「食物アレルギー」
ニュースや子育て番組でよく聞く言葉で、子育てには必須の知識と言われていますよね。
自分の体を養い育ててくれるはずの「食べもの」が、体調を悪くするばかりではなく命の危険まで及ぼしてしまう。
これから子供を持つママさんパパさんや食物アレルギーを持つ方は、とても気になりますよね?
去る平成28年1月29日に東京都健康安全研究センター主催で開催された「平成27年度 子供のアレルギー講演会 正しく学んで今日から実践 よくわかる! 子供のアレルギー」を聴講してきました。
その中から「アナフィラキシーショック状態における救急救命」に焦点を絞って、まとめてみました。
アナフィラキシーショックとは?
アレルギーが引き起こし、命にかかわることも
講習当日は平成24年に起こった「富士見台小学校児童死亡事故の検証結果報告書」の時間軸を参考に、アナフィラキシーショック状態による救急救命方法が説明されました。
アレルギー反応については、事前にある程度予習して臨んだのですが、救急救命方法については、日常の中で知る事がなかったので、びっくり。
これは是非、ママさんパパさんや保育士さんなどお子さんに接する機会が多い方は、知っておくべき基礎知識だと痛感しました。
まずアナフィラキシーショックとはどういう状態を言うのか?
「アナフィラキシー」と「ショック」は分けて使われるという事を今回はじめて知りました。
「アナフィラキシー状態」というのは、アレルギー症状が2つ以上同時に発現した状態のことを言います。
目の充血・発疹・失禁・脱力……実にたくさんの組み合わせがあります。
外見からアナフィラキシー状態が確認されたら、すぐに救急車を要請する事が必要です。
外からは見えない体の内面でも症状が出ている可能性があり、「ショック状態」へ進行する可能性が高いからです。
ではその「ショック状態」というのは、どういう状態なのでしょうか?
ショック状態とは「血圧低下に伴う意識障害」です。
かみ砕いて言うと、血管がものすごく開いてしまって、心臓が一生懸命拍動しても一向に血液が循環せずに意識が朦朧とし始める状態です。
これはとても危険な状態で、生死に関わります。
ショック状態になったらどうしたらいいのでしょうか?
呼吸器系の症状、呼吸困難などが出た場合はすぐに「エピペン」を使用するのが望ましい……とされています。
「エピペン」とは深刻なアレルギーを持っている人が携帯している救急用の注射のことです。
本人が「エピペン」を携帯していれば、近くにいる方が注射することが必要という事ですね。
では、もしも「エピペン」がなかったら?
それは以下の「アナフィラキシーショックの救命方法」で詳しく説明します。
アナフィラキシーショックの実例
4年前、小学校で起こった死亡事故経過
平成24年12月に東京都調布市で食物アレルギーによって女児が死亡しました。
その事故の経過を見ながら、救急救命法を考えてみましょう。
- 13:22 女児がアレルギー食材を食べて32分後「具合が悪くなる」
- 13:24 顔が紅潮 息が苦しそう ※01
- 13:28 具合が悪くなって6分後 呼吸が苦しくなる 養護教諭は救急車の要請が必要と判断
- 13:30 救急車要請 ※02
- 13:31 呼びかけに応じなくなる 症状発現から9分後 ※03
- 13:35 呼吸なし 脈波触知せず 顔面蒼白 ※04
- 13:36 エピペン注射 AED用意 通電の必要なしのメッセージ ※05
- 13:40 救急車到着 10分で到着
- 14:12 杏林大学到着
- 16:29 死亡確認
※01 では、「顔の紅潮」と「息が苦しい」と2つのアレルギー反応が確認され、明らかなアナフィラキシー状態と思われる。
※02 総務省消防庁「平成27年度版 救急救助の現況」によれば、救急車の現場到着所要時間は全国平均で8.6分 病院収容まで39.4分となっている。
※03 アナフィラキシーショック症状の発現
※04 13:31から4分。通常脳は、血液が循環しない事による酸素欠乏により、3分を経過すると非可逆の変化を起こす(脳死にから死亡に至る)
※05 アナフィラキシーショックの場合、AEDは異常を検知しないので手動で心臓マッサージをしなければならない。
最初のアレルギー反応が見られてから2分でアナフィラキシー(複数の症状が発現)に進行しています。
さらにはアナフィラキシーを起こしてからショックを起こすまで7分。
ショックを起こしてから呼吸停止まで4分。
いずれもごく短い時間で症状が進行したことがわかります。
アナフィラキシーショック症状になると死に至るまでごく僅かな時間しかない為、命を救うためには現場での救命措置が全てと言っても過言ではないとの事でした。
アナフィラキシーショックの救命方法
現場で取り得る救命措置とは何か?
- アレルギー症状を呈したら、意識があっても安静にして、アレルギー物質の拡散を防ぐため決して動かさない。
- アナフィラキシー症状を呈したら、即座に救急車の要請を行う。
- アナフィラキシーショック症状を呈したら、エピペンの注射を行う。
- エピペンがない場合は、仰向けに寝かせて、足を上げて、血流を脳に集める。
- 嘔吐して気道を塞ぐのを防ぐため、顔を横に向ける。
- AEDは使用できないので、手動の心臓マッサージを行う。
食物アレルギーが疑われる場合は医師の診断を受け、もしもエピペンが処方されたら必ず持ち歩く事が必要です。
また、食物アレルギーでアナフィラキシーショックを起こしている現場に居合わせたら「エピペンを探す」という知識を持たなければなりません。
アナフィラキシーショックにおいては、現場ではエピペンのみが唯一命を救う道具と考える必要があります。
(編集部注:エピペンは必ず医師の処方を受けてから購入してください。また、確実に本人のエピペンを使う様にしましょう)
とにかく驚いたのは、対応する時間が余りにも少なすぎで、救急車の到着を待ってはいられないという事でした。
周りにいる人の動きが、その人の命を救うという事です。
人の命を救うには、知識と行動力が必要だとよくわかりました。
是非、皆さんも応急処置は学んでおきましょう。
その知識で、何かあった時、家族の命が救えるかもしれません。
まとめ
- 食物アレルギー症状を2つ以上、呈していたらアナフィラキシー状態
- アナフィラキシー状態を呈したら、救急車出動要請
- アナフィラキシーショックを起こしたら、死までの時間は極僅か
- 重いアレルギーがある場合は必ずエピペンを携帯し、いざという時は迅速に使用する