2017年12月17日午後2時頃、埼玉県大宮市の繁華街で火災が起こり、3名以上の死者を出すという悲惨な事故が起こりました。原因の究明はこれからですが、「煙が充満していて逃げられない」との通報があり、現場の映像を見ても、3階には非常口の扉口は見えるものの脱出する非常階段は見えない状況でした。2001年9月には新宿の雑居ビルで44名もの死者を出す火災が発生しております。これから忘年会等で飲みに行く機会が増えると思いますが、アルコールが入ってからでは判断力・行動力が鈍ります。自分自身の身を守るために何をしたら良いかを考えて行きましょう。
火事の時、炎よりも怖いもの
一酸化炭素中毒
火事と言えば「炎」を思い浮かべますが、2001年新宿雑居ビル火災で亡くなられた方の多くの死因は一酸化炭素中毒であったとされています。
一酸化炭素は血液の中にある赤血球で重要な役割を果たす「ヘモグロビン」と強く結合しやすい性質を持っていて、体の隅々まで酸素を運搬する役割が阻害されてしまいます。
一酸化炭素中毒になると頭痛やめまい、吐き気など風邪に似たような症状の後、更に進行すると手足の自由が効かなくなり、危険だと思う頃には昏睡状態に陥ってしまいます。
自覚症状を感じる前に突然昏睡状態まで進行する場合があり、非常に危険です。
一酸化炭素中毒は、重度の酸欠状態と言えるでしょう。
一酸化炭素の比重は、酸素とほぼ同じくらいで空気が撹拌されなければ火事の煙と共に動いてると考えても良いでしょう。
今回の火災でも「煙が充満していて逃げられない」と通報があったように、火災に対しては、「防火」だけではなく「防煙」が必要になっております。
煙を充満させないためには、「排煙」と「防煙」の対策が取られています。
「排煙」は通常空気よりも軽いため、排煙口を開くことによって自然に排煙させる方法と、機械の力で強制的に排煙する方法があります。
また、煙が発生しても他の区画に侵入してこない様に「防煙垂れ壁」等の設置をされている部分もあります。
火災現場から逃げる時は、濡れタオルやハンカチを口に当てると共に、出来るだけ低い姿勢で煙の下、きれいな空気のある部分を移動する事が必要です。
自分自身の安全を守るため
「新宿雑居ビル火災」では、非常口の扉が開かなかったり、非常階段に物品が置かれており、その機能を使う事が出来なかったりしました。また火災報知機能、消火機能も十分でなかった事も問題となっておりました。
この教訓から消防法や建築基準法が見直され、ビルのオーナー等の管理者に対しては、より重たい管理責任を課せられるようになりました。
しかし、今回の大宮の現場から見られるように対策が有効に機能しているとは限りません。
忘年会や、引き続き2次会に行く時に店の安全は確保出来ているのか確認する事も必要かも知れません。
エレベーターで店に直接入るのではなく、非常階段を登って店に行き、非常階段の場所や安全性を確認する事も一つの手段です。
悪徳業者の中には、客が逃げ出さない様、意図的に脱出経路を塞いでいる所も無いとは限りません。
幹事であれば、忘年会の開始前に非常口の位置を伝える事も一つですね。
楽しいはずの飲み会が、墓場への入り口にならない様に自分自身の安全は自ら守る様にしましょう。
まとめ
・火災は炎だけでなく、煙・一酸化炭素が危険である
・自分の命を守るため、どんな時でも脱出経路の確認は重要である
参考サイト
◆防仁学:「歌舞伎町雑居ビル火災から16年・・・事件から火災予防を見直そう!」
◆防仁学:「意外に知らない、充実したマンションの防火設備 助かるためには?」
◆防仁学:「寒い季節の到来 冬場の暖房に注意! 一酸化炭素中毒の対策ポイント」