前回は日米協力や機密情報保護に関して触れられた昭和56年(1981年)の防衛白書に関して説明しました。
今回は昭和57年(1982年)に発刊された第8回目の防衛白書に関して紹介致します。
防衛予算の金額
一時期は上限が定められていた
昭和57年の防衛白書からは写真や図表の一部にカラー印刷が採用され、総数359ページになり、第1回の白書の94ページに比べて大きく増加しています。
それに伴い掲載される情報が多くなっていますが、今回は防衛予算の金額に関するお話しをします。
昭和57年度の防衛関係予算は、約2兆6千億円で前年度予算に比較して7.8%伸びています。
防衛費関係費の内訳は、人件糧食費が46.6%、装備品購入費が22.4%で給与及び食事代の予算が半数近く占めており、国家予算の中に占める防衛関係費の割合は5.2%(社会保障関係費18.3%)です。
防衛力の整備にあたっては「防衛計画の大綱」等に基づき、情勢に即した質の高い防衛力の整備に努めていますが、国民総生産(GNP)の1%以内という独自の制約がありました。
当該年度の防衛予算は、対GNP比は0.93%で1%以下になっています。
この制約は昭和51年(1976年)11月5日の国防会議にて閣議決定された下記の言葉から来ています。
防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係費の総額が、当該年度の国民総生産の100分の1に相当する額を超えないことをめどとして、これを行うものとする。
防衛予算のGNPによる制約は、円高や石油価格等の経済的影響に左右され防衛力整備の所要に直接連動しておらず、政治的必要性によって定量規制が設けられたものです。
昭和61年(1986年)12月中曽根内閣においてGNPの1%枠は適用しないことが閣議決定され、昭和62年・63年及び平成元年の3回1%をオーバーしました。
それ以降は1%枠を論じられ事は少なくなりましたが1%以内に収められており、防衛関係予算の一つの指標として現在も生き続けています。
防衛記念章の規定
自衛官の功績を称える証
人事関係では、自衛隊員の士気を高揚するため、57年から防衛記念章の着用が認められました。
これは、外国の軍人は功績に応じた勲章と制服に着ける略章が制定されていますが、自衛隊には現職期間中に叙勲される機会がほとんどなく、功績等に応じて制服を飾る徽章はありませんでした。
外観上の均衡をとるため外国の軍隊にならい、功績により表彰を受けた隊員や責任の重い部隊の長等の経歴を記念して、それを表現する徽章(布製のリボン)を制服の左胸につけることとされました。
制定当時は15種類でしたが、自衛隊の活動領域の拡大等に伴い平成15年(2003年)9月には42種類と増大しています。
まとめ
◆防衛予算は昭和51年の閣議決定で上限が定められたが、現在は撤廃されている
◆自衛官の功績を称え、諸外国の軍人と均等を計る為、防衛記念章が制定された
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護