前回は「昭和天皇の大喪の礼」と自衛隊の関わりについて説明いたしました。
今回は平成2年に発刊されました「16回目の防衛白書」から「今上天皇の即位」を中心に説明致します。
今上天皇の即位
昭和64年1月7日昭和天皇崩御に伴い、今上天皇は1年間の喪に服したあと、即位のための儀式が1年間にわたり行われました。平成2年11月12日に外国王室の戴冠式にあたる「即位の礼」が国事行為として行われ、160か国の元首、祝賀使節、国際機関の代表、各界の代表等約2,500人の参列者がありました。「大喪の礼」と同様に自衛隊は、「儀仗」、「と列」、21発の「礼砲」、「パレード時の沿道奏楽」等を実施しました。皇室行事としての天皇即位の儀式「大嘗祭(だいじょうさい)」は、11月23日に行われました。
「即位の礼」は、京都御所で行われる習わしでしたが、警備の関係等により今上天皇は、皇居で実施されました。「即位の礼」で天皇陛下が着座される高御座(たかみくら)は京都御所にあり、陸上自衛隊のヘリコプター(CH-47)が皇居まで運びました。
定年の延長
自衛隊は志願制により隊員を募集していますが、任期制の隊員の募集は、適齢人口の減少や景気に影響されることが多く、厳しい状況が続いていました。この年から「曹候補士」の任用制度を導入し、任期制の階級(士)から定年まで勤務できる階級(曹以上)を保障して、良質な人材を確保することを期待しています。
自衛隊は、精強性を維持するため若年定年制を採用していますが、豊富な知識と経験を有する人材を有効活用する観点から曹クラスの定年が延長され、逐次幹部の定年も延長されることになりました。
沖縄と基地
昭和47年5月15日、沖縄は本土復帰されましたが、83施設約278㎢は米軍専用施設として提供されたままでした。平成2年6月の日米合同委員会において、沖縄県内の施設・区域の整理・統合について検討され、17施設(23事案)約10㎢の返還に向けて手続きを進めることで意見の一致が見られました。平成28年現在16施設19事案について返還が実施されていますが、返還合意されているものの返還が完了していない施設もあります。普天間飛行場の全面返還や那覇港湾施設の返還については、在日米軍の必要性等によりこの23事案に含まれていませんでしたが、平成8年の別の交渉により返還が認められたものの、移転先等の問題により現在まで返還は実施されていません。
まとめ
・今上天皇の即位の礼で自衛隊も式典に参加した
・良質な人材活用を目指して定年の延長と曹候補士の任用を開始した
・沖縄の基地返還が日米合同委員会にて進められる
参考サイト
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