先日、2016年8月31日に観測史上初めて東北地方の太平洋側から上陸した台風10号は各地で大きな被害をもたらしました。
特に岩手県岩泉町の高齢者施設「楽ん楽ん(らんらん)」では、入居されていた9人もの方が小本川(おもとかわ)の氾濫に巻き込まれて亡くなられました。
多くの犠牲者が出てしまった原因として、高齢者などの災害時要支援者が早めの避難をはじめるべき「避難準備情報」が行政から出ていたにも関わらず、その場にとどまってしまっていた事が挙げられています。
さらに間接的な原因として、要支援者が多く生活する施設であるにもかかわらず、災害時の「避難マニュアル」が準備されていなかった事が指摘されています。
今回は「避難マニュアル」が存在しない事でどんなデメリットが生じるのかをシミュレーションしてみました。
「避難」に関する情報が発表されたら
初動で避難が成功するかが決まる
台風の接近や火山の噴火しそうな予兆が観測されると、避難に関する情報が自治体より発表されます。
通常であれば「避難勧告」が発表されてから住民の避難が始まるのですが、高齢者の入居されている施設などは1段階前の「避難準備情報」というのが発表された段階で避難を開始しなければいけません。
しかし、もしも避難マニュアルがないとどのタイミングで避難を開始すべきか判断が難しくなってしまい、最悪の場合は避難の必要性を忘れてしまうという事態が起こってしまいます。
避難に関する情報が自治体から出た段階で、いつどんな行動を行うかを素早く決める為にも「避難マニュアル」を作成しておくことは重要です。
避難に関する情報発表が行われる前にも、台風などの災害であれば天気予報やニュースなどから避難準備を行う必要があるかの判断が出来ます。
また情報収集の担当者や避難判断を下す責任者が施設に残るかどうかという判断をする事も出来ます。
その為の基準を「避難マニュアル」で定めておけば、災害時にどのタイミングで、どんな交通手段で、どこに避難するかをすぐに判断することができます。
憶測で重要な判断を誤るという事態を防ぎましょう。
避難指示が出た! どの様に避難するか?
避難する時の役割分担と経路を決めておく
いざ避難が必要となった時に「誰が何をするのか」「どの様な経路で避難するか」「どの様な手段で移動するのか」を決めていなかった場合、担当者を決めたり道を調べたりしている間に災害被害が深刻化してしまう場合があります。
さらに地震の様に発生日時を予期できない災害の場合は、発生直後に一刻も早く避難する必要が出てくる場合もありえます。
いずれの場合も想定した「避難マニュアル」を決めておかないと、バラバラに避難して取り残される人が出る場合もあるのです。
そこで普段から「避難マニュアル」には災害時の避難責任者を定めておきましょう。
さらに誰がどの様な役割を担って避難するかを定めておく事が重要になります。
避難マニュアルがあれば、マニュアルを基準にして防災訓練をして、いざという時に備える事も出来るのです。
避難先までたどり着いた! そこからのやり取りは?
安全確認手段や避難所での生活手順を決めておく
無事に避難する事が出来ても、災害が落ち着いて自宅に戻るまで避難所で生活する必要があります。
避難所についた後の行動も想定し、マニュアルで定めておいたほうが良いでしょう。
まずは避難所にたどり着いた時に全員いるかどうか、それぞれの家族が無事なのかを確認する必要があります。
事前に緊急連絡先や伝言ダイヤルサービスの利用といった取り決めをしておけば、責任者や担当者が不在でも円滑に連絡を取り合う事が出来ます。
さらに、避難所生活では互いの助け合いが大切になってきます。
力仕事は誰がやるのか、自治体との連絡担当者は誰にするか……といった役割分担を決めてマニュアルに記載しておけば、その場で役割の押し付け合いになる事を防ぐ事が出来ます。
可能であれば、メインの担当者とサブとなる人を複数人決めておけば、もしもバラバラに避難してもマニュアルの機能を活かす事が出来ます。
岩手県岩泉町の高齢者施設では「避難マニュアル」の作成や水害に対する「避難訓練」が行われていなかった為、多くの犠牲者を出すことになってしまったと言われています。
施設の運営責任者が台風接近時に一度様子を見に行った時は「大丈夫そうに見えた」との事ですが、二度目に現地を見た時にはすでに胸の高さまで浸水しており手遅れの状態だったとの事です。
町役場も警察や県へ連絡しようにも停電の影響ですぐに助けが求められなかった状態だった事も不運だったと言えます。
「避難マニュアル」を定めていれば、指示がなくとも現場の職員が率先して避難を開始できたかもしれません。
災害に対する「避難マニュアル」の備えは非常に大切です。
まだご家庭や職場で「避難マニュアル」を準備していないのであれば、家族や社内で話し合ってすぐにでも作成してくださいね。
まとめ
- 避難マニュアルがあると災害時に慌てずに何をすればいいか分かりやすくなる。
- 避難マニュアルがあると避難のタイミング決定や役割分担・経路の決定などの重要な判断が素早く出来る。
- 避難所での役割分担も決めておくと、トラブルを防げる。
- 緊急連絡先や連絡方法を決めておく事で安否確認を的確に出来る。