016年に起こった熊本地震では、災害で直接的に亡くなった方よりも、災害関連死によって亡くなった方が多いことがわかっています。災害から命を守るためには、避難後の健康を保つ取り組みも重要と言えるでしょう。
災害関連死を防ぐためにできることとは
①体を動かす
エコノミー症候群は、長時間同じ姿勢をとり続けることによって生じた血栓が、肺の血管につまって息切れや胸痛などをひきおこします。場合によっては命を落とすこともあります。新潟県中越地震や熊本地震では、避難後にエコノミー症候群で亡くなった方がいます。エコノミー症候群を予防することは、災害関連死を減らすうえで重要と言えます。
長時間同じ姿勢をとると、エコノミー症候群のリスクが高まります。避難所生活や車中泊では、同じ姿勢を取り続けてしまいがちですが、できるかぎり体を動かすようにしましょう。可能ならば軽いウォーキングなどを取り入れてみてください。ラジオ体操をするのもいいですね。スペースが取れない場合は、屈伸運動などその場でできる運動をします。つま先をグー・パーと動かす・足首を回すなどの動作も取り入れていきましょう。
②水分を補給する
災害時は給水への不安やトイレを自由に使えないというプレッシャーから、水分補給を控えてしまいがちです。ところが、水分補給を控えると血行不良や血栓が起こりやすくなり、エコノミー症候群・脳血管障害・心疾患などのリスクが高まります。十分な水分補給を心がけてください。
飲料水を確保しておくこと、簡易トイレを準備しておくこと、身近なものを使って簡易トイレを作る方法を知っておくことは、水分補給へのプレッシャーを和らげることにつながり、災害関連死対策にもなります。日頃からの備えも意識して行いましょう。
③睡眠環境やプライバシーの確保
避難生活が長引くと睡眠障害に陥ったり、プライバシーが保たれない環境にストレスを感じるようになります。こうしたトラブルへの対策も考えておきましょう。
耳栓やアイマスクなど快眠グッズを準備しておくと、睡眠の質を確保しやすくなります。靴下を履いて足元をあたたかくすることや、日中に体を動かすことも効果的です。
プライバシーを確保したいときは、段ボールを使ってパーテーションを作る方法が効果的です。避難所生活が長引いてきたときは運営者と相談しながら、プライバシー対策も取り入れていきましょう。
④感染症対策
避難生活は集団生活であることや、ストレスにより免疫力が低下するなどの理由により、感染症が流行しやすくなります。感染症対策も積極的に取り入れていきましょう。
非常用持ち出し袋にマスクを備え、しっかり着用してください。手洗いの励行、除菌ティッシュやアルコール消毒液を活用した手指の消毒も行いましょう。
⑤薬やお薬手帳の準備
継続して服薬をすることは、持病の管理につながります。非常用持ち出し袋の中に薬を準備しておくようにしましょう。東日本大震災のときには、お薬手帳の情報をもとに薬が処方されました。お薬手帳のコピーもあわせて準備しておくようにしましょう。
⑥ストレスを軽減させる
避難生活ではどうしてもストレスがたまってしまいます。ストレスをため込むことは心身に大きな負担になるので、少しでも軽減できるようにしていきたいですね。
会話はストレスを軽減させる効果があると考えられています。周囲の人と話をして、不安を共有し和らげていきましょう。主体的に行動することは心にハリをもたらすことから、避難所の運営に携わる・役割を持つこともいいでしょう。非常用持ち出し袋の中に好きな本や好きなキャラクターのグッズなどを準備しておき、不安感が強いときに読んだり眺めたりすることも効果があるのではないでしょうか。
まとめ
・災害関連死は避難生活や災害のストレスなどから起こる
・長時間同じ姿勢を取ることを避け、定期的に体を動かそう
・水分補給はしっかりと行う
・睡眠時間やプライバシーを確保することも大切
・マスクを着用し、感染症予防に努める
・薬やお薬手帳のコピーを準備し、災害後も継続した服薬を心がける
・自分なりのストレス対策を考えておこう
参考サイト
◆公益財団法人 日本ケアフィット共有機構「災害関連死 高齢者・障害者が多い原因は?東日本大震災と熊本地震の事例から考える」