第17回目の「防衛白書」は、前年に引続き平成3年に発刊されました。
前年に起こった「湾岸戦争に関する自衛隊の貢献」を中心に記載されました。
【湾岸戦争】

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平成2年8月、イラクがクウェートを侵略したため、国際社会は一致結束して事態の解決に努めました。平成3年1月、国連を中心として対応した28か国の多国籍軍が参加して湾岸戦争が開始され、同年2月にクウェートは解放されました。この時、わが国は人的貢献をせず、130億ドルの支援を行いました。当時のレートで2兆円近い支援をしたにもかかわらず、クウェート政府が出した謝辞の新聞広告には日本の名前がなく、人的貢献に比べ資金協力の限界が感じられました。政府は石油輸入航路の安全確保と人的貢献を目的として、自衛隊初の海外実任務となる、ペルシャ湾に掃海艇を派遣することを決定しました。平成3年4月26日、掃海派遣部隊として掃海母艦、補給艦、掃海艇4隻計6隻、511名が出港し、188日間の派遣期間中に34個の機雷を処分しました。この作戦は、湾岸に一日も早く平和の夜明けが訪れるよう願いを込めて「湾岸の夜明け作戦」と名付けられました。
【掃海作戦の概要】
海中に潜む種類不明の機雷を探知し、その機雷に爆楽をしかけて爆発させて無力化する作業は危険を伴うため、殉職者への対応も考慮されるほどの厳しい任務でした。炎上する油田火災の煤煙・砂塵と40℃以上の気温という過酷な環境においても、勇敢かつ粘り強く任務を完遂した派遣部隊に対し、関係諸国から感謝の言葉が寄せられました。
長さ約60メートル 約500トンの小さな木造の掃海艇が、インド洋を横断する片道6800マイル(ハワイまでの2倍以上)の距離を約1か月かけて進出して実機雷を処分することは、予測が困難な初めて経験する任務でした。現地に進出して100%稼働できる状態に維持し、酷暑の場所で危険な任務を完遂した整備・運用の態勢も称賛されました。
ペルシャ湾に掃海部隊が派遣されたのを契機に、自衛隊は海外での活動に一歩を踏み出しました。軍事面での人的貢献の必要性が理解され、一度は廃案になった国際平和協力法(PKO法)と国際緊急援助隊法が、平成4年6月に制定され、以後の国際平和への取り組みに対する新しい時代の幕開けとなりました。
機雷:水中に設置されて、艦船が接触したり近付いた時に自動又は遠隔操作によって爆発する武器。艦船の磁気や音響に反応する機雷等がある。
国際平和協力法:「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(平成4年8月施行)
PKO:United Nations Peace Keeping Operation 国連平和維持活動
国際緊急援助隊法:「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」(平成4年6月改正・施行)
【まとめ】
・湾岸戦争終結後、自衛隊は掃海部隊を派遣した。
・自衛隊は国際平和への新しい取り組みを開始した。
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大
◆防衛白書とは?(12)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(13)在日米軍の施設と関連費用とは
◆防衛白書とは?(14)次期支援戦闘機(FS-X)の選定
◆防衛白書とは?(15)大喪の礼と自衛隊
◆防衛白書とは?(16)即位の礼と自衛隊 定年延長について