現在の自衛隊は、先達から引き継いだ伝統の上にあり、良い形で残すべき伝統も多くあります。現代の生活やいざという時にも役立つ、旧軍の教えや伝統について紹介したいと思います。
3Sの精神
江田島の海軍兵学校では、「シーマンシップにおける3S精神」が強調されていました。
※3S:Smart,Steady,Silent
気象・海象が一変しやすい洋上において、すべての措置を円滑に実施するには、機敏(スマートSmart)であること、着実(ステディSteady)であることが求められます。そして、スマートかつステディに行動するためには、命令者以外は静粛(サイレントSilent)を保つことが求められます。
スマートは、「スマートで目先が利いて几帳面、負けじ魂これぞ船乗り」という船乗りに対する躾の最初に出てくる言葉であり、きびきびとして手際が良く、物事に柔軟に機敏に対応することを意味しています。ステディは、スマートに行動したことが素早いだけでなく着実で抜けがないことが要求されます。サイレントは、実行にあたり静粛を保つことを意味しますが、サイレント ネイビーと言われる時は、「黙って任務を遂行し、失敗をしてもあれこれ言い訳をせずに黙って自分で責任を取る。」ことを現しています。国内の政治的なことには関心を向けず、国のために黙ってやる時はやることで、陸軍の政治的関与の仕方と異なる意味で使われることもあります。
宜候(ようそろ)の精神
「ようそろ」は「宜(よろ)しく候(そうろう)」が転じた言葉で、航海長(操艦号令を出す人)が転舵(舵を動かす)の号令を出した後指示した方位○○度に向いた時に「その方位を直進せよ」の号令(「○○度ようそろ」、「ようそろ○○度」)として使われます。国際的なシーマンシップに通ずる言葉で、英語では”Steady as she goes”と言われ、波や風、潮の流れの影響を受けても定められた方向(進路)を維持して進むことを示しています。「ようそろ」は、決定した目標や方向性に対し左右にぶれることなく、つべこべ言わず行動する潔さも意味しており、3S精神に繋がる言葉だと思います。
旧海軍の教えや伝統をいくつか紹介しましたが、現代にも通用する良いものは遺産として継続し、次の時代にはもっと良いもの新しいものを創る心構えで、将来にわたり残るような伝統が生まれることを期待したいと思います。