第18回目の「防衛白書」は、前年に引続き平成4年に発刊されました。
平成3年の湾岸戦争停戦やソ連崩壊等の国際情勢の変化の中で、世界の平和と安全を確保するため、世界第2位の経済大国にふさわしい貢献として、資金面の協力以上に人的な貢献が求められるようになりました。ペルシャ湾に派遣された海上自衛隊の掃海部隊が成果を上げたことが契機となり、国連を中心とした人的な面での活動に対する協力を、一層適切かつ迅速に行うための「国際平和協力法」と「国際緊急援助隊法改正」が、平成4年6月に成立しました。
国連を中心とした人的な面での活動に対する協力
「国際平和協力法」に規定された業務は、「停戦合意の遵守状況の監視」や「選挙の監視」等の国連平和維持活動で、国連事務総長からの参加の要請に基づき協力します。「紛争当事者間に停戦の合意が成立している現場への派遣」となるため、武器の使用は隊員の生命または身体の防衛のための最小限に限る等の制約があり、海外派兵にあたらない内容となっています。
「国際緊急援助隊」は、海外で大規模な自然災害などが起こった時に、人道的な救援活動を行っている国際機関や被災国政府の要請に基づき派遣されます。被災民の救出や医療・食料の支援等の人道的な国際救援活動は、被災地において「自己完結的に行動を行う」必要があり、自衛隊の保有する能力を活用できる場合に派遣されます。
国際平和協力法の成立に伴い初の平和維持活動(PKO)として、平成4年9月国連カンボジア暫定機構(UNTAC)へ自衛隊の部隊を派遣しました。主な業務は、カンボジア内戦の終結に伴う「停戦遵守状況の監視」と「内戦で破壊された道路、橋等の修理」等で、約1年間に延べ約1,200名が派遣されました。また、航空自衛隊の輸送機が人員及び資材等の航空輸送を実施しました。
UNTAC:United Nations Transitional Authority in Cambodia:国連カンボジア暫定機構
海外の危険を伴う実任務において殉職した場合に支払われる「賞じゅつ金」の最高額が2倍となる5,000万円に増額されました。
※ 賞じゅつ金:殉職又は公務中の事故が原因で障害者になった場合に、弔意や見舞いのために遺族や本人に支給される金銭
政府専用機
昭和62年政府専用機としてジャンボ機(ボーイング747-400)の導入が決定され、平成3年2機受領 平成4年4月から防衛庁に所属替えし、航空自衛隊の機体識別番号が付与されました。皇族、内閣総理大臣等の輸送、緊急時の在外邦人救出のための輸送、国際緊急援助活動実施のための輸送、国際平和協力事業実施のための輸送ができるようになりました。
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大
◆防衛白書とは?(12)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(13)在日米軍の施設と関連費用とは
◆防衛白書とは?(14)次期支援戦闘機(FS-X)の選定
◆防衛白書とは?(15)大喪の礼と自衛隊
◆防衛白書とは?(16)即位の礼と自衛隊 定年延長について
◆防衛白書とは?(17)湾岸戦争と自衛隊 防衛白書平成3年版