暑い夏と共に記憶に蘇ってくるのは「広島と長崎」でしょうか。
唯一原子爆弾の被爆国である日本にとって、忘れる事の出来ない季節です。
昨年は「どの様にして原子爆弾が誕生したのか」と「原子爆弾の威力がどれだけあるのか」に関して掲載いたしましたが、今回は冷戦という国同士が核兵器でにらみ合いをする環境のなかで、原子爆弾を投下された広島と長崎から得た教訓がどの様に活かされてきたのか、原子爆弾などの核兵器による攻撃に対する対処方法を調べてみました。
事前の備え
シェルターによる備えから地下への避難まで
核兵器による攻撃はいつ行われるか分からないという問題があります。
北朝鮮の弾道ミサイルなどはどの様な理由で放たれるか分からないからです。
当然ながら自衛隊は迎撃出来る様に警戒態勢をとって、市ヶ谷の防衛省にはPAC3の部隊が常駐するようになりました。しかし、万が一落とせなかった場合も考えておく必要があります。
核攻撃を受けた場合、人体に危険を及ぼすのは次の3つの要素に分けられます。
核爆発によって発生する熱線、爆発によって起こる衝撃波、そして原子分裂反応で起こる放射線による被害です。
まず、真っ先に対処が必要なのが熱線と衝撃波に対する備えです。
広島の原子爆弾による被害記録を辿ると、たまたま建物の影にいた為、熱線による大やけどを回避出来た記録があります。
衝撃波も爆心地からある程度離れた場所で、頑丈な建物や地下室にいた事で避けられています。
核兵器の爆発力によって具体的な数字は変わってしまいますが、地下空間にいれば比較的安全と言えそうです。
但し、核兵器には地下施設を目標としたものもあり、必ず安全とは言えないので注意が必要です。
代表的なものとしては、地下シェルターがありますが個人で揃えるには費用が掛かってしまい難しいですし、外出先では使えません。
簡単な避難先としては地下鉄や地下街に逃げ込むという手段があります。
映画「シン・ゴジラ」でもゴジラを目標とした米軍の爆撃に備えて地下へ逃げ込む描写がありました。
熱線と衝撃波に対しては逃れられますが、放射線はもっと厄介です。
広島に原子爆弾が落とされた事を日本側が知るきっかけになった出来事に、爆心地に近い市立病院の地下にあったX線写真用のフィルム全てが放射線を受けて感光しており、地下室にも大量の放射線が浸透していた事が分かったというのがあります。
放射線を遮蔽するには大量の水か鉛の壁、水分を豊富に含んだ土壌といった要素が必要になり、核シェルターを用いるか東京の都営地下鉄大江戸線の六本木駅に代表される様な地下30m以上の地下空間に避難するといった方法が必要になってきます。
弾道ミサイルが発射された場合はJ-ALERTによって避難勧告が出るので、いざという時の避難先を確認しておきましょう。
核兵器爆発時の対処
低い姿勢で身を隠す
万が一、避難が間に合わない状態で核攻撃を受けてしまった時はどうすればいいのでしょうか?
核爆発の時に発生するエネルギーは膨大で強烈な閃光も発生します。
その為、核爆発を直接目で見ない様に背中を向け、強烈な熱線と衝撃波から身を守る為に物陰へ隠れて低い姿勢を取りましょう。
爆発による衝撃波が収まったら、速やかにその場から離れましょう。
放射線による初期の被ばくは避けられませんが、放射線を発生する汚染されていた土壌や降下物から離れて、更なる被ばくを避けるようにしましょう。
その時、灰やチリを吸わない様に口をマスクで覆うといった処置をすれば体内被ばくも防げます。
因みに原子爆弾が炸裂した後に黒い雨が降ると言いますが、燃やされた家屋などの灰が爆発によって発生する原子雲と言われる雲の中で水分と繋がり降る現象です。
その為、木造建築の少ない現代では灰色や白色の雨が降ると言われています。
広島と長崎では爆撃後の市街地に入った方々が二次被ばくとなって、戦後放射線による後遺症に苦しめられています。
核兵器から攻撃事後の対応
被ばく者の治療には膨大なリソースが必要になる。
無事に爆心地から逃れられたら、出来るだけ早く医療機関へと行き治療を受けるようにしましょう。
施設に入る時は靴の底を入念に洗い流す必要があります。
出来る事なら全身を洗い流しましょう。これを除染といいます。
映画「シン・ゴジラ」で立川防災基地に入る際に足を消毒してテントから出てくるというシーンがありましたが、放射線に汚染された土壌を洗い流す事で汚染されていない地域まで放射性物質を持ち込まないという考えから行われています。
爆心地から物を持ち込むのはご法度です。
被ばく者の治療には多大な労力が必要で、熱線による火傷があれば人工皮膚への貼り換え手術が必要になりますし、衝撃波で骨折や飛来物によるケガを負っている可能性もあります。
放射線の被ばくによる症状の治療は更に大変で、細胞が放射線によって破壊された部位の切除や血液を健康なものと交換する為に大量の輸血が必要になります。
被ばくの度合いが軽くても、将来的にガンが発生する確率が上がる可能性があります。
日本では原爆症と呼ばれる放射線障害という病に掛かるためですが、非常に長期間に渡って苦しめられる場合があるのが特徴です。
白血病や甲状腺がんになる確率が上がる為、生涯に渡り抗がん剤治療や放射線治療を行う必要性があるのです。
放射線が弱まる前に爆心地へ入った場合も被ばくしてしまうので、一度逃れたら同じ場所にはすぐに戻れない事を覚えておきましょう。
核攻撃に対する備えとして、最も効果的で良い手段としては外交的な手段によって相手に核兵器の使用を諦めさせ、可能であれば核兵器を放棄させる事です。
しかし、世界で核兵器を保有する国や組織が存在する限り、核攻撃の脅威に備える必要があります。
もし日本が弾道ミサイルによる攻撃を受けた場合はJ-ALERTによって避難指示が放送されるので、速やかに安全な地下や物陰へ避難するようにしましょう。
そして自衛隊が弾道ミサイルを迎撃してくれる事に期待しましょう。
まとめ
・核兵器による攻撃に備えて地下鉄や地下街といった避難場所を探しておく
・核兵器による攻撃を受けた時、避難が間に合わなければ低い姿勢で物陰に隠れる
・核兵器による攻撃後は速やかにその場から離れ安全な医療機関に行く
・被ばくしたら除染してから治療を受ける
参考サイト
◆放射線障害に対する治療法 (09-03-05-01) ATOMICA
◆基盤研究計画書 公益財団法人放射線影響研究所(旧原爆傷害研究委員会)
◆原爆放射線について 厚生労働省
◆終戦特集(1)「原子爆弾・核兵器の誕生」
◆終戦特集(2)「原子爆弾・核兵器の威力と影響」