前回「シン・ゴジラから学ぶ、日本の防衛体制(1)」ではゴジラという未知の災害に対して日本政府が行える対応の法的な根拠や権限等を調べてきました。
では災害に対する法律があったうえで、首都をはじめとした日本に災害・有事が発生した際にはどこのどのような防災拠点を用いて行政は対応していくのでしょうか?
劇中に登場する防災拠点となる施設を紹介していきます。
引き続き、ネタバレとなりますので映画「シン・ゴジラ」を未見の方は鑑賞してから読まれる事をおススメいたします。
情報を集約する「内閣情報集約センター」
あらゆる情報をまとめ内閣へ報告する。
「内閣情報集約センター」は映画「シン・ゴジラ」冒頭で登場する重要な防災拠点施設です。
この施設は「内閣情報調査室」という情報機関に所属する施設で、災害だけでなく国内外の危険情報や海外のスパイに対する対応などの高度な情報収集能力を持つ特殊な組織になります。
ここでは情報収集衛星の運用も行われていて、災害時の被災地の画像情報を集める事や、有事の際に自衛隊が関連する軍事的な情報を集める事も出来ます。
内閣情報集約センターでは各政治機関や公共団体からの報告に加えて、マスコミの報道といった情報も集め、非常事態に関する情報を内閣へ提供する事が重要な仕事になります。
この設備は危機管理センターと密接に関わりを持っている施設です。
不測の事態にすぐに対応できるよう24時間体制で動いています。
この「内閣情報集約センター」で集められた情報がその後の内閣による災害対策の動きを大きく左右するのです。
まさに司令塔「首相官邸危機管理センター」
日本の災害対処総司令部
首相官邸は内閣総理大臣の執務室がある建物で、普段から行政の中心となる施設です。
1999年に建て替えられ、施設も見た目も一新されています。
以前は別館の地上3階にあった「首相官邸危機管理センター」が震災を想定して地下に作り直され、非常時にはここから総理大臣が指揮をとります。
ここも24時間体制で動いており、災害時の対策室が設けられる事になっています。
「内閣情報集約センター」で集められた情報を元に、内閣総理大臣がどのように対策を行うかを「首相官邸危機管理センター」で指示する手筈です。
(同様に災害に対処して都内で動く施設としては霞が関の中央合同庁舎にある「内閣府災害対策本部長室」と、自衛隊の作戦中枢として機能する「防衛省中央指揮所」が存在します。)
映画「シン・ゴジラ」でもこの施設はゴジラが接近するまで活躍しました。
首都防災の要「立川広域防災基地」
首都災害における様々な事態に備える一大拠点
昨今、いつ起こっても不思議ではないと心配されている首都直下型地震に備えて、23区から少し離れた位置に大規模な災害支援施設が必要であるとされていました。
そこで、1979年に在日米軍の立川基地跡を利用して公園と広域防災施設の建設が始まります。
これが「立川広域防災基地」で、万が一「首相官邸危機管理センター」が機能できなくなった際には、臨時拠点として動くようになっています。
ここには、内閣府をはじめ国土交通省・自衛隊・海上保安庁・警視庁・東京都消防庁・DMAT(災害派遣医療チームという民間の医療関係者団体)・国立病院機構・日本赤十字社といった防災に関連する重要な機関の施設が集中しており、東京都の多摩区を管轄とする防災拠点でもあります。
普段はDMATの養成や各機関の訓練に用いられていますが、災害時には指揮機能の拠点となるだけではなく、長さ900メートルの滑走路で航空自衛隊のC-1輸送機も離着陸可能な立川飛行場を活用した空輸拠点、自衛隊・警察・消防が持つヘリによる救助活動拠点、広さ165ヘクタールを誇る昭和記念公園を用いた避難場所提供や物資集積地域の開設を行う拠点となる事が出来ます。
自衛隊では前方兵站地域(FSA)と呼ばれる大規模な備蓄資材の展開が可能です。
加えて立川には国立病院機構の災害医療センターもあり、災害によって発生する傷病者の収容もスムーズに進める事が出来ます。
これだけの災害対策機関が集中した拠点は他になく、立川広域防災基地は首都の防災における要と言えます。
立川、すごいです。
映画「シン・ゴジラ」の劇中でも、都心にゴジラが接近したのちには立川が中心拠点となり主人公たちの活躍の場となっていきます。
立川広域防災基地のシーンで特に印象的なのは、多くの犠牲者が出て感情的になった主人公・矢口(長谷川博己さん)に対して、盟友である泉政調副会長(松尾諭さん)が「まずは君が冷静になれっ!」と諭しながら水のペットボトルを渡すシーンです。
これは立川広域防災基地には充分な備蓄物資が蓄えられている事を示唆するシーンでもあります。
立川は都心から30kmほどしか離れていない為、映画「シン・ゴジラ」の中ではゴジラによる放射線汚染の影響もあるのではと指摘されていますが、首都直下地震などの時に都心に近い場所で救助活動の大拠点があるのは非常に心強い事です。
立川広域防災基地、あらためて、すごいですね。
まとめ
- 災害に関する情報は「内閣情報集約センター」にあらゆる手段で集められる。
- 大規模災害時の指揮は「首相官邸危機管理センター」で内閣総理大臣により行われる。
- 「立川広域防災基地」には首都防災の要として防災に関連する様々な機関が集中している。