2021年5月20日に災害対策基本法が改正されて、避難勧告が廃止されたことはみなさんご存じのことでしょう。では、避難指示はどうなったのかおわかりでしょうか。避難勧告は廃止となりましたが、避難指示はそのまま残っているのです。なぜ避難指示が残って避難勧告が廃止されたのか、ほとんどの方が知っていないはずなのです。これこそが、勧告が廃止された理由となります。今回は、あまり意識されていない避難勧告が廃止された理由と、新しい警戒レベルについて解説していきましょう。
避難勧告と避難指示、どちらが先に発令されていた?
先ずは廃止前の警戒レベルの復習をしてみましょう。避難勧告と避難指示、さてこの内どちらが先に発令されていたか覚えているでしょうか。意外に「避難指示だ」と答えられる方が多いのですが、先に発令されるのは「避難勧告」でした。しかもこの避難勧告と避難指示は、どちらも警戒レベル4に属していたのですが、このことも知らない方が多いのも事実なのです。
避難勧告はお願いベースだった!?
ここで避難勧告が持っていた意味をおさらいしてみます。避難勧告とは、「そろそろ危ないから逃げる準備をしてくださいね。自分の判断で逃げてくださいね」と、とてもザックリですがこんな意味です。つまり、「逃げなさい!」ではなく「逃げてくださいね」のお願いベース的な扱いだったのです。なので、あまり強いメッセージでないので気に留めない方が多かったのです。
避難指示は命令系
一方で、避難指示は「逃げなさい!」と強い命令系となるので、自治体も「早く避難しなさい!」と住民に発信します。河川の氾濫に巻き込まれる恐れがある地域では、この避難指示がでた後に消防署や地元の消防団、自治会の防災担当などの方達が、戸別に声かけを行って早急な避難を呼びかけていたのです。
避難勧告が足かせになって逃げ遅れが続出
結局のところ、避難勧告と避難指示の持つ意味合いが異なっても、同じ警戒レベル4に属しているので、住民側ではどちらが重要なのか良くわかっていなかったのです。さらに、発令が避難勧告だけで終わるケースもあったのですが、現場では床上浸水していて救助しないとならない状況だったりしていたのです。避難勧告があるが故に、指示が曖昧となり住民の自主的避難が遅れるケースが続出していました。
・避難勧告だから強いメッセージとなっていない
・住民は避難行動に移らない
・現場では既に危機的状況になっている
・避難指示を発令した時点で逃げるのは不可能な状況
・結果的に逃げ遅れる住民が続出していた
わかり難いので避難勧告は廃止!警戒レベル4は避難指示のみ
これまでお伝えしてきた通り、また、みなさんが実感していたとおり、「避難勧告はわかり難い!」という結果でした。そんな現場の状況をくみ取ってか、2021年5月20日本格的な雨シーズンに入る前に、災害対策基本法が改正されて「避難勧告は廃止」となったのです。これによって警戒レベル4は避難指示に一本化されることとなりました。
警戒レベル4の避難指示は直ぐに逃げないとダメ
では警戒レベル4の避難指示が発令されたら何をするのかというと、「直ぐに逃げる
!」です。警戒レベル4では次の気象情報が発令されています。
・土砂災害警戒情報
・高潮特別警報
・高潮警報
・危険度分布「非常に危険」(うす紫)
・氾濫危険情報
これらはどれも緊急性のある警報などです。避難指示が発令されたら、必ず避難しなければならないのです。
警報レベル3で避難の準備をしておこう
警戒レベル4の避難指示が発令されてから避難する準備をしていたのでは、もしかすると間に合わない可能性もあります。避難の準備に時間がかかってしまうと、いざ逃げようと外へ出たら道路が川状態になっていて逃げることができなくなることもあり得ます。警戒レベル3の「高齢者等避難」が発令された時点で、避難の準備をしておくことをおススメします。
・大雨警報
・洪水警報
・高潮注意報
これらの警報・注意報が発表された時点で、避難の準備を始めておきましょう。
まとめ
・避難勧告は住民に浸透していなかったので廃止となった
・これからは避難指示に統一される
・大雨、洪水警報が発表された時点で避難の準備をしよう
・避難指示が発令された時点で避難が完了していることがベスト