第4回目に当たる今回も「防衛白書」に関して紹介をして参ります。
1978年当時の国際情勢
新しい防衛白書は前年に引続き昭和53年(1978年)に発刊されました。
前回の白書の特徴として、初めて「防衛計画の大綱」(51大綱)が閣議決定され、それに則り基盤的防衛力構想が策定されました。
それらを受けて、第4回目の「防衛白書」には、基盤的防衛力構想を採用した背景、具体的内容等が説明されています。
当時の国際情勢としては、核相互抑止を含む軍事均衡や国際関係安定化の努力により、東西間の全面的軍事衝突又はこれを引き起こす恐れのある大規模な武力紛争が生起する可能性は少ないと見積もられています。
また、大国間の均衡関係及び日米安全保障体制の存在が国際関係の安定維持及び我が国に対する本格的侵略の防止に大きな役割を果たし続けると想定しています。
しかし、国際情勢の先行きは常に不確定要素を含んでおり、情勢に大きな変化が生じた場合は、これに見合った防衛力の拡充、強化を行う必要があり、あらかじめ新たな防衛力の態勢に円滑に移行し得るよう種々の配慮を行うことが求められていました。
新しい防衛力の整備
昭和53年度の防衛力整備に当たっては、周辺海空域の警戒監視及び必要な情報収集を常続的に実施する警戒のための態勢が重要とされ、対潜哨戒機(P-3C)及び新戦闘機(F-15)の調達並びに早期警戒機の導入(警戒飛行部隊の新編)が計画されました。
早期警戒機は、前年のミグ25事件の教訓を活かし、低空侵入機に対応する監視機能を強化するものです。
対潜哨戒機(P-3C)は、性能が向上した潜水艦を水中でより近接して探知するため、従来の対潜哨戒機に比べ行動時間及び哨戒監視能力等が格段に優れているとされています。
P-3C(米国ロッキード社製)は、ロッキード事件(田中角栄元総理大臣逮捕)との関連で有名になりましたが、導入に関する防衛庁の立場はこの「防衛白書」の中で項目を立てて説明されています。
新戦闘機(F-15)は、高々度高速侵入目標及び超低空侵入目標に対する対処能力、対戦闘機戦闘能力及び電子線能力に優れているとされています。F-15(マクダネル・ダグラス(現ボーイング)社製)は、当時の要撃戦闘上重要な空対空戦闘を主目的として開発された戦闘機であり、防空効果及び費用対効果の点も考慮し採用が決定されました。
戦闘機等の正面防衛力を有効に機能させるためには、警戒監視・情報収集、指揮運用・通信、後方支援及び教育訓練の態勢が正面防衛力と均衡がとれたものでなければなりません。
また、陸上自衛隊でも火砲の更新や対戦車ヘリコプター(AH-1S)の運用研究を行い、戦力の近代化を図っています。
第4回の「防衛白書」では、防衛力整備の具体的内容を説明するとともに、この分野における国民のコンセンサスの重要性を強調していたのです。
まとめ
- 一見すると安定している国際情勢ではあったが、先行きが不透明な国際情勢に対応する必要があった。
- 前年のミグ25事件等を受けて特に防空能力と対潜能力の向上が必要であり、詳しく説明する事で理解を得られるよう努力した。