人は、だれもが例外なく、生きていれば「お年寄り」になっていきます。年齢を重ねていくことで、視力や筋力が弱まり、瞬発力も衰えていきます。現在は核家族化が進んでいることもあり、これに加えて、「災害など、何かあったときに手を貸してくれる人がいない」独居老人の存在もクローズアップされてきました。
自分が独居老人となったとき、そして親が独居老人であるとき。
私たちはどのような対策ができるのでしょうか。
「災害弱者」の一人である高齢者
日本には、「災害弱者」という言葉があります。これは、「自分自身の身を脅かすような危険が迫った時、それに対して、察知する力・危険に関する情報を得る力・有益な行動をする力が乏しい人」を指す言葉です。
この「災害弱者」として真っ先に思い浮かぶのは、年端のいかない子どもでしょう。しかしそれ以外にも、身体や知的、あるいは精神の障害者、病気を患っている人、外国人などが含まれます。
今回取り上げる「高齢者」もそのカテゴリーに入れられます。
人間は年をとると、どうしても判断能力が鈍ったり、俊敏性が失われたり、体力が低下したりします。もちろん一口に「高齢者」といってもその暮らしぶりや体力、判断能力は人それぞれです。70代になっても、まったく運動をしていない30代よりも元気だという人もいますし、逆に寝たきりになってしまっている人もいます。
しかしいずれにせよ、高齢化社会である日本にとって、ハンディを持つ高齢者の方々の災害対策(※)を考えることは非常に重要だと言えます。
※現在は、高齢者や子供など災害時に支援を必要とされる方を「災害時要援護者」と位置付けています。
独居老人を助けるもの
高齢者のなかでも、特に問題になっているのが、「独居老人」の存在です。核家族化が進んで、一人で暮らす高齢者の方も増えてきました。
彼らの命を守るための災害対策としては、「周りの住人との交流」が欠かせません。
「あそこに一人暮らしのおじいちゃんがいた」「地震が起きたけど、隣のおばあちゃんは大丈夫だろうか」と気にかけてくれる人がいれば、彼らの命が助かる可能性はとても高くなります。また、万が一のことがあっても発見されやすくなるでしょう。
独居老人の災害対策を考えるうえで大切なのは、このような「人との関わり」なのです。
行政との定期的な連携がキー
ただ、アパートなどで暮らしていると、なかなか周りとの交流も難しいかもしれません。そのため、行政の力も大切になってきます。
どこに要介護者がいるのか、どこに独居老人がいるのかを行政が把握し、災害弱者の所在を表した地図を作ることがすすめられています。もちろんこれは、災害対策のうちの一つにすぎません。しかし「命を守る」ということを考えたときに、非常に有用な手段であることは間違いがないでしょう。
もしあなたが、独居老人の家族を抱えているのであれば、積極的に行政と話し合い、万が一のことがあったときの対応を考えることが重要です。また、本人が嫌がっている場合でも、自活すること難しくなってきたと判断されるのなら、高齢者施設への入所なども検討に入れるべきでしょう。
独居老人の災害対策は、プライバシーの確保という問題もあって、なかなか難しいものです。しかし、命を守ることを一番に考えたとき、「行政―家族―近隣住民」の連携は、非常に大切だと言えます。
まとめ
・災害弱者とは、自身の身が危なくなった時、それの対策を講じることが難しい人である
・高齢者もそれに含まれる
・高齢者の災害対策には、周囲の人・家族・行政、すべての連携が重要である
参考サイト
◆災害社会研究グループ「災害研究の動向」
◆総務省「災害時における高齢者の保護」