避難所生活を送る被災者の中には慢性疾患を抱える人がいます。
限られた救援物資の中でできる限りの対応をし、治療が中断されないようにしていく必要があります。
治療中断によって命の危険がある慢性疾患もあるため、優先度の高い人を見極めていかなくてはいけません。
慢性疾患その1:高血圧
避難所生活を送る人の中には血圧が高い方がいます。
避難所生活は寒さや睡眠不足、ストレスなどで高血圧になりやすい悪条件がいくつも揃っています。
突然の災害により降圧薬を持参していない人や紛失してしまった方など、たくさんの不安を抱えながら生活しています。
不安を取り除くためにも、できるだけ早く医療機関への受診を進めていかなければなりません。
避難所生活でできる高血圧の対応
・寒さで血圧が上昇しているときは、下半身を中心に身体の保温につとめる。
・ホッカイロがあるときには腰部にカイロを貼付することで、体感温度が上がるのでホッカイロを上手に活用する
・睡眠時は頭部をやや高くすることで血圧が下がりやすくなる。
・避難所生活で配給される食事は塩分過多になりやすいため、水分補給を忘れずにナトリウム排泄を促進させる。
避難所生活でできる低血圧の対応
・逆に血圧が低い場合は安静にしてできるだけ横になる。
・その際は両下肢を頭より高く上げることで血圧が上がりやすくなります。
余談ですが「災害高血圧」とよばれるものがあります。
災害時は平時では考えられないほど、食塩の感受性が一気に上昇してきます。
環境の変化で体内に食塩が蓄積しやすい傾向になってしまうのです。
血圧は健康のバロメーターです。
環境の変化やストレスなどで血圧はすぐに上昇します。
災害時だからこそ血圧のコントロールが大切です。
災害高血圧の目標値は最高血圧140mmHg/最低血圧90mmHg未満です。
慢性疾患その2:糖尿病
糖尿病は大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。
1型糖尿病
・生きていくためにインスリン注射が必須
・インスリンが中断するとケトアシドーシス状態となり、生命の危険に陥ってしまうため早急にインスリンを入手する。
ケトアシドーシスとは糖尿病の急性合併症です。
ケトアシドーシスの症状は口渇感や頻尿、全身倦怠感、腹痛や吐き気です。
インスリン不足で血糖が上昇し意識が低下して昏睡状態に陥ります。
1型糖尿病は優先度の高い慢性疾患の一つです。
2型糖尿病
・1型ほど生命の危険はないものの可能な限り血糖コントロールができる環境を作る。
・甘味料の制限
・避難所で配給される食事に対して血糖降下剤を服用すると、低血糖発作を誘発してしまう場合もあるため注意する。
糖尿病の人は感染症にかかりやすい傾向があるため、予防に力を入れていくことも大切です。
小さな傷口一つが、糖尿病の人にとって命取りになることもありますので注意していきましょう。
慢性疾患その3:認知症
高齢者が多い避難所生活は認知症にも注意していかなければいけません。
認知症をはじめ精神疾患にかかっている人は、事の状況を正確に判断することができません。
集団行動になじめずに孤立している人がいたら、周囲の人に理解を求めていくことも必要になります。
認知症をはじめ高齢者の孤独死やサバイバーズギルト(家族を救ってあげられなかった無力感)も同様に注意します。
先の見えない避難所生活は高齢者にとって過酷な環境下となっています。
お互いに声を掛け合うことで、慢性疾患からくる災害関連死を防ぐことができるのです。
まとめ
・血圧が高いときは身体の保温につとめる
・血圧が低いときは下肢を挙上する
・災害高血圧に注意
・1型糖尿病はインスリン入手が先手
・2型糖尿病は血糖コントロールできる環境を作る
・糖尿病の人は感染症に注意
・高齢者が多い避難所生活は認知症や孤独死、サバイバーズギルトも注意