2014年8月20日に発生した「広島県土砂災害」において、警察・消防・自衛隊はそれぞれの持っている能力を活かして救難活動に当たりました。
その時に彼らは何を目にしてどの様な事を行ったのでしょうか?
前回の『発生から2年「広島県土砂災害」で何が起きたか?(1)』に引き続き、国土交通省が派遣した緊急災害対策派遣隊の活動状況と合わせて、警察・消防・自衛隊の救難活動・捜索活動の実情について調べてみました。
救難活動と土砂災害における問題点
生き埋めとなった人を助ける為の制限時間は短い
災害時に被災した人が救助を待つことができる時間は「72時間」と言われています。
これには二つの根拠があり、一つは被災者が食事のない中で生き延びられる時間が72時間という事と、もう一つは大規模災害の時に救助が駆け付けるまでの時間が72時間という事です。
しかし、土砂災害等で生き埋めになった場合はこの「72時間」よりもずっと早く助け出す必要があります。
それは「クラッシュ症候群」という症状により、突然死を引き起こす可能性があるからです。
「クラッシュ症候群」とは、がれきに埋もれた事で壊死してしまった筋肉から毒性のあるカリウムなどの物質が放出されることで引き起こされます。
がれきなどにより足や腕の血管が圧迫され血液の流れが止まり、毒性物質がそこで体積されてしまいます。
そしてがれきをどかして救出された時、一度に血液が流れだす事で蓄積され濃度が増えた毒性物質が内蔵を傷つけ、最悪死に至らしめるという恐ろしい症状です。
クラッシュ症候群は2時間以上血管が圧迫されると発症しやすくなります。
一見元気そうな人でも自覚症状がないため、救出後に突然症状が悪化してしまう事があります。
がれきの下になって2時間以上経過した方を助ける方法は、「止血帯」で血流を止める処置を行ったうえで助け出さなくてはなりません。
しかも、すぐに血液透析が出来る病院へ運ぶことが必要不可欠です。
いったん血液中にカリウムなどの毒性物質が放出された場合、透析などで血液を浄化するしか対処方法がありません。
その為、広島県土砂災害では災害発生直後の迅速な救難活動が重要でした。
真っ先に救助を始めたのは地元県警警察官と消防職員たちで、土砂災害の通報があった20日午前3時20分より住民の安否確認や被害情報の収集に励んでいました。
消防職員で安佐北区の住宅崩壊現場で避難誘導をしていた男性が土砂の崩落に巻き込まれ亡くなられており、切迫した状態だった事が伺えます。
自衛隊も最初の通報から約3時間後の午前6時30分の災害派遣要請を受けて、午前7時40分には第一波となる第46不通科連隊の30名が出発し、行方不明者捜索に当たります。
災害発生初日の8月20日に一番多くの人員を投入したのは消防でした。
消防職員823名と消防団員347名の合計1,170名が救助作業に従事しています。
彼らは初動で被災者130名の救助を行いました。
難航する行方不明者の捜索
土砂に埋もれ行方不明者が多い中、探し続けた
災害発生から夜が明け自衛隊や国土交通省の緊急災害対策派遣隊、消防警察が飛ばしたヘリコプターからの情報などで被害の大きさが分かると、救難及び捜索の人数が大々的に増やされる事になりました。
特に警察は8月中を通して、広島県警1,000名と他県警増員700名を動員して大規模な捜索と住民の安否確認を行っています。
自衛隊も8月中は830人体制まで増員を行い、行方不明者の捜索を行っています。
この時、捜索の支援で大きな役割を果たしたのが国土交通省の緊急対策派遣隊です。
彼らは重機やダンプカーを被災地に持ち込み、真っ先にがれきの除去や土嚢を作って二次災害を防止する為に設置するといった活動を行いました。
また、この緊急対策派遣隊には土砂災害の専門家も含まれていました。
警察・消防・自衛隊に対して捜索活動の助言や、雨が降ったあとの捜索作業再開に関する助言といった専門家だからこそ出来た任務を行っています。
警察・消防・自衛隊は、土砂の中に埋もれる行方不明者の捜索を続けました。
しかし、降り続ける雨が幾度となく捜索活動を妨害しました。
場合によっては助けを待つ人を傷つけないように手作業で慎重に捜索をする必要があり、行方不明者の捜索はなかなか思うように進まなかったといいます。
最終的に自衛隊は9月11日まで災害派遣を続行しました。
9月18日には最後の行方不明者を警察が発見して、19日に身元が確認されるとようやく捜索活動は終了しました。
この間、海上保安庁も太田川河口付近で行方不明者が流されていないか捜索を行っています。
約1カ月に及ぶ、非常に難航した捜索活動でした。
救難活動や行方不明者の捜索と平行してがれきや土砂の除去が行われますが、その間も避難を続けている人たちはいつ家に戻れるか分からない状況が続きました。
避難所では被災者の方々はどの様に過ごしていたのでしょうか?
次回は「避難生活」についてスポットを当ててレポートします。
まとめ
- 生き埋めになった人を助ける為の時間は限られる。
- 消防を筆頭に多くの機関が助けに駆け付けた。
- 土砂と雨に阻まれ、行方不明者の捜索は難航した。