2017年1月17日で阪神淡路大震災より22年の時が経ちました。
今は街から瓦礫も無くなり落ち着いたように見えますが、昨年5月12日に復興住宅で暮らしていた男性が神戸市より住居を明け渡すように訴えられました。(「阪神大震災22年:復興住宅「期限」に苦悩 転居迫られ」毎日新聞)
阪神淡路大震災で今も残る傷跡のひとつ、復興住宅からの退去問題を掘り下げます。
復興住宅とは
自治体が借り上げて提供する仮の住まい
阪神淡路大震災では約64万戸の住宅が被害に遭い、全壊した建物は約10万戸以上で全焼した建物も7000戸以上あります。
その為、家を失った方々のために「仮設住宅」の発注が急速に進められて、発災から3日後には建築が始められました。
ピーク時で4万6617戸の「仮設住宅」に被災者が入居し、新しい住まいが見つかるまでの間、生活の場所として2000年1月14日まで利用されました。
「仮設住宅」は新しい住まいが見つかれば役割を終える為、2年間だけ用いる事が考えられていましたが結局5年の歳月が経ってしまいました。
加えて、その間に新居を見つけられなかった被災者も多くおり、「災害復興公営住宅」という制度が出来ました。これは「自治体が建設し供給する住宅」と「自治体が借り上げて供給する住居」の2種類が用意される事になりました。
しかし、借上げによる復興住宅は「20年間経ったら本来の持ち主に返さなければならない」という自治体と貸主の間の契約条件があり、この借上げによる復興住宅が問題となっております。
復興住宅の問題点
地元から離れた高齢者の苦悩
復興住宅には4万2137戸の住民が移住しましたが、彼らの殆どは地元を離れて生活する事になり、親しい家族がまとまって入居できるものではなく、「今までと異なるご近所付き合い」の中で一から人間関係を作り直していく努力を迫られました。
加えて、「復興住宅で暮らす方の多くは高齢者」で、神戸新聞が調べた2013年11月のデータでは49.2%の住民が高齢者で、独身で暮らす高齢世帯数も45.4%と非常に高い数字を示しています。
二人に一人が高齢者という環境によって、復興住宅での自治能力は落ちる一方になってしまっています。
特に問題となっているのは「身寄りのない高齢者の孤独死」で、2013年だけでも40人以上の方が看取られることもなく亡くなられています。更に入居期限が20年間という制限がある為、85歳以上の方や身体に支障があり転居が難しい方を除いて、現在も生活を続ける2,800世帯ほどの住民に対して転居が迫られています。
高齢者が新しい住まいを見つける事が困難な中で、この問題を解決するには政治的にも非常に大きな決断が必要になるのではないかと考えられます。
神戸や大阪だけでなく、東日本大震災では福島県などが同じ様な問題に直面しています。
各自治体は阪神淡路大震災と同じ轍を踏まないように、これから様々な努力を重ねていかれる事を期待したいですね。
明日は東日本大震災後の「ご近所付き合い」に焦点をあてて考えてみたいと思います。
まとめ
・復興住宅は仮設住宅から新しい住まいを見つける事が難しい人に供給された仮の住まい
・地元から離れた事や高齢化が進み、厳しい生活環境となっている
・20年という契約期間を迎える事で、現在の入居者は苦境に立たされている
参考サイト
◆【特集】阪神・淡路大震災 神戸新聞
◆阪神・淡路大震災教訓情報資料集【01】仮設住宅の生活と支援 内閣府
◆過去のケースから学ぶ 仮設住宅で覚えておきたいご近所付き合いとは「防仁学」