前回は自衛隊の部外協力活動と米国との相互技術交流に関して説明しました。(防衛白書について(第10回)部外協力活動の取組みと米国との相互技術交流)
今回は昭和60年に発刊された第11回目の防衛白書に関して紹介致します。
中央指揮システムの確立
日本の平和と安全を保つ上で、安定した国際環境を作るための積極的な外交の推進や政治、経済及び社会の安定を図るための努力は、欠くことのできないものですが、これらの手段のみでは実力をもってされる侵略を未然に防止することはできません。
日本の防衛のためには、部隊の作戦遂行能力、後方支援能力、部隊の指揮や情報機能の充実が必要で、有事に際して自衛隊が有効にその力を発揮するためには、これらを最も効果的に運用し得る体制が整備されていなければなりません。
日本が戦場化した事態を想定した有事法制の制定とともに、防衛出動等の自衛隊の行動に関して、防衛庁長官(現在、防衛大臣)の指揮命令を迅速かつ的確に行うために中央指揮システムが必要になりました。
昭和56年以降、中央指揮システムの整備を進め、59年度末に防衛庁本庁檜町庁舎内(旧本庁:六本木地区)に中央指揮所が完成しました。
中央指揮所では、航空自衛隊の自動警戒管制組織(バッジシステム)及び海上自衛隊の自衛艦隊指揮支援システム(SFシステム)と連接した中央指揮システムを通じて、陸海空自衛隊及び統合幕僚会議(現在、統合幕僚監部)の関係者が適時適切に情報を把握し、迅速に的確な初動対処を行います。
中央指揮システムの運用の対象となるのは、防衛出動に係るもののほか、治安出動、海上における警備行動、大規模な災害派遣等の自衛隊の行動に係る事態及びその他全庁的な対処を必要とする緊急事態が考えられていました。
例えば、昭和59年度の総合防災訓練及び統合演習は、新設された中央指揮所を活用して行われました。
参考:
・バッジシステム(BADGE:Base Air Defense Ground Environment)
自動化した航空警戒管制組織で、指揮命令、航跡情報等を伝達処理する全国規模の指揮通信システム。日本の周辺空域の警戒監視を常続的に行い、侵入機の探知・識別・
要撃管制を短時間で実施する。
・自衛艦隊指揮支援システム(SF:Self defense Fleet)
海上自衛隊の艦艇の運用に必要な情報をタイムリーに収集・処理・配布して、艦隊の作戦指揮や統制を行う。
女性自衛官の活躍
活躍の場所が拡大

陸海空の女性自衛官(防衛白書2015)
自衛隊においては、その発足当初から婦人自衛官が看護業務に配置されてきましたが、その後職域を拡大し、昭和59年末には3499人の婦人自衛官が、衛生、通信、文書、会計、補給、航空機整備等の各職域で活躍しています。
また、昭和59年の防衛医科大学校の学生採用試験から女性に門戸が開かれ、8名の女性が入校しました。
防衛大学校に女性が入校するのは、1992年(平成4年)になってからです。
また平成17年には航空自衛隊の戦闘機操縦者への門戸も開かれました。
まとめ
◇ 昭和59年に六本木(当時)の防衛庁に中央指揮システムが確立された
◇ 女性自衛官の働く場が拡大し、多くの職域で活躍を始めた
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流