第23回目の「防衛白書」は、前年に引続き平成9年に発刊されました。
日米両国は、日米安保体制の意義・役割について緊密な協議を行っており、平成8年4月に日米両首脳による「日米安全保障共同宣言」が表明されました。共同宣言に基づき、当時の情勢の変化に対応するため「日米防衛協力のための指針」(ガイドラインと呼ばれる)の見直しが実施されました。
新ガイドライン
昭和51年に策定された旧ガイドラインは、日本が他国からの攻撃を受けた際の自衛隊と米軍の協力に重点を置いてまとめられていました。東西冷戦が終結するなど国際情勢が変化することによる新ガイドライン(平成9年9月23日了承)の見直しは、わが国の安全保障上不可欠な要素である日米安全保障体制の信頼性向上のため行われました。専守防衛という基本方針は変えることなく、日米間の平素から行う協力、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動、日本周辺地域における事態に対する協力等が、事例ごとに具体的に示されています。新ガイドラインに基づき、日米の共同作戦計画及び相互協力計画についての検討、共通の実施要領の確立といった共同作業を行うことや両国間の調整メカニズムを平素から構築することが実行されるようになりました。
このガイドラインは、国際的な活動の増加や日米協力の実効性の確保等の理由により、平成27年に再度見直されることになります。
防災基本計画
平成9年1月2日、島根県沖でロシア船籍ナホトカ号(重油1.9万キロリットル積載)が破断・沈没し、重油が流出して日本海沿岸の広範囲に漂着しました。自衛隊は、3月31日までの間、自衛隊員延べ144,000人、車両延べ11,000両、航空機延べ600機、艦船延べ920隻等が、陸海空から重油回収の災害派遣に従事しました。極寒の中、異臭が強い粘性のある重油を、主として手作業で回収する業務は困難を極め、ボランティアで参加された方が過労で亡くなられる事態になりました。
「防災基本計画」は、国、公共機関、地方公共団体及び事業者等がそれぞれの役割に応じて、災害予防、発生時の対応及び復旧等の実施事項を具体的に示しています。ナホトカ号事故以前は、台風、地震等の自然災害を主な対象としていましたが、事故後の教訓として重油流出等の事故災害も含まれるように改訂されました。なお、平成23年には、東日本大震災を踏まえた地震・津波対策の強化の改訂が行われています。
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大
◆防衛白書とは?(12)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(13)在日米軍の施設と関連費用とは
◆防衛白書とは?(14)次期支援戦闘機(FS-X)の選定
◆防衛白書とは?(15)大喪の礼と自衛隊
◆防衛白書とは?(16)即位の礼と自衛隊 定年延長について
◆防衛白書とは?(17)湾岸戦争と自衛隊 防衛白書平成3年版
◆防衛白書とは?(18) 国連を中心とした人的な面での活動に対する協力
◆防衛白書とは?(19)米軍の夜間離着陸訓練場所の変更とイージス艦の導入
◆防衛白書とは?(20)自衛隊創立40周年の節目
◆防衛白書とは?(21)自衛隊の災害派遣 阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件
◆防衛白書とは?(22)日米関係の強化