北朝鮮は2017年9月3日に、6回目の核実験を成功させたことを発表しました。これを受けた国際連合安全保障理事会は2017年9月11日に、「北朝鮮による繊維輸出の禁止」「北朝鮮への石油の供給規制」といった制裁決議案を、全会一致で採択しました。
このニュースの中で鍵となるのは、「国際連合安全保障理事会」(以下「安全保障理事会」と呼ぶ)です。安全保障理事会とはどのような経緯で作られた組織であり、どのような役割を担っているのでしょうか。今回は北朝鮮関連のニュースで耳にする「安全保障理事会」について解説します。
安全保障理事会の成り立ち
安全保障理事会は国際連合の機関の一つです。国際連合は第二次世界大戦を教訓として設立された組織であり、その目的の一つに「国際平和と安全の維持」が掲げられています。
国際連合が発足する前は国際連盟という機関が存在しましたが、戦争の原因を強制的に解決する機関を持たなかったため、第二次世界大戦を止めることができませんでした。第二次世界大戦の反省から、国際平和と安全の維持に対して重大な責任を背負う機関として設立されたのが安全保障理事会です。
安全保障理事会の決定には強制力があり、加盟国はその決定を実行することが義務付けられています。国際連合憲章第7章では「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」が定められていますが、その強制力は安全保障理事会によって決定され、国際連合加盟国の協力の下に行使されます。
安全保障理事会とは、過去の戦争を教訓として作られた機関であり、世界の平和と安全を維持するために、大きな権力と強制力を持っている機関であると言えるでしょう。
安全保障理事会の役割

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安全保障理事会は国際平和と安全の維持に対して重大な責任を背負う機関ですが、具体的にどのような役割を担っているのでしょうか。その役割は、大きく分けて2つあります。ひとつは、加盟国の紛争問題を調停し平和的解決へ結びつけることです。もうひとつは、紛争の拡大などやむをえない場合に直接的な軍事力を加盟国から結集して、紛争当事者を実力で押さえつけて平和への糸口に向けて導くことです。
安全保障理事会は、国際平和や安全を維持するために、それを脅かす紛争を平和的手段と軍事的手段によって解決に導く役割と担っていると言えるでしょう。
安全保障理事会のシステム

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安全保障理事会は、15ヶ国の代表者で構成されています。代表国の内訳は、常任理事国と呼ばれる5ヶ国(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)と、2年毎に国連総会で選ばれる非常任理事国10ヶ国とで成り立っています。原則として1国1票の投票権を持ち、国際紛争の解決に向けた様々な行動の取り決めを行います。
議案を可決させるためには、15国のうち9国の賛成票が必要になります。実質事項の可決には、常任理事国5国の賛成票を含む9国の賛成票が必要になります。ただし常任理事国には「拒否権」という特別な権利が与えられています。拒否権を用いた場合、「常任理事国5国の賛成票を含む」という条件を満たすことができなくなり、議案は否決されてしまいます。そのため、アメリカとソ連が対立していた東西冷戦の時代には、多くの議案が否決されてきました。
また、国際連合が直接軍事力を行使する国連軍を編成した事例は1950年の朝鮮戦争のみであり、他は武装解除など平和的行動が行われている事を監視する国連平和維持軍(PKF)が平和維持活動(PKO)の度に編成されるにとどまります。
安全保障理事会は、国際連合加盟国の力を結集させる権限を持つ非常に重要な機関ですが、一方で制約が多い組織でもあると言えるでしょう。
まとめ
・安全保障理事会は第二次世界大戦の教訓から生まれた
・安全保障理事会は世界の平和と安全の維持を目的とした機関である
・安全保障理事会は15ヶ国で構成され、議案を可決するためには、常任理事国5国を含む9ヶ国の賛成票が必要である
・常任理事国には拒否権が与えられている