「非常食」は、緊急事態に私たちを助けてくれる非常に心強い存在です。
昔から多くの人を支えてきたこの非常食は、実は日々少しずつ変化していっています。
今回はそれを「味」の面から見ていきましょう。
非常食、今昔物語
「非常食」の考え方は非常に古く、昔から研究され続けています。
その原点は「干飯(ほしい、かれい。乾飯とも)」にあるといわれていますが、これは、乾燥させたお米のことです。ちなみにこの「干飯」は古典にも出てきます。旅をしていた人間が、「『かきつばた』を頭文字にすえて歌を詠め」といわれたときに妻を思う歌を詠み、それに感動した周りの人間が干飯に涙を落したので干飯がすっかりふやけてしまった…という話です。ちなみにこれは「伊勢物語」に収録されています。
もう少し現代に近いところに視線を向けてみましょう。
昔から非常食として使われている「乾パン」の歴史は実に180年も前にまでさかのぼることができます。この乾パンは長くさまざまな場面で使われてきていましたが、研究当初の乾パンには糖分や脂肪分が含まれていませんでした。これは、糖分や脂肪分が保存の邪魔になると考えられていたからです。
このように、昔の非常食は「味」についてはそれほど考えられていませんでした。
そのままにしておけば腐ってしまう食べ物を、いかに長持ちさせるかに焦点を当てていたといえるでしょう。
現在の非常食は味が違う!
しかし現在は、非常食も大きく進化しています。
単純に長持ちするだけではなく、「非常時以外に食べてもおいしいもの」が多数販売されるようになったのです。
その種類も膨大で、おなじみの乾パンだけでなく、リゾットやカレー、煮物、魚、ハンバーグや肉じゃが、果てはおやつにいたるまで、さまざまなものが出ています。
これらはいずれも食味に優れており、しっかりと「おいしい」味に仕上がっているのが特徴です。
非常時は、食欲も落ちるものです。そのような状況下でおいしくないものを口にすれば、人の心はなおさら落ち込みます。しかし味に特化した非常食は、人の心を慰め、活力を与えてくれるものです。
もっとも、人は「食べ慣れていないもの」になんとなく拒否感を覚えてしまうことも多いといえます。
そのため、「非常時ではないときに一度食べてみて、おいしいと感じたもの」を入れておくようにするとよいでしょう。
まとめ
・非常食の歴史は非常に古い
・昔の非常食は、「味」のことはあまり考えられていなかった
・現在は味に特化したものが出てきていて、種類も多い
・ただ、人間は食べ慣れていないものに拒否感を抱きやすいので、非常時ではないときに一度試しておいた方がよい