2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生し、東日本大震災という未曽有の大災害を引き起こしました。
この地震では、東京をはじめとする都市圏の高層ビルが大きく揺れる「長周期地震動」が観測され、高層化が進む都市圏の防災対策に大きな課題が突き付けられました。さらに、現在懸念されている南海トラフ沿いの巨大地震が発生した場合も、東京、名古屋、大阪の三大都市圏において長周期地震動が各地で観測されると予測されています。
マンションバブルに湧く首都圏において、高層マンションに居を構える方も多くなっている今日、長周期地震動の実態と、その防災対策を改めてまとめてみたいと思います。
高層階にお住まいの方、高層階のオフィスに勤めていらっしゃる方は必見です。減災につながるよう、ぜひ実践してみましょう!
そもそも、長周期地震動とは何か?
テレビなどで普通に使われるようになってきた「長周期地震動」ですが、そもそも「長周期地震動」とは、一体どんな地震のことを言うのでしょうか?
地震とは地面が揺れる現象ですが、その「揺れ方」は場所によって様々です。ガタガタっと細かい揺れを感じるところもあれば、グラーングラーンと船に乗っているかのようにゆっくりとした揺れを感じるところもあります。長周期地震動というのは、後者のような「ゆっくりとした揺れ」をもたらす地震動のことを指します。
「周期」とは、わかりやすく言うと、「振り子が行って帰ってくるまでの時間」のことです。周期が長いとゆっくりとした大きな揺れになり、周期が短いと細かく小さな揺れになります。
つまり「長周期」とは「ゆっくりとした大きな揺れ」という意味を持ちます。
一方、建物にはそれぞれ「固有周期」と呼ばれる「揺れやすい周期」を持っています。(固有周期は、建物の構造や高さ、重量などでそれぞれ違います。)
地震動の周期と建物の固有周期がぴったり合ってしまった場合、建物は共振を起こし、大きく揺れる結果となります。
一般的に高層ビルは、固有周期が「長い」傾向にあります。従って、「長周期地震動」の場合、高層ビルは共振しやすくなり、大きく揺れるという現象が発生しやすくなるのです。
大きくゆっくりとした横揺れが止まらない!その実態とは?
地震の揺れの恐怖は実際に体験してみないとなかなかわかりにくいものです。そこで、実験映像をご覧いただき、揺れの実態を疑似体験していただきたいと思います。
いかがでしたか?
高層階の揺れは、「ゆっくりと大きな揺れがなかなか止まらない」のが大きな特徴です。南海トラフ沿いの巨大地震において最大クラスの地震を想定した場合、高層ビルの最上階では、近畿圏や首都圏の一部にて横方向の揺れで最大3mほど変位するという予測も出ています。
このような大きな振幅の揺れの中では、人は立っていることもできません。さらに、テーブルの下に逃げ込むといっても、通常の地震と違い、テーブル自体も左右に大きく揺さぶられるため、防御効果は発揮できない可能性もあります。従って、「地震が来たら逃げればいい、家具が倒れてもテーブルの下に隠れれば大丈夫」という安易な考えでは、実際に地震が来たとき、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
防災を考えるときは、常に「最悪の状態」を想定して準備することが大切です。しかしそれは、完璧に災害に対して備える、という意味ではありません。たとえ、身動きが取れなくなっても、周囲の危険なものだけ排除しておくことで命は助かりますし、怪我をしたとしても軽症で済む可能性は高くなります。
防災対策というと完璧な準備が必要と思われがちですが、少しでも被害を減らしていく「減災」という考え方を取り入れることで、防災対策はとても取り組みやすくなりますよ。
家具・オフィスの什器は固定が必須!
映像でご覧の通り、高層階において長周期地震動が来たときに人の命を脅かすものは、暴れまわる什器や転倒する大型家具です。地震の際は、重いものが動きやすくなりますので、冷蔵庫、食器棚、本棚といった大型家電・家具、オフィスではコピー機や大型キャビネットなど、しっかりと固定をしておく必要があります。
固定方法は、大型の食器棚やタンス、本棚などはL字型金物による頂部の固定が最も効果的です。難しい場合は、粘着シートタイプのL字型固定具、ベルトタイプの固定具も効果があるといわれています。
よく使われている天井ポールタイプは、単独で使用すると、天井に強度がないため揺れの衝撃で天井を壊してしまいます。天井に一枚板を挟み、かつ、家具の下に滑り止めマットなどを敷いておくと、効果が期待できます。
オフィスのコピー機や大型キャビネットは、ベルトタイプの固定具で、床や壁にしっかりと固定することをお勧めします。重量のあるものは、真っ先に動きやすいので注意が必要です。
また、コピー機やワゴンなどのキャスター付き大型什器は、いったん動き出すと止まりません。普段から、キャスターのストッパーをしっかりとかけておき、突然の揺れにも対応できるようにしておきましょう。
長周期地震動では、家具の転倒のほかに、揺れがなかなかおさまらず家具が暴れまわってしまう危険性を伴います。正しく家具を固定し、いざという時に後悔しないような取組みをしていきましょう。
まとめ
・高層階の揺れ方は「大きくゆっくり、なかなか止まらない揺れ」である!
・長周期地震動の高層階の揺れは、人は立っていられないことを念頭に、家具の固定などの対策を取る!
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参考・引用サイト
◆気象庁ホームページ・長周期地震動とは?
◆気象庁ホームページ・長周期地震動による高層ビルの揺れ方
◆内閣府・防災情報のページ・「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告」について 報道発表資料 南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告 本文 pp.3~6
◆内閣府・防災情報のページ・「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告」について 報道発表資料別冊⑥長周期地震動の推計結果~超高層建築物における最上階の揺れ~p.24
◆NHKそなえる防災・今すぐできる!家の中の地震対策