かつて災害に備えるための備蓄食・保存食は「きちんと栄養をとるためのもの」「長期間備蓄をしておいて、いざというときに食べるもの」という役割に重点をおかれていました。
これらが保存食のもっとも重要な役割であることは疑いようがありません。
しかし、保存技術の発展などが災害用の備蓄食品にも大きな影響を与えました。
現在では「お腹を満たすこと」だけを役割にせず、「おいしさ」に重点をおいた非常食も多数開発されるようになったのです。
進化する保存食の世界
こんな催し物があるって知っていた?「日本災害食大賞」
2016年の7月13日から15日にかけて「東京ビッグサイト」で、今までにはなかった催しが行われました。
それが「日本災害食大賞」です。
これはリードエグジビションジャパンという見本市主催会社が主催したもので、さまざまな災害用備蓄食品のなかから「おいしさ」「機能性」「新製品」の3部門に分けて、ランキング形式で優秀保存食を紹介するというもの。
なかでも「おいしさ」に着目したのは画期的と言えるでしょう。
今回はこの「美味しさ部門」で選ばれた商品をご紹介しましょう。
「おいしさ」で1位に選ばれたのは、「IZAMESHI Deli 保存食 名古屋コーチン入りつくねと野菜の和風煮」です。
塩分は控えめながら大きめにカットされた野菜とつくねが楽しめ、賞味期限が3年ももつにも関わらず、その保存食らしからぬ上品なおいしさが人気を集めました。
2位にランクインしたのは、沖縄の郷土料理「レトルト 軟骨ソーキの煮付」です。
沖縄ホーメルという、その名の通り沖縄の食肉加工会社が作っていて、郷土料理としておみやげにするにもピッタリの商品です。
賞味期限が1年もちますが、お肉が家では再現が難しいほどの柔らかさを持っていると評価されており、「災害用の備蓄食品」のイメージを一掃しています。
保存食として定番のカレーは3位にお目見え。
ハウス食品の「温めずにおいしいカレー」シリーズが選ばれました。
カレーと言えば温めて食べるものというイメージがありますが、災害時にはお湯や火が使えない場合もあります。
そのため大手メーカーであるハウス食品が温められなくてもおいしく食べられるカレーを開発、「温めずにおいしいカレー」シリーズとして「キーマカレー」や「野菜カレー」などを販売しています。
これらは「おいしい」だけではなく、保存食に求められる「賞味期限」もクリアしています。
最低でも1年、長いものは3年も持ちます。
十分に普段使いができるおいしさですので、ぜひお試しあれ。
災害時、おいしい食事の役割
食事がもたらすのは満腹感だけではない
私たちは、「災害時の食事」というと、栄養価のことを中心に考えてしまいがちです。
また、非常時なのに「おいしさ」にこだわるなんておかしい、と思うかもしれません。
しかし、非常事態だからこそ「おいしい食事」は必要なのです。
人の食事に対する欲求は「ショックによって食欲がまったくわかない状態」から、「とりあえず生きるために食べなければならない、食べ物の味にはこだわっていられない」という状態にかわり、やがて「いつもの味を求めるようになる」と言われています。
災害という非日常の中だからこそ、自分の慣れ親しんだ味、いつもと変わらない味を求めるようになるのです。
とても疲れていたときに、温かいお味噌汁を飲んでほっとした経験のある方は多いのではないでしょうか?
海外旅行から帰ってきたとき、日本食が恋しくなったという人もいるのでは?
おいしい食事はいつも心を和ませ、温め、冷静にさせてくれます。
災害時におけるメンタルケアは非常に大切ですが、「おいしい保存食」はその手助けとなることでしょう。
まとめ
・現代の進化した保存食は、単純にお腹を満たすためだけにあるものではない
・非常時にはおいしい食事が人の心を和ませ、心のケアをする役割も
参考リンク
◆大災害後のメンタルヘルスと心のケア 黒木俊秀 教育と医学2011年5月号
◆第10回オフィス防災EXPO 第1回日本災害食大賞
◆災害時「いつものおいしい食事」が大切になる理由-Coocpadニュース