2017年2月16日、埼玉県三芳町にある通販企業のアスクル株式会社が保有する物流倉庫で火災が発生し、1週間近く燃え続けるという事態が起きています。
21日には社員の一部が消防隊員に無断で荷物を取りに入るという危険な行為をしてしまうという出来事もありました。
今回は、なぜこれだけ長期間の火災となったのか考えつつ、防火対策の必要性と火災が起きた時にすべき行動の流れを紹介します。
なぜ火災が燃え続けたか
屋内かつ可燃物が多い環境
今回、火災が発生した「ASKUL Logi PARK 首都圏」は最新の物流管理システムを導入した首都圏物流の要と言える施設でした。
自動的に仕分けされるベルトコンベアといった物流に対する投資も行いながらLED電球の導入やソーラーパネルによる発電といった環境対策、更に東日本大震災の教訓からBCP(事業継続計画)への力を入れており、連続で21時間稼働可能な自家発電装置を備え、震災によって被害が出ないように防火シャッターの落下防止といった工夫が凝らされています。
火災に対しても自衛消防隊を編制し年1回の防災訓練が行われており、スプリンクラー設備などの防火設備も法定に則り備えられていました。
それでも、ひとたび火災が起きると長期間燃え続けてしまっているのは、屋内という環境と大量の可燃物が集積されているという物理的な原因もあるからです。
1階にある物資の集積エリアにて出火したと考えられており、段ボールに包まれた事務用品など大量の荷物が燃え上がり、フラッシュオーバー現象へと繋がった可能性があります。
簡単に言うと、屋内で天井近くまで積み上げられた荷物が燃え上がる事によって、天井や周囲の荷物が放射熱により熱くなり、急速に燃え広がる現象が起こったという事です。
初期消火が間に合わなかった事により、手が付けられなくなってしまったと予想できます。
今後考えられる防火対策
防火区画の考え方
今回の火災事故では荷物の中に何らかの発火元となる危険物が混入していた可能性があり、それを未然に防ぐのは非常に大変な事であると考えられます。
より確実な方法としては、従来の防火設備に加えて火災を消し止めやすくする為に、荷物の集積方法を工夫するという事が考えられます。
天井から一定の距離を離し、荷物間の距離も広めに取る様変更するのです。
施設で取り扱える物資の数が制限されてしまうので、実行に移すにはより慎重に審議を進める必要があるでしょうが、折角のスプリンクラーも充分な範囲に水が掛からなければ無力化してしまいますし、荷物間の距離が狭ければ次々と燃え移るだけでなく、緊急時の避難も大変困難となります。
防火シャッターなどの取組と共に行えばより効果的でしょう。
火災時の行動
絶対に現場へ戻らない
今回の火災では、煙を吸い込んだ従業員2名と他に3名が負傷されていますが、消火活動が続けられるなかで大変危険な行動をした社員もいました。
火災現場へと足を踏み込み、荷物を回収したというのです。
一見、煙も白くなり炎も外観から見えなくなっていても、完全に消火された訳ではありません。
物陰に隠れていた火種へ新鮮な空気が届く事によって、再び激しい火災に見舞われる可能性があります。
私物を取りに行きたいからと安易に立ち戻る事はせず、完全に鎮火したと報告を受けるまでは、火災現場へ立ち入らないようにしましょう。
今回の様な倉庫火災では焼け落ちた上層階の構造物が落ちて来る危険性もあり、消防隊の指示があるまでは安全な場所まで下がる事が先決です。
防災訓練での周知を徹底する事の難しさを感じさせられる出来事でした。
まとめ
・火災が長引いたのは屋内で燃える物がたくさんあったから
・火災を防ぐには防火設備だけでなく、業務面での改善も必要
・火災現場へは収まるまで近寄らない
参考サイト
◆Special Issue > ASKUL Logi PARK 首都圏 ASKUL
◆「バックドラフト」と「フラッシュオーバー」の違い 消防庁消防大学 消防研究センター
◆激しい炎と黒煙「アスクル火災」影響深刻に 日テレニュース24
◆アスクル火災、消火中社員が立ち入り 消防「ありえぬ」 朝日新聞DIGITAL
◆火災のアスクル倉庫、内部はこうなっていた 日経ビジネスONLINE