洪水・土砂災害ハザードマップを見たことのある方は、大勢いるでしょう。と言うよりも、ほとんどの方が見ているはずです。「見たことがない!」と言われる方は、今すぐ確認して自宅が土砂災害警戒区域に入っていないか確認しましょう。土砂災害警戒区域内に自宅のある方は、大雨警報や土砂災害警戒情報が発令された際には、必ず避難する必要があります。では、この「土砂災害警戒区域」とは、どのような基準で決定されているのでしょう。今回は、気になる土砂災害警戒区域の決め方を解説します。
土砂災害警戒区域は土砂災害防止法によって定められる
土砂災害防止法は、土砂災害から国民の生命を守るため、土砂災害のおそれのある区域について危険の周知、警戒避難態勢の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策を推進するものとして、定められた法律です。この法律に基づいて、「土砂災害のおそれがある地域」に対して、都道府県知事が指定する区域を「土砂災害警戒区域」と呼んでいます。
警戒区域:イエローゾーンとは
土砂災害警戒区域、通称イエローゾーンとは、「住民等の生命または身体に、危害が生じるおそれがあると認められる土地の区域」と定義されています。イエローゾーンに指定されると、市町村は、次の整備を行わなければなりません。
1:市町村の地域防災計画へ記載する
2:災害時要援護者関連施設への警戒避難
3:ハザードマップによる周知の徹底
4:宅地建物取引における説明
これらの整備によって、自治体は防災計画に警戒避難体制を、どのように行うか手順を定めないといけません。そして、区域内にある福祉施設などへの円滑な避難が実施されるよう、情報等の伝達事項を定めます。さらに、地域や住民に広く把握できるようハザードマップに記載して、住民への配布を行います。区域内の土地や建物の取引時には、必ず警戒区域であることを説明する義務が、不動産業者などに課せられます。
警戒区域:イエローゾーンの決め方
土砂災害警戒区域:イエローゾーンには、土石流・地すべり・急傾斜地の崩壊の3種類があり、それぞれ指定の基準が異なっています。
・土石流の決め方
土石流が発生してその土石流が堆積する終点位置より、勾配が2度以上の区域を土石流のイエローゾーンとしています。
・地すべり
地すべりのイエローゾーンは、次の2つの条件が該当します。
1:地すべり区域
2:地すべり区域下端から、地すべり地塊の長さに相当する距離(250mを越える場合は250m)
・急傾斜地の崩壊
急傾斜地の崩壊のイエローゾーンは、次の3つの条件が該当します。
1:傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域
2:急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
3:急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域
特別警戒区域:レッドゾーンとは
土砂災害特別警戒区域、通称レッドゾーンとは、「住民等の生命又は身体に著しい危害が、生ずるおそれがあると認められる土地の区域」と定義されていて、区域内での開発行為は許可制となり、建築基準法にて建築物の構造の規制が行われます。
1:特定の開発行為に対する許可制
2:建築物の構造の規制
3:建築物の移転等の勧告
4:宅地建物取引における説明
レッドゾーンの中ではこのように、宅地分譲を行うには県知事の許可が必要となり、建築物には土砂災害に対しての安全措置となる、土留め擁壁などを設置。既存の建物が危険な場合は、移転等の勧告がなされます。つまり、レッドゾーン内では新たに建築物を建てる人はいないと、言うことになります。
特別警戒区域:レッドゾーンの決め方
特別警戒区域:レッドゾーンは、次のような定義で決定されています。「急傾斜の崩壊に伴う土石等の移動等により、建築物に作用する力の大きさが、通常の建築物が土石等の移動に対して住民の生命又は身体に、著しい危害が生ずるおそれのある崩壊を生ずることなく、耐えることのできる力を上回る区域」また、地すべり区域については、「地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等により、力が建築物に作用した時から30分間が経過した時において、建築物に作用する力の大きさとし、地滑り区域の下端から最大で60m範囲内の区域」と、国が定義しています。
定義分をそのまま読むと、とても分かりづらいですがカンタンに言うと、レッドゾーンとは「土砂災害によって、建物が破壊されて人命に大きな危害が生じるおそれが高い区域」となります。
イエローゾーンとレッドゾーンの決定方法の違い
イエローゾーンは先の解説の通り、ある一定の基準があり、ほぼ地形で決定されます。一方で制限が厳しくなるレッドゾーンは、現地に入り「高さ・斜度・土質」などを調査し、綿密な計算のもとで決定されます。レッドゾーンの指定は、その区域内に居住する方の暮らしに直結するので、慎重に正確に、調査と計算を繰返して決定されているのです。
大雨警報や土砂災害警戒情報が発令されたら必ず避難が必要
レッドゾーン内はもちろんですが、イエローゾーンでも警戒区域内に居住している方は、大雨警報や土砂災害警戒情報が発令された際には、速やかに避難しなければなりません。「面倒だ!」と言われる方もいらっしゃいますが、警戒区域内はとても危険な地域となっています。自分や家族の命を守るには、避難するしかありません。安全な場所への、早めの避難を実行しましょう。
まとめ
・土砂災害警戒区域は土砂災害防止法によって定められている
・イエローゾーンには、土石流・地すべり・急傾斜地の崩壊の3種類がある
・レッドゾーン内では開発制限や建築物を守る施設が必要となる
・レッドゾーンは現地でのさまざまな調査と計算によって決定される
・土砂災害警戒情報が発令されたら警戒区域内から避難しなければならない