食事の楽しみは高齢者にとって、生きるバイブルとも言われるほど、とても重要かつ大切なものです。
そんな「食べる」ことには3つの意義があります。
・栄養を体に取り入れ生命を維持する
・活動するためのエネルギーを得る
・味を楽しみ生活の質(QOL)を維持する
いずれも人間らしく生きるためにとても大切なことです。
誤嚥性肺炎を予防していくことは上の3つの意義とも深く関連しています。
生活の質(QOL)を維持していくためにも、普段から誤嚥性肺炎を予防していくことは理にかなっています。
日常生活で簡単にできるトレーニング法をご紹介していきます。
嚥下機能の5期

誤嚥性肺炎を予防していくためには、飲みこみ障害の視点だけでなく「食べる機能の障害」として捉えていくことが大切です。
第1期~先行期~
何をどのように食べるかを判断して食物を口へ運ぶ段階
第2期~準備期~
食物を咀嚼して食塊を形成していく段階
第3期~口腔期~
食塊を口腔から咽頭に送り込む段階
第4期~咽頭期~
嚥下反射により食塊を食道へ移送していく段階
第5期~食道期~
蠕動運動により食塊を胃へ移送していく段階
食物を飲み込む機能は上記の5段階に分けられています。
少し難しく感じるかもしれませんが、誤嚥性肺炎を予防していくためには、嚥下機能を理解していく必要があります。
食物を咀嚼して飲み込む場合は、準備期と口腔期が同時に進行しています。
食物を噛みくだきながら咽頭へ送り込み、咽頭で食塊を作っていくのです。
誤嚥の状態は食物や唾液などが、何かの拍子で声門を超えて気道に入ってしまうことです。
これが誤嚥性肺炎の原因となっています。
摂食・嚥下訓練を実施
ベッドサイドでできる摂食・嚥下訓練です。
食物を用いないで簡単にできる訓練なので、気軽にトライしていきましょう。
体幹訓練

頸部や体幹が緊張して動きが悪くなっていると、嚥下の際、呼吸する力や強い咳が上手くできなくなってしまいます。
呼吸を止めずにリラックスして実施していきましょう。
~肩甲骨の上げ下げ運動~
両肩を頸部に密着させるように挙げていき、ゆっくり脱力して下げていきます。
~首回旋運動~
右手を右の顎に置き、押しながら首を左にひねっていきます。
次は左手で右にねじっていきます。
無理をせずにゆっくり10秒間ずつ交互にトライしていきましょう。
呼吸訓練~腹式呼吸~
両手を腹部に当て、押しながら大きくゆっくり口から息を吐いていきましょう。
息を吐ききったら、お腹を膨らませるように鼻から息を吸っていきましょう。
咳嗽訓練
誤って食物を誤嚥してしまった場合、食物を吐き出すために有効な咳をするための訓練になります。
枕を抱きしめながら、咳をするとき強く抱きしめるようにしていく。
少しずつ慣れてきたら、枕なしで実施していく。
2~3回ずつ休憩を取りながら実施していきましょう。
発声訓練

発声訓練は気道の入口である喉頭の閉鎖、呼吸機能の改善、そして喉頭挙上の改善に役立ちます。
また、覚醒を促すことにもつながってきます。
息を吸ってから「あ~」「え~」などの母音をできるだけ長く出していきます。
大きな声が出るよう励ましながら練習していきましょう。
目安としては10~15秒を目標としていきます。
他、舌の運動などがあります。
食物の送り込みや咀嚼がスムーズにできない場合、口の中や舌の上に食物が残ってしまう場合などは舌の運動訓練が有効です。
いずれの運動は食物を用いることなく簡単に実施することができます。
安全に食物を飲み込む力をつけていくためには、上記でご紹介した間接訓練が役立ってきます。
専門家によるスクリーニングテストとして、反復唾液嚥下テストや改訂水飲みテストなどがあります。
状況に応じて嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査などを導入していくこともあります。
誤嚥性肺炎を予防していくためにも、日々簡単にできるトレーニング法である間接訓練を習慣化していきましょう。
まとめ
・食べることには3つの意義がある
・高齢者にとって「生活の質(QOL)」を維持していくことは重要
・嚥下機能の5つの段階を理解する
・ベッドサイドでできる体幹訓練などは安全に食物を飲みこむ力をつけていく
・咳嗽訓練は食物を吐き出すために有効な咳をするための訓練
・発声訓練は呼吸機能を改善させる
・状況に応じて舌の運動なども導入していく