第32回目の「防衛白書」は、前年に引続き平成17年に発刊されました。
平成16年12月、新しい「防衛計画の大綱」が策定されました。防衛力の整備は一朝一夕にはできないので、「防衛計画の大綱」という長期的な目標の下、「中期防衛力整備計画」に基づき、年度ごとに必要な装備と経費を計上して実施されます。
新「防衛計画の大綱」とは
新「防衛計画の大綱」は、平成7年に策定された前大綱の時代から我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化したことなどを踏まえ、安全保障の基本的な考え方を示すとともに、従来の防衛力整備の基本的な考え方である基盤的防衛力構想を見直して、新たな防衛力の考え方(「抑止効果」重視から「対処能力」を重視した防衛力への転換)が明示されました。
新たな任務の明記
新「防衛計画の大綱」で示された新たな脅威や多様な事態は、以下のとおりで、事態の特性に応じた即応性や機動性を備えた部隊等を適切に配置することにより実効的に対応することとされています。
①弾道ミサイル攻撃への対応
②ゲリラや特殊部隊による攻撃などへの対応
③島嶼(とうしょ)部に対する侵略への対応
④周辺海空域の警戒監視及び領空侵犯対処や武装工作船などへの対応
⑤大規模・特殊災害などへの対応
新たな脅威や自衛隊の多様化する役割に速やかに対応し、将来にわたり自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するためには、平素から陸海空自衛隊を有機的かつ一体的に運用できる体制が必要です。
統合幕僚会議から統合幕僚監部へ
平成17年度、自衛隊の運用に関し、各自衛隊を代表して一元的に防衛庁長官(当時:現防衛大臣)を補佐する配置として、統合幕僚長(自衛官の最高位、旧統合幕僚会議議長)を新設し、幕僚機関として統合幕僚監部を設置し、自衛隊の部隊を統合運用に適合できる体制になりました。
ゲリラや特殊部隊による攻撃などの各種の事態が発生した場合、迅速に戦力を展開できるよう、陸上自衛隊に起動運用部隊や各種対処専門部隊を一元的に管理する部隊の新編も計画されました。また、航空自衛隊は、空中給油・輸送機の導入も計画されています。
統合幕僚会議は昭和29年に設立され、陸海空自衛隊の統合運用の調整を行うため、統合幕僚会議議長と、陸海空各幕僚長で組織されていました。
運用に関して防衛庁長官の指揮命令は、各幕僚長を通じて実施されておりましたが、新組織では、各自衛隊の運用に関する長官の指揮命令は、すべて統合幕僚長を通じて行われるようになりました。
参考サイト
◆防衛省・自衛隊ホームページ
◆防衛白書とは?(1)防衛白書の歴史
◆防衛白書とは?(2)作成の方針
◆防衛白書とは?(3)防衛白書と防衛大綱
◆防衛白書とは?(4)防衛力強化の取り組み
◆防衛白書とは?(5)シビリアン・コントロール
◆防衛白書とは?(6)新階級「曹長」と予備自衛官
◆防衛白書とは?(7)日米協力と機密情報保護
◆防衛白書とは?(8)防衛予算の金額と防衛記念章の規定
◆防衛白書とは?(9)冷戦の縮小とフォークランド紛争の教訓
◆防衛白書とは?(10)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(11)中央指揮システムの設置と女性自衛官活躍の拡大
◆防衛白書とは?(12)部外協力活動の取り組みと米国との相互技術交流
◆防衛白書とは?(13)在日米軍の施設と関連費用とは
◆防衛白書とは?(14)次期支援戦闘機(FS-X)の選定
◆防衛白書とは?(15)大喪の礼と自衛隊
◆防衛白書とは?(16)即位の礼と自衛隊 定年延長について
◆防衛白書とは?(17)湾岸戦争と自衛隊 防衛白書平成3年版
◆防衛白書とは?(18) 国連を中心とした人的な面での活動に対する協力
◆防衛白書とは?(19)米軍の夜間離着陸訓練場所の変更とイージス艦の導入
◆防衛白書とは?(20)自衛隊創立40周年の節目
◆防衛白書とは?(21)自衛隊の災害派遣 阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件
◆防衛白書とは?(22)日米関係の強化
◆防衛白書とは?(23)「新ガイドライン」と「防災基本計画」
◆防衛白書とは?(24)予備自衛官について その採用と訓練について
◆防衛白書とは?(25)教訓から生まれた海上警備行動が発令!
◆防衛白書とは?(26)国際平和協力業務と人道的支援
◆防衛白書とは?(27)防衛庁の移転と自衛隊員倫理法について
◆防衛白書とは?(28)えひめ丸事件と9.11同時多発テロ
◆防衛白書とは?(29)対人地雷禁止条約と情報公開について
◆防衛白書とは(30)予備自衛官補制度の制定と賞罰の付与
◆防衛白書とは(31)女性自衛官制度とイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動