第25回目の「防衛白書」は、前年に引続き平成11年に発刊されました。
海上警備行動
平成11年3月、能登半島沖の不審船事案に対し自衛隊創設以来初めての海上における警備行動が発令されました。海上警備行動は、自衛隊における行動等の一つで、防衛出動、治安出動、海賊対処行動等とともに武力行使及び武器の使用が認められています。海上において海上保安庁の対応能力を超えると判断される場合に自衛隊が実施する活動であり、防衛出動等とは違う法執行活動であり、武力(防衛力)の行使ではなく警察力の行使と考えられています。
警戒監視活動中の海上自衛隊の哨戒機が日本の魚船名を付けた不審船らしい船舶を発見し、通報を受けた海上保安庁の巡視船の停戦命令を無視して逃走を始めました。巡視船の威嚇射撃も無視して高速で逃走を続けたため、海上保安庁の能力を超える事態になったと判断され、海上自衛隊に対し海上警備行動が発令されました。海上自衛隊の護衛艦は停船命令を実施するとともに警告射撃を実施しましたが、不審船は防空識別圏外に逃走しました。
この事案による教訓・反省事項などを踏まえ、海上自衛隊と海上保安庁との役割分担や共同対処要領等を定めた「不審船に係る共同対処マニュアル」が作成されました。
※防空識別圏:日本の周辺を飛行している航空機が、どこの国の航空機か領空侵犯の恐れがあるかを識別するための空域。領空土の限界や範囲を定めるものではなく、領空を侵犯される前に対処行動を行うための空域。
防衛調達業務の改善
防衛庁が実施している武器等装備品の調達業務において、一部の業者が工数の水増し等により多額の過払いを受けていたことが判明しました。また、過払い金の返還に当たって、防衛庁の職員が自己の保身を図るため、返還額を不正に減額させる事案が発生しました。
この事案を受けて、防衛調達制度の改革への取り組みが実施され、平成11年3月に改革のための具体策がまとめられました。特殊な防衛装備品のため随意契約(競争によらず任意で決定した相手と契約すること)が多い防衛調達について、供給ソースの多様化や競争原理を強化する、相互牽制ができる新しい調達機構を作る、天下り等の再就職の在り方を見直す等の改革を行い、調達業務の透明性・公正性を拡大することが提案されました。
自衛官の挙措動作のみならず防衛庁職員の業務遂行にも注目されており、様々な改革により防衛庁に対する国民の信頼拡大に努めています。
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大
◆防衛白書とは?(12)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(13)在日米軍の施設と関連費用とは
◆防衛白書とは?(14)次期支援戦闘機(FS-X)の選定
◆防衛白書とは?(15)大喪の礼と自衛隊
◆防衛白書とは?(16)即位の礼と自衛隊 定年延長について
◆防衛白書とは?(17)湾岸戦争と自衛隊 防衛白書平成3年版
◆防衛白書とは?(18) 国連を中心とした人的な面での活動に対する協力
◆防衛白書とは?(19)米軍の夜間離着陸訓練場所の変更とイージス艦の導入
◆防衛白書とは?(20)自衛隊創立40周年の節目
◆防衛白書とは?(21)自衛隊の災害派遣 阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件
◆防衛白書とは?(22)日米関係の強化
◆防衛白書とは?(23)「新ガイドライン」と「防災基本計画」
◆防衛白書とは?(24)予備自衛官について その採用と訓練について