災害直後の被災者は何かしらのストレス反応が出てきます。
今まで何気なく生活していた環境が突然奪われてしまうことは、想像を絶するものです。
こころの回復が遅れてしまう原因の一つに「環境」があります。
環境を調整していくことは、心理的ストレスを緩和させることにもつながっています。
災害によって長期的にわたる心理的ストレスの実態をみていきます。
避難所生活におけるストレス反応

こころと体は密接につながっていますが、出現する症状はまったく異なってきます。
人間の体に出現する主なストレス反応は
・不眠や昼夜逆転
・頭痛や腹痛
・腰痛や肩こり
・血圧の上昇
・便秘や下痢
・持病の悪化
人間のこころに出現する主なストレス反応は
・イライラや焦り
・無気力や無力感
・抑うつ症状
・気分不快
・悪心や嘔吐
・孤立や過活動
そのほか、体とこころが破壊され行動に表出してしまうストレス反応は
・八つ当たり
・暴飲暴食
・過度の飲酒
・自傷他害
・性暴行(避難所では年齢問わず女性が被害に遭いやすい)
被災者の回復力を促す

災害は被災者のこころに計り知れない深い傷跡を残してしまいます。
環境が奪われてしまうことも、こころの回復と密接につながっています。
被災者のほとんどが心身の不調に苦んでしまいます。
このストレス反応を速やかに回復するように支援していく必要があります。
そう、早い時期から「こころのケア」を提供していくことが何より大切なのです。
平時に戻れるような環境調整を配慮
・避難所の照明や防音、空調は適切か?
・届いている支援物資は足りているか?
・衣類や寝具は足りているか?
・避難所生活における空間スペースは確保できているか?
・プライバシーが確保されているか?
・マスコミやメディアがストレスになっていないか?
・排泄のための設備は整備されているか?(これはとても大切です)
災害時の心理的援助における5つの原則

災害時は心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)が推奨されています。
国際的にも広く活用されています。
①安全感・安心感を促す
②落ち着かせる
③個人や集合体の自信を促す
④つながりを促す
⑤希望を促す働きかけ
サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)とは被災した人々に対して、おしつけがましくない、実際に役立つケアや支援を提供していくものです。
無理に話を聞きだすものでもありません。
被災者を安心させ落ち着けるように手助けをすることです。
簡単なようですが、実のところ関わりがとても難しい支援の一つになります。
被災者の話に耳を傾けましょう
災害は実に大きなストレスそのものです。
災害によって被災者のこころは傷つけられ、心身ともに様々なストレス反応が出現してきます。
話を聴くテクニック~アクティブ・リスニング~
・「聞き役」に徹しましょう
・被災者のペースに合わせた会話をしましょう
・話を途中で遮ることはご法度です
・話を引き出すように相槌を入れながら質問を向けていきましょう
・「事実→考え→感情」の順番を意識していきましょう
・善悪の判断はけして批判しないこと
・被災者の感情を理解して共感しましょう
・必要としているニーズを読み取りましょう
・被災者を安心させて必要なサポートをしていきましょう
アクティブ・リスニングは普段の会話でも意識したいことばかりですね。
平時から心がけていきましょう。
被災者が安心して語れる環境の場を提供していくことはとても大切です。
こころの回復を促進させることは、環境の調整も忘れずに行っていく必要があるのです。
まとめ
・こころと体に出現するストレス反応はまったく違う
・行動に出るストレス反応はこころと体が破壊された状態
・平時に戻れるような環境調整が必要
・PFAを上手に活用する
・アクティブ・リスニングを意識する