2015年3月、私は学校現場を去ることになりましたが、37年間の長い教員生活のなかで最も悲しくつらかった出来事が、2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。そして、「あの日」から何かに突き動かされる思いで、日本の防災教育のあり方を問い直す日々が続いています。とりわけ、全国各地をまわりながら、体験型防災学習の普及と人材育成の重要性を伝え続けています。
たとえば、体験型防災学習の普及ですが、今なお従来のような防災訓練を実施する学校が多く、教育活動の中で年間を通して具体的に位置づけている学校は決して多くありません。ほとんどの学校が、前例踏襲と変化対応のせめぎ合いのなかで暗中模索しているのが実情です。
さらに私は、現地に足を運ぶことの重要性を感じたこともあり、全国各地をまわりながら災害初動期の対応と若手人材の育成のための方策についても研究を重ねてきました。そして、講演会などで訪れた地域の声なき声に耳を傾けているうちに、従来のような自助・共助・公助の考え方では、激甚化する複合災害に対応できなくなっている実態も見えてきました。高齢化社会において自助の力がどれだけ期待できるのだろうか。過疎化が進む地域で共助の力がどれだけ期待できるのだろうか。東日本大震災のときには、公助の力が充分に機能しない現実にも直面しました。
これから始まる「防仁学」は、防災の理論ではなく生存のための実践です。若手人材の育成をめざすための演習や訓練と言っても過言ではありません。
最後に、私が多くの人たちに伝えたいのは、地球温暖化のど真ん中を生き抜く子どもたちに対して、命と向き合い・命をつなぐバトンをしっかりと手渡す責任と義務が、我々大人にはあるということです。