前回は中央指揮システムの設置と女性自衛官の活躍拡大に関して説明しました。今回は昭和61年に発刊された第12回目の防衛白書について紹介致します。
安全保障会議とは何か

中央指揮所内の防衛会議室(防衛白書1986年度)
国の安全保障に関する重要事項を審議する機関として、昭和31年7月内閣に「国防会議」が設置されました。(構成:総理大臣(議長)、副総理、外務・大蔵大臣、防衛庁・経済企画庁長官)
その後、ミグ25事件(昭和51年)、大韓航空機撃墜事件(昭和58年)のような、わが国の安全に重大な影響を及ぼす恐れのある緊急事態が発生する可能性が潜在的に高まっていました。こうした事態に迅速適切に対処し、事態の拡大発展を防止するため、昭和61年7月内閣に新たに「安全保障会議」が設置されました。構成は、総理大臣を議長とし、外務・大蔵大臣、内閣官房長官、国家公安委員会委員長、防衛庁長官、経済企画庁長官で、統合幕僚会議議長(現在は統合幕僚長)はメンバーでなく、必要と認められた時に意見を述べることができました。
審議事項は、「国防の基本方針」、「防衛計画の大綱」、「防衛出動の可否」、「その他国防に関する重大事項」です。
諸外国の国家安全保障会議(NSC:National Security Council)のように国家戦略を策定する機能を持った、新たな「安全保障会議」(日本版NSCと呼ばれる)に移行するのは、平成25年になってからです。
中期防衛力整備計画とは

suzutake / Shutterstock, Inc.
防衛力の整備は一朝一夕にはできないので、中長期的見通しに立って行う必要があります。防衛力整備は、昭和51年策定の防衛計画の大綱を踏まえ、昭和60年まではGNP1%枠のもとで年度ごとの予算に基づき進められていました。昭和61年度以降は、5年間を対象とする「中期防衛力整備計画」(61中期防と呼ばれる)を策定し、各年度の防衛力整備を実施しています。大綱及び中期防は、いずれも安全保障会議における審議・決定を経て閣議決定されます。5年間の中期にわたる防衛力の整備について政府レベルで決定されるということは、従前の防衛庁作成の計画から政府計画に格上げされたことで大きな意義をもっています。
中期防衛力整備計画は5年間の経費の総額(の限度)と主要装備の整備数量を明示しています。整備数量を事業として具現化する場合、その時々の経済財政事情、国際情勢、技術的水準の動向等を勘案し年度ごとに必要な経費を計上し、予算化して実施されます。61中期防の実施に必要な防衛関係費の総額の限度はおおむね18兆4000億円で、昭和60年度のGNPの見通しから推計すると1%枠を若干上回る額となっていました。
まとめ
・安全保障会議は日本の防衛に纏わる重大事項を定めてきた
・中期防衛力整備計画で、中長期的な自衛隊の防衛力の整備方針を定める
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大