東日本大震災より避難所生活を送る被災者ケアとして、下肢深部静脈血栓症が注目されるようになってきました。
新潟中越地震の際、車中泊の被災者がエコノミークラス症候群による肺塞栓で命を落としました。
密集した避難所生活で体を動かさないでいると、血液循環が悪くなり下肢に血栓(血液の塊)ができてしまいます。
その結果、血栓が下肢から肺や心臓、頭に飛び散り合併症を引き起こしてしまうのです。
別名「旅行者血栓症」や「ロングフライト症候群」などと呼ばれるエコノミークラス症候群ですが、正式名称は「深部静脈血栓症」です。
下肢深部静脈血栓症の危険因子
避難所生活を送る人たちの中には、既往歴を含めて下肢深部静脈血栓症になりやすい人がいます。
下肢深部静脈血栓症のハイリスク被災者は
・寝てばかりいる人
・座ってばかりいる人
・長時間同一体位の人
・下肢にむくみがある人
・下肢の太さに左右差がある人
・下肢にけがをしている人
・車中泊をしている人
・ワーファリンを飲んでいる人
・肥満者
・高齢者です。
上記はあくまでもほんの一部です。
ハイリスク被災者になりやすい人たちには、早めに災害医療班や下肢深部静脈血栓症の検診班につなげていくことが大切です。
下肢深部静脈血栓症の予防は下肢のこまめな運動
長時間同じ姿勢でいることはなるべく避けて、体全体をこまめに動かしていきましょう。
避難所生活では可能な限りラジオ体操を導入しています。
ラジオ体操は子供から大人まで幅広く使え、体全体を動かすベストな運動でもあります。
また、足指体操とよばれる足先の運動は、下肢深部静脈血栓症を予防する上ではもっとも効果があります。
オススメ足指体操
・足の指でげんこつやグーを作ってみましょう
・げんこつやグーを作ったら、そこからおもいっきりパーを作ってみましょう
足指体操が終わったら膝を両手で抱えて、足の力を抜き足首をゆっくり回していきます。
これなら普段の生活でも簡単に取り入れていくことができますね。
また下肢のマッサージも効果的です。
マッサージをする際は必ず両手を温めてから開始します。
足先から心臓に向かって下から上へマッサージして上げると、血液の循環が良くなります。
水分摂取と電解質補給も忘れずに
下肢深部静脈血栓症は脱水に注意します。
脱水になると血液の濃度が高くなり、血栓症を誘発してしまう危険性があります。
その際、可能な限り電解質を含んだスポーツドリンクをオススメしますが、なければミネラルウォーターでも大丈夫です。
ただし、利尿作用のあるコーヒーや紅茶などは、同じ水分でも全くの逆効果となりますので注意していきましょう。
また、寝込んでいる高齢者の場合、自ら水分を取りに行けず、脱水に陥る危険性が多くなっています。
避難所に十分な水分は届いているのに、高齢者の口まで運ぶことができない状況は、災害関連死につながってしまいます。
確実に高齢者の口まで水分を届けること、そんな細やかな支援が一人の大切な命を救うことができるのです。
まとめ
・下肢深部静脈血栓症とは一般的にエコノミークラス症候群のことである
・車中泊をしている人ほど危険性が高い
・下肢深部静脈血栓症は下肢のこまめな運動が大切
・下肢深部静脈血栓症は脱水と深く関連する
・ハイリスク者を素早く見つけ災害関連死を防ぐ