阪神・淡路大震災、東日本大震災や熊本地震といった大規模災害が立て続けに起こり、今も南海トラフ沖地震が大きな被害を及ぼすのではないかと危惧されています。
防災の備えが重要とされる中で、正しい情報を素早く伝達して認知して貰うシステムを開発する事が必要になりました。
総務省は地方公共団体を対象に新しい災害情報伝達システムの実証事業を行う事を決定しました。
今年から茨城県・三重県・兵庫県・愛媛県・熊本県の指定市町村で行われる総務省災害情報伝達システムの取り組みを調べてみました。
防災行政無線の戸別受信と情報端末での利用強化
高齢者や外国人への対応を強化
災害が発生した時に、耳が遠くなった高齢者やそもそも言語が分からない外国の方は避難が遅れてしまう可能性があります。
その為、多言語への対応と高齢者でも気が付く避難指示の伝達方法が必要となっています。
この施策では各ご家庭に防災行政無線の受信機を設置して音声と共に文字表示にて警告を流し、テレビと連動させて緊急情報を伝達するようにします。たとえ電源を切っていても、テレビが点くようになるので、高齢者でも気が付き易くなるでしょう。
外国人には、表示する文字を多言語に対応させると共に、スマートフォンなどの情報端末にて多言語に対応した防災無線を聞ける様にします。
同時に避難所の情報などを調べられる様にしますが、通信回線がダメージを受ける場合に備えて、市役所のサーバーより公共場所や防災公園に設置したWiFi機器から情報を配信出来るようにします。
地域BWAを利用した防災情報個別配信システム
タブレットでより使い易く
戸別の防災無線受診による対応は高齢者にとって便利な機能ですが、必ず機器がある部屋やテレビの前に居る訳ではありません。
そこで、スマートフォンより画面が大きいタブレットへ直接災害情報や防災に関する情報を配信するのが地域BWA(Broadband Wireless Access広域無線通信)を用いたシステムです。
役場から発信された防災情報を小学校などに設けられた基地局から無線で発信する事により、各家庭のタブレットへ直接情報を届けます。
基地局は無停電電源装置により停電対策が行われるので、インフラの損傷にも比較的耐久性があります。
見たい情報を地域内なら何処でも見る事が出来るのがタブレットの強みでもあります。
V-Lowマルチメディアを用いた配信
様々なメディアに情報を表示させる
災害情報を伝達するシステムとして、専用のタブレットなどを配布するのも有効ですが、普段から手にする機器を用いて情報を知る事が出来れば、非常に便利です。
V-Lowマルチメディア放送では電話を直接鳴らす事で情報を発信できると共に、スピーカーから音声を流したりラジオやスマートフォンへの放送も出来ます。
加えてドアホンのモニターといった備え付け機器に対応させる事も可能です。
今回の試験でどの様な受信方法にニーズがあるか確認して、最適化させていく予定です。
聴覚障がい者への対応
利用習慣を身に着ける事も考慮
災害時の警報として多用されているのは、地域の防災無線を受信したスピーカーによるサイレンです。
しかし、聴覚障がい者には大音響であっても、緊急である事を感じ取る事が難しい場合があります。
そこで、防災アプリや防災メールといった視覚的手段としてテレビを強制的に起動させ避難情報の通知を行います。
また、平時からテレビのデータ放送などを用いて防災情報や役所からの情報を流す事により、利用する習慣を身に着けて貰う事も考えられています。
災害・防災情報の伝達機能強化
より情報を得やすい手段を探す
この取り組みでは、役所の防災情報システムと河川監視システムなどの防災システムの連動を高めつつ、スマートフォンでの安否確認システムといった災害情報伝達システムの改善を行い、素早く正確に情報が伝達されているかを検証します。
この検証結果に基づき、アプリの改良やネットワークインフラの整備を行う事で、実際に災害があった時でも安定した情報伝達と避難行動を行える様にする事が目的です。
タブレット・スマートフォンのパーソナライズ災害情報配信システム
分かり易い操作を目指す
スマートフォンやタブレットで確認出来るウェブサイトやSNSの公式アカウントを用いた情報配信は既に行われていますが、高齢者には見づらいものもあります。
自主防災組織による情報共有する手段が限られているという問題もありました。
そこで、スマートフォンとタブレットに情報配信アプリを入れる事で避難指示だけでなく情報の共有も出来るようにしようという試みです。
安否確認や車で避難可能な施設の情報共有から外国人への多言語による情報提供も期待されています。
市区町村の災害対応業務に特化した防災情報システム環境
情報の正確性を引き上げる
熊本地震の時は、SNS等による様々な情報発信により助けられた場面もあれば、逆に的確な対応が出来なかった事例がありました。
例えば、SNSで食料不足の情報が流れた後に、支援物資を送ったところ事態は解決していて余った食料をどうするかという問題が起こったケースがあります。
この施策では現場からの情報やSNSでのつぶやきを元にして被害状況・予兆情報・現場状況を災害対策本部へと送り、効率的な公助の実施と情報発信を行う事が目的です。
直接市民が何かをするという改善ではありませんが、感じ取れる恩恵は大きいと考えられます。
今年から行われる災害情報伝達システムの取り組みですが、まずは実証する為に一部自治体にだけ導入が進められます。
そこから問題をブラッシュアップして、よりよいシステムが早急に導入される事を期待しましょう。
まとめ
・総務省では一部自治体を対象に新しい災害情報伝達システムの実証を行う。
・今後、より良くなったシステムが全国へ広がる事が期待される。