東日本大震災では自衛隊や消防、警察、海上保安庁のヘリが孤立した山や流された家屋の屋上にいる被災者の救助に活躍しました。航空自衛隊百里救難隊は、増強された隊員と装備を使い、救難ヘリコプターで初動における救助者の約三分の一の尊い命を救助しておりました。救援物資の輸送もヘリが担った重要な任務です。
しかし、ヘリの飛んでいる姿を見た事はあっても実際に乗り込んだことがある方は少ないのではないでしょうか? 事前の説明がある体験搭乗などでは落ち着いて乗れますが、被災時は悠長に説明を受ける余裕はありません。
そこで、今回は被災地などでヘリコプターに救助される時に注意するべき事をお伝えしたく思います。
ヘリコプターの特徴と危険個所は?
メインローターとテイルローターの位置に注意!
ヘリコプターと聞いても具体的な構造がどの様になっているか知る機会はなかなかありません。しかし、「ここは危険!」という部位があるので名称を交えて紹介します。
まず、ヘリコプターが飛行する為にはメインローターと呼ばれる巨大な回転翼が必要です。
長くしなりのある素材で出来ていて、機種によっては危険な高さとなる場合があります。
ヘリに近づく時は姿勢を低くし乗員の指示に従いましょう。
また、機体を浮かせる力を発生させるほどエネルギーがあるので、離着陸の前後などはダウンウォッシュと呼ばれる強烈な風が起きます。
砂利や小石などが飛んでくる事があるので、目などを傷つけない様にかばう必要があるほどです。
加えて、殆どのヘリコプターにはテイルローターと呼ばれる比較的小さな回転翼があります。
このローターが無いとヘリはメインローターの回転の反作用によってクルクルと機体まで振り回されてしまうのです。テイルローターは後方に付いていますので後ろ側から近寄ると危険を及ぼします。
CH-47チヌーク輸送ヘリの様にツインローターという大きな回転翼が二つある機体はテイルローターが無くても安定性を保つことが出来るので、真後ろから乗り込めるようになっています。
ヘリコプターによる救助方法
大きく分けて二種類ある。
ヘリコプターによる救助方法には、「ホイスト」と呼ばれるワイヤーで吊り上げる方法と、ヘリが着陸して出入り口から直接被災者を乗せる方法があります。
東日本大震災では、本来ヘリが着陸できない場所で地面スレスレの高さに機体を空中停止させるホバリングという技術を駆使して、一度に複数の被災者を乗せるという高等技も行いました。
ホイストで救助される場合、被災者は自力でホイストの先端にある輪(ボイヤントスリング)に身体を入れるか、救助員により抱えられて救助されますが、重傷を負っている場合は「ストレッチャー」と呼ばれる担架を用いて救助を行います。
救助される時の注意点
救助員の指示に絶対従う事
ヘリコプターで救助される時は注意するべき事があります。
まず、ホイストで救助される場合の注意点です。
・ヘリコプターが巻き起こすダウンウォッシュで飛び散る砂埃から身体を守り、持っている物が飛ばされない様にしてください。
・降りて来た救助員の指示に従ってください。ローターの音で大きな声で呼びかけていても聞こえない場合があるので、ジェスチャーなども見るようにしましょう。
・救助員にしっかり掴まりましょう。安全の為にロープなどで体を固定して貰えますが、足が宙ぶらりんとなって非常に不安な気持ちになります。ストレッチャーを用いる場合も救助員がしっかり支えてくれるので、信頼しましょう。
・自力でホイストに身体を通す時、静電気の放電のため少し離れた場所にスリングを接地(接水)させる事があります。空中にある時は無理に手を伸ばさず、救助員を信じて自分の近くに来るまで待ちましょう。
そして、着陸したヘリに乗り込む場合の注意点です。
ダウンウォッシュと救助員の指示に従う事は同じです。
・乗り降りの時に頭上と足元に注意する。低い姿勢を保ちつつ、顔は前にしっかり向ける事が大切。
・物が飛ばされない様に、しっかりと抱えて乗り降りする。万が一飛ばされても絶対に走って取りにいかないようにする。
・乗り降りする時は長い物を持ったり、頭上に手を伸ばさない様にする。
・乗降口から出入りする時は、基本的に機体の正面から真横までの範囲を移動して、パイロットから姿が見える様にする。但し、チヌークの様なツインローターで、おしりに乗降口がある機体は搭乗員の指示に従って真後ろから入る。(ローターに触れる危険がある為)
この様に、ヘリで救助される場合は注意事項を守る必要があります。
救助が必要になった時は混乱している事が多いので、絶対に救助員やヘリの乗員が出す指示に従うという事を頭の中に入れておくと良いでしょう。
まとめ
・乗務員や救助員の指示には絶対に従う。
・ヘリコプターに乗る時はローターに注意する。
・ローターの回転による風と飛散物に注意。