前回に引き続き2017年2月15日、国立研究開発法人「防災科学技術研究所(NIED)」が行った第12回成果発表会の様子をレポート致します。
今回の特別公演は「熊本地震における生活再建支援連携体の活動~NIEDとの共働で目指したもの~」と題した新潟大学危機管理本部 田村圭子教授のお話しを紹介致します。
生活再建支援とは
被災後の生活を建て直す切っ掛け
災害が発生した後には、被害の大小を問わず被災された方々の生活を如何にして建て直していくかという課題が発生します。
この課題を満たすために、各自治体では被災者の情報を集めて「り災証明書」を発行し、被災者台帳にまとめています。
その情報に基づき被災者の生活再建支援を行うので、被災者にとっては生活を建て直す為の切っ掛けとなる大切な行政処置になるのです。
発行の大まかな流れとしては、以下の様になります。
1、被災者の住宅などに対する応急危険度判定
2、被害状況の検査とカテゴリー分け
3、情報を取りまとめ、り災証明書の発行および被災者の特定
4、生活再建窓口か庁内業務としての復興支援行政
しかし、り災証明書を発行する段階で、全国統一の基準が今までなかった為に、住宅の被害補償に対する理解が進まないといったトラブルが起こっています。
行政側も全ての被災者を把握できていなかったという問題がありました。
そこで、田村教授と新潟県では生活再建支援組織の構築を目指して活動を行い、2007年に発災した新潟県中越沖地震では柏崎市が在宅避難をしている被災者宅への訪問といった努力を行い、「り災証明の市民全員への発行」と「相談の受付」を達成し、被災者の生活再建支援に於ける公平性を成立させました。
この経験を踏まえて、2016年4月に発災した熊本地震では「統一基準に基づく生活再建の実現」を目標として、防災科学技術研究所をヘッドとした産官学連携支援チーム「生活再建支援連携体」を熊本県庁と協同して進めております。
この際、過去の震災後に起こった建具の被害認定調査の手順標準化や数値化、被災者台帳を用いた総合的な生活再建支援システムの運用を行いました。
この時は、新潟県以外にも東京都などの職員が応援に駆け付け、避難所運営業務に派遣された人数(4075人)に次ぐ1400人もの人員が、り災証明書の発行業務に従事しました。
り災証明の重要性
災害後の生活に直結する
り災証明書を発行する際には、被害状況のデータを集めると共に、個々の被災者から「どの様な状況に陥っているか」、「今後の生活で何が必要か」を一つ一つ聞き取っていきます。
そして被災者台帳にまとめられたこれらの情報を基に行政は生活再建のための支援計画を作成します。
つまり、り災証明書の発行は、被災者が置かれた状況を行政が認識していますという大切な証明になるのです。
そして、行政側も支援をおこなった後に、的確な評価と見直しを行う必要があります。
効率的に行う為に、被災者台帳のデータ化や地図データへの落とし込みといった試みが行われています。
効率化が進めば、り災証明書の発行で待たされ難くなり、手続きがより簡単になるといったメリットが生まれてきます。
今後も、各大学や防災科学技術研究所で災害が起こったあとの被災者が安心できる環境作りの為に研究が進められるので、次の成果にも期待しましょう。
まとめ
・生活再建支援は被災後の生活再建に於いて切っ掛けとなるもの
・り災証明書は行政に対して被災した事をアピールする重要なもの