2017年1月20日にトランプ大統領が新たに就任しましたが、それに先立つ1月18日に日本の岩国在日海兵隊基地へ最新鋭ステルス戦闘機のF-35BライトニングⅡが配備されました。
非常に珍しい垂直離着陸戦闘機であるF-35Bが在日米軍へ配備されたのは、極東における米軍の対応能力向上を目指している事は明白ですが、トランプ大統領は以前から在外米軍基地の費用負担に関して苦言を申しており、今後どうなるか流動的な状況です。
今回は、航空自衛隊にも通常型のA型が配備される予定であるF-35戦闘機に関して調べてみました。
開発のきっかけ
冷戦後の主力を担う為に

F-35A Logtnest / Shutterstock.com
1989年まで続いた冷戦と呼ばれるアメリカを中心とした資本主義陣営とソ連を中心とした共産主義陣営の対立は、核兵器に代表される軍備拡張を推し進めました。
その過程で様々な任務に特化した軍用機が次々と誕生し配備が進められましたが、冷戦の終結に伴い、ただでさえ高価な軍用機を任務別に保有するのは予算的に合理的ではないという風潮が生まれます。
そこで世界一の空軍力を誇るアメリカは敵機を撃ち落とす戦闘機や地上部隊を攻撃する攻撃機を一つの戦闘機(マルチロール機)にまとめる統合打撃戦闘機計画(JSF計画)を開始します。
この計画には米空軍だけでなく、空母で航空機を運用する米海軍及び海兵隊が参加し、次期主力戦闘機に悩むイギリスなどの8か国が開発に加わりました。
これにイスラエルとシンガポールが計画に参加しています。
候補となった機体はロッキードマーティン社のX-35とボーイング社のX-32でしたが、トライアルの結果X-35が勝利してF-35として開発が進みます。
計画は1993年から進められ、試作機のX-35の飛行が2000年に行われています。
そして2006年には最初の量産機が初飛行を行い、現在米軍を中心に配備が進められています。
日本へは2018年から配備が開始され、大規模な整備拠点も作られる予定です。
求められた性能
様々な局面で敵を圧倒する
F-35戦闘機は通常の離着陸方式を行うA型、垂直離着陸が出来るB型、空母に離着艦出来るC型という三つのタイプがあります。
これらは運用者の異なる要望に基づき開発が進められました。
航空自衛隊にも2018年から配備されるA型は主力戦闘機として敵の戦闘機を圧倒しつつ、対地攻撃などのマルチロールな任務を行う事が目的として開発されています。
その為に必要なステルス性能や全周囲の敵に対応出来る索敵装置などの最新鋭機器を搭載しているのが特徴です。シリーズで唯一機関砲を固定装備しているのも対戦闘機を意図している事が大きいでしょう。
岩国基地に配備されたB型は米海兵隊の乗り込む強襲揚陸艦やイギリスの空母から運用される事を考えて垂直離着陸機能を備えたタイプです。
小規模な基地でも離着陸出来る特徴があり、前線の部隊を密接に支援する事が目的とされています。
一番飛べる距離が短いタイプですが、ステルス性能などを活かした空中戦能力も一流です。
C型は米海軍だけに配備される予定の大型空母専用機です。主翼や機体が大型化され、長距離の目標を打撃出来るように考えられています。ステルス性能も向上させられている様です。
F-35シリーズは、ステルス性能と強力かつ先進的な電子機器により、第5世代戦闘機と呼ばれることもあります。
現在の問題
予定を超過したコスト問題
もともと、JSF計画は各国が同じ種類の戦闘機を導入する事で1機あたりの導入コストを下げる事が目的に含まれていました。
しかし、高度なテクノロジーを活用した結果、コストが膨れ上がり世界各国で5000機以上導入される予定ですが、カナダなどが計画見直しを行っています。
例えば、航空自衛隊での平成28年度予算案での調達価格は1機あたり約146億円となっており、平成24年度の予算案で計画されていた約98億円から高騰しています。
トランプ大統領も昨年から計画コストが高すぎると批判しており、今年1月13日にはロッキードマーティン社が値下げに応じる姿勢を示しています。
ただ、トランプ大統領が代りに配備を示していたF/A-18Fスーパーホーネットは既に配備されている事と近い将来には陳腐化してしまう事からF-35の配備が取りやめになる可能性は低いと考えられます。
一方で、日本などのアメリカ以外のユーザーに対する販売価格をトランプ大統領が引き上げる可能性もあり、慎重な対応が求められます。
日本では在日米軍への配備が進められる事と航空自衛隊への配備が進められる事から、F-35は日本の防衛に密接に関係していく事でしょう。
今後も、配備状況に注目していきます。
まとめ
・F-35はアメリカや日本の防衛で要となる新型戦闘機
・他の戦闘機を圧倒する能力を持つ
・価格の高騰が問題となっており、今後どうなるか不明瞭
参考サイト
◆F-35LIGHTNINGⅡ LOCKHEED MARTIN
◆予算等の概要 防衛省・自衛隊
◆ロッキード、米軍F35値下げへ トランプ氏に屈する? 朝日新聞DIGITAL
参考図書
「図表 アメリカ空軍の次世代航空宇宙兵器―Global Force 汎地球戦力ロードマップ2006-25」河津 幸英
「図説アメリカ海兵隊のすべて - 地球規模の対テロ戦争・アジア有事・大災害に即応展開 Ariadne military」河津 幸英
「図説21世紀のアメリカ海軍 - 新型空母と海上基地 Ariadne military」河津 幸英
「★図説★徹底検証アメリカ海軍の全貌 - 対中国作戦と新型軍艦 Ariadne military」河津 幸英