第21回目の「防衛白書」は、前年に引続き平成7年に発刊されました。
平成7年は、「阪神・淡路大震災」と「地下鉄サリン事件」が発生し、自衛隊が大規模な災害派遣を実施した記憶に残る年でした。
災害派遣「阪神・淡路大震災」
平成7年1月17日午前4時46分、淡路島北部を震源とする地震は、死者5,500人以上、負傷者41,500人以上の被害を引き起こした戦後最大の震災となりました。
自衛隊は、航空偵察、行方不明者の捜索・救助、遺体の収容、患者輸送、救護所の設置、医療支援、救援物資等の輸送、吸水・給食支援、天幕や入浴施設の設置・運営、防疫支援及び倒壊家屋処理等の業務を実施しました。4月27日に撤収するまでの約100日間に、陸海空自衛隊延べ人員約220万人、車両約340,000両、航空機約13,000機、艦艇約680隻が災害派遣に従事しました。
オウム真理教による「地下鉄サリン事件」
平成7年3月20日午前8時、通勤ラッシュの地下鉄で発生したサリンによる毒物テロは、乗員乗客12名を死亡させ5,510人に重軽傷を負わせました。世界でも類を見ない大規模無差別テロ事件であり、化学武器を用いたテロへの対応策が必要となる事件でした。
自衛隊は、化学防護隊(核・生物・化学武器に対応する部隊)等を派遣し、毒性ガスの検知及び除染等を行うとともに、医官を派遣し医療活動を行いました。
教訓からの改善
阪神・淡路大震災においては、災害情報の収集及び伝達の態勢が整備されておらず、自衛隊、警察、消防の相互連携が不十分であり、自治体との連携の不備も指摘されました。阪神・淡路大震災の教訓として自衛隊法や災害対策基本法等を改正し、以下の改善がされています。
・緊急の航空偵察実施(震度5弱以上の地震発生時、速やかな情報の伝達)
・災害派遣要請の簡略化(都道府県知事以外の市町村長の要請権限追加等)
・派遣隊員の応急措置権限の追加(警察官不在時の警戒区域の設定、危害防止の措置等)
・被災者に対する食糧等支援の緩和等(災害救助物品の譲与等)
自衛隊においては、地元自治体等と災害派遣の訓練を実施するとともに大規模災害に対応する器材を整備し、迅速かつ効率的な救援活動が可能となる改善を実施しました。また、退職自衛官を地方公共団体の防災関係部局に採用することによる連携の強化も図られています。阪神・淡路大震災で直面した種々の問題は、以後の東日本大震災等に活かされる教訓として意味のあるものになりました。
まとめ
・阪神・淡路大震災を契機に災害派遣出動条件が緩和された
・国や自治体と自衛隊との連携が強化された
・サリン等に対応可能な部隊が改編された
地下鉄サリン事件から22年 東京オリンピックを前に学ぶテロリズムの実態
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大
◆防衛白書とは?(12)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(13)在日米軍の施設と関連費用とは
◆防衛白書とは?(14)次期支援戦闘機(FS-X)の選定
◆防衛白書とは?(15)大喪の礼と自衛隊
◆防衛白書とは?(16)即位の礼と自衛隊 定年延長について
◆防衛白書とは?(17)湾岸戦争と自衛隊 防衛白書平成3年版
◆防衛白書とは?(18) 国連を中心とした人的な面での活動に対する協力
◆防衛白書とは?(19)米軍の夜間離着陸訓練場所の変更とイージス艦の導入
◆防衛白書とは?(20)自衛隊創立40周年の節目