災害を経験した子どもは大人と同様に強い不安やストレスを感じています。こうした不安やストレスを和らげるためにも、遊びを通じて体を動かしたり達成感を得ることは、とても大切なことと考えられています。
また、慣れない環境下で退屈を感じた子どもは、ぐずる・駄々をこねる・ケンカをするといった行動にでることがあります。避難所で子どもがぐずり始めると周囲の目が気になり、親がストレスを抱えてしまうこともあるようです。遊びを取り入れることは、子どものストレス解消と親のストレス解消という二つの効果が期待できるでしょう。
今回は避難所でできる遊びについてご紹介します。
道具を使わない遊び方
被災直後は子どもの遊び道具がそろわないことがあります。このような場合は「遊ばせない」という選択をするのではなく、道具を使わない遊びを提案し、子どものストレスを和らげていきましょう。広いスペースが確保できない場合は、伝言ゲーム・じゃんけん列車・ハンカチ落とし・フルールバスケットなどがおすすめです。校庭や広場など広いスペースが確保できる場合は、鬼ごっこ・ドロケー・氷鬼などがおすすめです。
鬼を決める遊びは、1人の人が連続して鬼役になってしまうことがありますよね。このような場合、鬼役は疎外感や不満感などを感じやすく、ストレスを強めてしまう可能性があります。遊びには適宜大人も加わって、参加している子ども全員が楽しめるように配慮することも忘れないようにしましょう。
道具を使う遊び方
道具を使った遊びを行う場合は、比較的用意しやすい新聞紙などを使った工作・折り紙などがおすすめです。紙飛行機大会などイベントを提案してみるのもいいですね。避難所全体のレクリエーションにつながります。画用紙・裏紙・ペンなどが入手できた場合は双六や紙芝居を作ったり、お絵かきなどもおすすめです。高齢者でも体力の負担なくできるため、世代を超えて取り組むことができるでしょう。
縄跳びやボールなどが入手できた場合は、大縄跳び・ドッチボールなど体を動かす遊びも取り入れていきましょう。運動をすることでストレスを解消できるからです。その際はケガに注意することと、周囲への配慮(ボールが居住スペースに飛ばないようにする・大声などによるトラブルが発生しないようにする)を、あわせて心がけましょう。
遊び道具を用意しておく
子どものストレスケアのために、防災グッズの中に予め遊び道具を用意しておくことも大切な取り組みなのではないでしょうか。
個人で準備する場合は、避難時の妨げとならないものを用意しましょう。トランプやUNOはかさばらないため、おすすめです。
地域の避難所に指定されている場所には、トランプなどのカードゲームの他、将棋・オセロなどのボードゲーム、ボール、縄跳び、紙芝居など子どもが遊べる道具を準備しておくことをおすすめします。
遊ぶ時間・場所を決める
遊ぶことはよいことですが、遊ぶ時間を区切らないと周囲への迷惑になったり、避難所の運営を妨げることもあるかもしれません。遊ぶ時間を指定し、その範囲内で遊ぶようにルールを決めることも大切です。
また、ケガ防止やトラブル防止のためにも、子どもが遊んでもよい場所を決めましょう。部屋が複数ある場合は、遊び専用の部屋を決めるのもいいですね。部屋がない場合は、スペースを区切って指定します。ビニールテープやひもなどを使って遊び可能エリアを周知させましょう。
避難所でできる遊びの一例と注意点
伝言ゲーム
・参加者を複数のグループに分け、一列に並ばせます。
・まずは先頭の人にお題を伝え、次の人に伝えます。これを繰り返し、最後の人に答えを発表してもらいます。
・言い間違えやすい言葉をお題に指定すると伝言途中で言葉が変わり、答え合わせのときに面白くなります。ただし、小さい子どもが参加している場合は、覚えやすい言葉も適宜お題に取り入れるようにしてあげてください。
・伝言ゲームは参加者が多いと途中で言葉が変わり、面白くなります。子どもに限らず、幅広い人に参加してもらうようにしましょう。
じゃんけん列車
・出会った人とじゃんけんをし、負けた人は勝った人の後ろに回り、肩に手を置きます。
・これを繰り返し、大人数の列(長い列車)を作ることを目指します。
ハンカチ落とし
・まずは鬼を決めます。
・鬼以外の人は円になり、目を閉じます。
・鬼は円の外側を回り、誰かの後ろにハンカチを落とします。
・ハンカチを落とした鬼がハンカチを落としたことに気づかれずに一周し、落とされた人の背中を叩いたら、その人が鬼になります。
・鬼がハンカチを落としたことに気づいた場合はハンカチを持って立ち上がり、鬼を追いかけます。鬼がその人が座っていた場所に座ったら、その人が鬼になります。鬼にタッチした場合は、鬼だった人が継続して鬼となります。
フルーツバスケット
・参加人数よりも1つ少ない数の椅子を用意し、円形に配置します。
・参加者に「りんご」「もも」「バナナ」「メロン」など順番にフルーツの名前を決めていきます。
・鬼を一人決めます。
・鬼は円の中心に立ち、それ以外の参加者は椅子に座ります。
・鬼は先ほど決めたフルーツの中から、一つ名称を言います(例「りんご!」)。
・名称を言われた人は立ち上がり、他の席に座ります。この時に鬼役の人も空いている席に座ります。
・椅子に座れなかった人は真ん中に立ち、鬼役となります。この動きを繰り返します。
・フルーツの名前は複数言っても構いません(「りんごともも!」など)。また、鬼役が「フルーツバスケット」と言った場合はすべての人が立ち上がり、先ほど座っていた席とは別の席に座ります。避難所の事情で椅子が用意できない場合は、均一の大きさに切った段ボールを床に敷き、椅子に見立てて行うこともできます。
・筆者の経験ですが、フルーツバスケットをしている間にヒートアップし、ケガが発生したことがあります。ケガへの配慮も忘れないようにしてください。
氷鬼
・鬼役を1人決めます。
・鬼にタッチされた人はその場から動けなくなります(氷状態になります)。
・氷状態になった人は、氷状態になっていない人にタッチされると、再び動けるようになります。
・鬼が全員を氷状態にしたら、鬼役を交代します。
・氷状態になったことを示すために、鬼にタッチされた人は胸の前で腕をクロスさせて固まりましょう。
・参加者が多くなると全員を氷状態にすることが難しくなり、結果として1人の人が長時間鬼役をするという事態が生じかねません。疎外感やストレスにつながりかねないので、鬼役は適宜交代するようにしましょう。
まとめ
・子どもは遊ぶことを通じて不安やストレスを解消する
・道具がなくてもできる遊びを知っておく
・避難所全体でも取り組める遊びを提案し、幅広い世代のストレス緩和につなげる
・非常用持ち出し袋や避難所に遊び道具を準備しておく
・遊びを行うときは時間と場所を決める