「火災保険と火災共済ってどう違うの?」と思っている人は多いのではないでしょうか?
どちらも火災や落雷などの災害に遭ったとき、保険金がでるという仕組みです。
利用する側から見れば、火災保険も火災共済も、正直なところ、ほとんど変わりはありません。でも名称が違うということは、どこかに違いがあるはずですよね。
そうなのです。火災保険と火災共済は似ていますが、同じものではありません。
今回は火災保険と火災共済の違いと、どちらを選ぶかを悩んだ時のポイントについてご紹介します。
相互扶助(そうごふじょ)のシステム
保険や共済とは、みんなでお金を出し合い万一に備える助け合いのシステムです。これを「相互扶助」といいます。
複数の人間がお金を出し合い、火事や事故、病気といった万一の事態に見舞われた人を支えるしくみは、保険も共済も同じです。
火災をカバーするものとして火災保険と火災共済があるのと同様に、自動車事故をカバーするものとして自動車保険と自動車共済があります。
では、両者の違いを具体的に見ていきましょう。
対象が違う
保険は不特定多数の誰もが加入できるシステムであるのに対して、共済は組合員など特定の団体に所属する人のための福利厚生として加入できるシステムです。
「都民共済」「県民共済」などを考えるとわかりやすいかと思います。
しかし「全労済」「コープ共済」「JA共済」といった大手共済は、「テレビなどで不特定多数を相手にCMを流しているのはどうして?」と思われるかもしれません。
ほとんどの共済は、組合員になれば誰でも加入することができるのです。例えばJA共済では、農家組合員以外の人でも利用できます(JAごとに組合員の利用高の2割までの条件あり)。
経営目的が違う
保険は民間企業の行う営利を目的とした事業であるのに対して、共済は団体が組合員に対しての福利厚生を目的とした非営利事業です。
共済は福利厚生が目的であるため、保険金(共済金)の支払いが迅速と言われています。
監督官庁と元になる法律(根拠法令)が違う
保険会社の監督官庁は金融庁で、保険業法に基づいた制度なのに対して、共済はそれぞれの共済によって監督官庁と元になる法律が異なります。
全労済や県民共済、コープ共済などの監督官庁は厚生労働省で、消費生活協同組合法に基づいて運営されており、JA共済の場合の監督官庁は農林水産省で、農業協同組合法に基づいて運営されています。
用語が違う
保険では「保険金」「保険料」「配当金」と呼ぶものを、共済では「共済金」「共済掛金」「割戻金」と呼びます。
保険料が違う
共済は組合員を対象とした福利厚生を目的とする非営利事業であるため、儲けを出す必要がありません。ですから、掛け金の余剰金が還元される割戻金の仕組みがあります。このため、共済は保険と比べると、大体において保険料(掛け金)が安くなっています。
選択の自由度が違う
保険は不特定多数を対象とした営利事業なので、補償対象が細かく分かれており、それを組み合わせて、利用者に合ったパッケージ商品を作ることができます。それに対して、共済は福利厚生を目的とした非営利事業のため、パッケージ商品は基本的なものに限定されます。また、共済金額(保険金額)も保険に比べると少なくなります。
地震保険とは違う
地震保険は政府と保険会社が共同で運営している公共性の高い特別な保険で、単独で加入することはできません。必ず火災保険とセットで加入します。
火災共済は火災保険ではないので、地震保険を付けることはできません。
そのかわり、各共済では、単独の地震共済や見舞共済金で対応していますが、補償は火災保険の方が上と考えてもいいでしょう。おもしろいところでは、JA共済が販売している、「建物更生共済むてき」があります。ひとつの共済で、火災や盗難に加えて、台風、大雪、竜巻や地震などの自然災害による損害も保障します。
以上、火災保険と火災共済の違いについてご紹介してきました。
あなたの住む場所が抱える災害リスクを知るには、自治体が作成している「ハザードマップ」が役立ちます。自宅のリスクをしっかり把握した上で、共済と保険の違いにとらわれることなく、生活環境、家計、価値観そして性格に合った商品を選ぶことが大切ですね。
まとめ
・火災保険は営利事業、火災共済は非営利事業
・火災保険は選択の自由度が高く、カスタマイズが容易
・火災共済は選択の自由度は低いが、コストパフォーマスが高い
・地震保険が付帯できるのは火災保険だけ
・ハザードマップで自宅のリスクを確認の上、それに合った補償の商品を選ぶ