みなさんは、アストロウイルス感染症をご存じでしょうか。ロタウイルスやノロウイルスよりも知られていませんが、乳幼児が感染しやすい感染症の一つです。感染すると嘔吐や下痢等様々な症状が表れます。過去には、アストロウイルス感染症の集団感染の事例も確認されており、注意が必要と言えるでしょう。
アストロウイルスは、乳幼児が感染しやすいのですが、海外では高齢者施設での集団感染が発生しています。では、アストロウイルス感染症とはどのようなものなのか、詳しくご紹介いたします。
アストロウイルスとは
アストロウイルスとは、感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。アストロウイルス感染症は、冬から春にかけて発生が多くみられます。
アストロウイルスによる感染症は乳幼児が発症しやすいでしょう。ロタウイルスやノロウイルスに続いて多くみられますが、これらと比較すると症状は軽いでしょう。
アストロウイルス感染症は、1~5日の潜伏期間を経て症状が表れます。主な症状は吐き気や嘔吐、下痢、発熱等です。通常は数日程度で軽快に向かいます。中には悪寒、腹痛、頭痛等などの症状が表れることもあります。
感染経路は主に糞口感染です。嘔吐物や排泄物に含まれたウイルスによって感染します。感染者の排泄物の中には、莫大なウイルス量が含まれている為、手洗いが不十分であるとそこから体内にウイルスが入り込むのです。
糞口感染以外では、カキやアオヤギといった二枚貝からもアストロウイルスに感染することがあります。アストロウイルスを保有している食品を介して感染する可能性もあるのです。
アストロウイルスによる集団感染
国内では、アストロウイルスによる胃腸炎の集団感染が数件確認されています。2013年に千葉県で発生した事例を見ると、小学校で全校生徒89名のうち20名が発症しています。年齢別では、2~3年生の感染者が多くみられました。
また、アストロウイルスの集団事例が確認された小学校と同じ管内の保育所でも、全園児154名のうち15名が発症しています。保育所の感染者の年齢を見ると、1歳児が多いことが判明しました。
2015年には、宮城県でも保育所においてアストロウイルスによる胃腸炎の集団事例があります。全園児88名のうち、23名に胃腸炎の症状が確認されました。宮城県で発生した集団事例でも0~1歳児の発症者が多いでしょう。紹介した3つの事例で、職員の発症は確認されていません。
アストロウイルスの予防法
現時点では、アストロウイルス感染症を予防するワクチンはありません。アストロウイルス感染症を予防する為にも、食事の前やトイレの後には入念に手を洗うようにしましょう。次亜塩素酸ナトリウムによる消毒も効果的です。
またアストロウイルスは60℃で10分加熱することで感染力を失います。二枚貝を生食で食べる時は注意した方がいいでしょう。
先述した通り、アストロウイルス感染症は数日間で軽快しますが、他の感染性胃腸炎と同じように脱水症状にならないように注意が必要です。症状が改善しない場合は、医療機関を受診するといいでしょう。
まとめ
・アストロウイルス感染症は乳幼児が発症しやすい
・冬から春にかけて発生しやすい
・ロタウイルスやノロウイルスよりも症状は軽い
・アストロウイルス感染症の感染経路は糞口感染
・二枚貝を介して感染する可能性もある
・アストロウイルス感染症を予防する為にも食事の前やトイレの後には入念に手を洗う
・二枚貝を生食で食べる時は注意する
参考
◆横浜市 ヒト―アストロウイルス感染症について
◆NIID国立感染症研究所 <速報>アストロウイルスによる胃腸炎集団事例―千葉県