2016年10月8日に爆発的噴火を起こした阿蘇山は今も活動を継続しており、気象庁は入山を規制する噴火警戒レベル3を維持しています。
8日に発表された気象庁の情報では火口の底に水が溜まる湯だまり(火口湖)は確認されていませんでしたが、10日に上空より撮影を行った読売新聞による報道では、湯だまりが確認されています。
今後も爆発的な噴火が起こる可能性があり警戒が必要ですが、阿蘇山はどの様な構造の火山で、過去にはどれほどの規模の噴火活動があったのでしょうか?
阿蘇山について詳しく調べてみました。
世界有数のカルデラ火山
火山の中でも有数の大きさを誇る
九州の熊本県の阿蘇山は「外輪山」というドーナツの輪に似た山と複数の中央火口丘より成り立つ世界有数の大きさの火山です。
外輪山は南北25km・東西18kmもの範囲に広がり、外周だけで128kmもの距離があります。
外輪山を持つ火山を二重式火山または「カルデラ火山」と呼び、外輪山の内部に広がる平坦な地形を「カルデラ地形」と言います。
カルデラは火山の噴火により地形が陥没したり大量の噴石や溶岩が噴出したりする事で形成されます。
ちなみに世界最大のカルデラはインドネシアの「トバカルデラ」で、日本最大は北海道の屈斜路湖(くっしゃろこ)カルデラです。
阿蘇山はカルデラ内部に阿蘇市・高森町・南阿蘇村という3つの自治体があり、約5万人の人々が生活しています。
活火山のカルデラ内部にこれだけ多くの人が生活しているのは世界でも珍しいとされています。
中央には阿蘇五岳(あそごがく)と呼ばれる中央火口丘群の中でも目立つ根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳(えぼしだけ)・杵島岳(きしまだけ)という5つの山があり、今回噴火を起こしたのは中岳にある第1火口になります。
中岳は阿蘇山の中では高岳に次ぐ1,506mの高さを誇り、7つもの火口を持っています。
「湯だまり」と呼ばれる火山湖が火口の中に形成され、平時はエメラルドグリーンに見える熱湯を見に来る観光客で賑わいます。
火山活動が活発になると湯だまりが少なくなり火口の底が赤熱すると言われていて、今回の噴火直後は湯だまりが確認出来なかったと気象庁は発表しています。
現在は湯だまりが再び形成されていますが、水蒸気爆発の危険もあるので警戒が必要です。
噴火時のエネルギー
火山灰が九州全域に及ぶ可能性も
阿蘇山はその巨体に見合ったエネルギーを内に秘めています。
今回の噴火でも噴煙が高度1万m以上まで登ったという報道があり、火山灰も愛媛県など東の遠方に位置する県でも確認されています。
これらの現象は今回の噴火のエネルギーが如何に強力だったかを物語っています。
気象庁が定める噴火警戒レベルが最大の「レベル5」になった際は周辺住民の速やかな避難が求められていますが、地質調査などから得た情報から溶岩流の被害は中岳から約7kmの範囲までに広がると予測されています。
噴石や火砕流も4km近い範囲に及ぶと考えられています。
これらの被害範囲は限定的になる見込みですが、火山灰による被害はより広域に及ぶ事が今後も考えられ、風向きによっては九州全域に及ぶ可能性も指摘されています。
阿蘇山ではかつてカルデラを形成したとされる大噴火が地質調査より明らかになっており、特に約9万年前に起こったとされる噴火では阿蘇山の火山灰が北海道や朝鮮半島でも確認されています。
火砕流が九州中央部から山口県の秋吉台まで達しており、阿蘇山に破局的な噴火が起こった場合は九州全域が危険域になると考えられています。
数万年に一度という規模の爆発が早々起こるとは思えませんが、今後も大規模な噴火に備えた対策が必要です。
阿蘇山では30人が収容可能な退避壕が13か所作られており、1989年の噴火などで噴石に耐えられる事が証明されています。
また気象庁福岡管区気象台が常時監視を行っています。
今も活発に活動を続けている阿蘇山ですが、一日でも早く噴火が収まる事を祈ります。
まとめ
- 阿蘇山は世界有数の大きさを持つカルデラ火山
- 巨大な火山だけあり、内に秘めているエネルギーも膨大
- 過去には九州全体を火砕流に巻き込み、火山灰が北海道まで到達したこともある
参考サイト
- 火山活動の状況 気象庁
- 阿蘇山 阿蘇市ホームページ