皆さんは最近注目度が高まっている「BCP」という言葉はご存じでしょうか。
Business Continuity Planの略で「事業継続計画」の事です。
BCPは企業が取り決めておく対策・計画のことで、自然災害やテロなど緊急事態が起こった時でも事業を継続できるように計画されます。
今回は、BCPの基本的事項として
◆ BCPとは何か
◆ 日本におけるBCPの現状
◆ BCPを有効に作用させるために
について話をして参ります。
BCPとは何か
BCPの定義
BCP(事業継続計画)とは具体的に言うと、
企業等が緊急事態(自然災害、パンデミック等)に遭遇した時に、事業資産の損害を最小限に留めつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするため、平時に行うべき活動や非常時における事業継続のための方法・手段等を、予め取決め、それを文書化
(経産省、中小企業庁ホームページより)
したものです。
一般に言われている「防災計画」は人的・物的被害の防御と軽減が主眼ですが、BCPは被災後における事業の継続・早期復旧を視野に入れたものです。
狭義のBCPでは後者のみを指す事があります。
BCPの必要性
なぜ企業にBCPが必要か
BCPは普段、それほど必要性を感じる方は多くないと思います。
しかし非常事態はいつ、いかなる時に起こるか分かりません。
地震・大雪・風水害などの自然災害の他にも、火災・テロ・インフルエンザや食中毒などの感染症の発生・停電・地盤沈下・交通事故……など、身の周りでもさまざまな「緊急事態」は毎日のようにどこかで起きているはずです。
テロに関しては「日本では起きないよ」「海外に赴任している人が巻き込まれるものじゃないの?」と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、グリコ・森永事件や地下鉄サリン事件など日本国内でも数多くのテロ事件は発生しています。
「緊急事態」がどこで起きるかは、誰にも予想できません。
このような「緊急事態」が発生した時、企業には以下のような対応を考える責任が生じます。
・自分自身や従業員はもとより、従業員の家族・お客様の命・生活を守る事が出来るか?
・会社は事業を継続し、生き残る事が出来るのか?
・深刻な危機に直面した時、適切な判断をし、的確な行動が出来るのか?
被災後、事業の復旧が遅れれば遅れるほど社員は働く場を失い、関連企業や顧客からの信用を失う事になってしまいます。
BCPによって「管理者のみならず社員一人一人がどの様な行動をするか」という基準が作られていて、かつ有効に運用できる体制を整えておけば、この様なリスクを回避できる可能性が高まります。
逆に緊急事態という「危機」を取引先や顧客からの信用を高める「好機」に変える事ができるかもしれません。
BCPは保険と同様に普段はあまり必要性を感じられないものですが、イザという時のため備えておく事が必要なものなのです。
日本におけるBCPの現状
防災計画
日本は震災国であり「防災計画」という点については比較的進んでおり、「単一かつ蓋然性の高い事象」であれば十分に対応が可能な状況です。
ただし「蓋然性は低いが被害の大きなもの」に関しては対処計画が策定されていない、というより、その部分における議論は避けてきたのが現状であります。
東海・東南海地震が想定されている静岡県では平成25年「第4次地震被害想定」の中で、「発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす地震・津波」を「レベル1の地震・津波」とし、さらに東日本大震災の教訓から、「発生頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波」を「レベル2の地震・津波」として想定し、対応策を検討しております(静岡県庁ホームページより)。
BCP
防災計画に比べるとBCPは遅れており、上場企業においても2010年度に策定していなかった会社は約40%、策定済み・策定予定はそれぞれ約30%でした(経産省、中小企業庁ホームページより)。
東日本大震災を契機にBCPの重要性が再認識され整備が進んできましたが、いまだ不十分な状況です。
BCPはリスクに対する一種の「保険」ですが、保険に対する費用が多過ぎては会社成長の妨げとなり、少な過ぎては不測事態発生時のリスクが大きくなってしまいます。
企業における成長戦略とのバランスが取れた構築が必要です。
BCPを有効に作用させるために
せっかくBCPを作っていても東日本大震災や熊本地震において有効に作用しなかった会社がありました。
BCPを「絵に描いた餅」にしないためには何が必要でしょうか。
計画の評価
計画を作成したら、自社の状況に本当に合致しているか確認しなければなりません。
他社における100点満点の計画を持ち込んでも、自社には何の役にも立たない場合があります。
また、今まで有効であった計画についても、社会状況の変化で最適な計画でなくなる可能性があります。
普及教育
非常時においては管理者だけではなく、社員一人一人が有機的に活動する事が必要です。
現実問題として、誰が欠けても組織として活動するためには、全員が理解し、それぞれをサポートする体制になければなりません。
訓練(演習)
訓練(演習)を実施する事により、計画の不備事項や現状にそぐわない事項等の問題点が浮き彫りになります。
訓練で出た問題点を改善し、計画を修正する事により、より良いものとなってきます。
品質管理(QC)サークルなどで使われている「PDCAサイクル」(Plan → Do → Check → Action)を繰り返していく事が必要です。
このように、BCPの策定から有効に活用させる総合的管理をBCM(Business Continuity Management)と言うことがあります。
社会状況や自社の状況の変化に対応し継続的な修正を加え、最適な形に保っておくことが重要です。
BCPをまだ準備していない企業は、すぐに計画の作成に取り掛かりましょう。
まとめ
・BCPは保険と同様に、イザという時の必需品
・BCPは社員全員が理解しておく必要がある
・BCPは常に見直し、最適な状態にする必要がある