前回は安全保障会議の生い立ちと中期防衛計画の概要に関して説明しました。 今回は昭和62年に発刊された第13回目の防衛白書に関して紹介致します。
日米間の防衛施設に関する取り決め
わが国の防衛は、「日本の防衛力」と「日米安全保障体制に基づく米国の軍事力」によって維持されています。日米安全保障条約に基づく日米地位協定により、日本に米国軍隊を維持することに伴うすべての経費は米国が負担し、日本は定められた施設及び区域を米国に負担をかけないで提供するとされています。
それを取り決めているの以下の様な協定や条約です。
〇日米地位協定(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協定及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)
日本の施設・区域の使用の在り方やわが国における米軍の地位について定めた国会承認条約(1960.1.19締結)
〇日米安全保障条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)
第6条:米軍が日本国において施設及び区域を使用することの許可(1960.6.23発行)
これらに基づいて、日本は在日米軍の駐屯する施設を提供しています。
在日米軍関連費用に関して
米軍の駐留に関して米国が負担する経費は、昭和40年代後半から、わが国の物価と賃金の高騰や円高・ドル安等の国際経済情勢の変動により、相当圧迫を受けていました。駐留軍等労務者の雇用の安定を図りつつ、米軍の駐留を円滑かつ安定的にするため、昭和53年度から基地従業員対策費(日本人従業員の福利厚生費等)、昭和54年度から提供施設整備費(老朽隊舎の改築、家族住宅の新築等)について、日本側が負担することになりました。昭和53年6月当時の金丸防衛庁長官が、「日米関係が不可欠である以上、円高ドル安というこの状況の中で、アメリカから要求されるのではなくて、信頼性を高めるということであれば、思いやりというものがあってもいいんじゃないか」と答弁したことから、「思いやり予算」という言葉が使われるようになりました。
昭和62年度からは、新たに労務費(日本人従業員に対する諸手当の経費)が追加され、歳出予算に合計約1096億円が計上されています。
「思いやり予算」の思いやりは日本側の負担をイメージさせる情緒的な言葉であり、「防衛白書」では使われていません。在日米軍の駐留を円滑にするための施策という意味の「ホストネーションサポート(Host Nation Support)」という言葉が、平成61年度の防衛白書で使われ始めました。
「思いやり予算」による在日米軍の隊舎改築の一方で、自衛隊の隊舎の改修も行われ、従来の2段ベッドから1段ベッドへの変更が昭和60年度から実施されています。
まとめ
・日本は米軍に負担をかけないで施設及び区域を提供することが定められている
・米軍の駐留経費負担を軽減するため、「思いやり予算」により日本が一部を負担している
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大
◆防衛白書とは?(12)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流