東京防災救急協会の普通救命講習(東京都では総じて応急手当講習という)を受けてまいりました。
以前から救命技術の取得に興味はあったのですが、なかなか受講の機会がありませんでした。
しかし地元自治体の子育て支援員養成講座の受講の際に必要な事がわかり、この際思い切って事前に講習を受ける事にしました。
この記事は「普通救命講習」を受けた時の体験記です。
東京消防庁が実施する普通救命講習を基礎にして執筆しておりますので、他の道府県の読者様は受講申し込みの際はあらためて各実施主体に問い合わせてみてください。
また体験記のため受講内容は主観を交えた抜粋であり、皆様が実施される時はきちんと指導員の指導に従ってください。
「普通救命講習」とは
「普通救命講習」は各地方自治体の消防本部が実施しているか、消防機関の外郭団体が受託運営している場合もあります。
私の場合は東京防災救急協会に申し込んで、防災救急協会の指導員から、通りすがりの人間(バイスタンダー)として「どのような市民救命を行うのか」について学びました。
この制度は高齢化社会を迎え救急搬送の依頼が急増したことにより、救急車の現場到着時間が遅延する傾向にある中、平成5年総務省消防庁の「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」を契機に始まりました。
少し古いデータですが、効果の程が書かれている「平成19年度実績評価書」を読むと、心肺停止傷病者の応急手当実施率の向上が認められているそうです。
つまり救命講習を受けるという事は、家族の救命にもとっても有効だという事です。
さて、この救命講習には普通救命講習(1)(2)(3)と上級救命講習の4種類があります。
それぞれ受講内容は大まかに
普通救命講習(1)…成人の傷病者の救命処置
普通救命講習(2)…AED設置事業者向け講習 普通救命講習(1)+修了試験
普通救命講習(3)…新生児・乳児・小児の救命処置
上級救命講習…普通救命講習(1)~(3)に加えて包帯法を用いた外傷の応急手当と傷病者管理・修了試験
となります。
どれも医療行為資格のない市民が、傷病者を発見してから救急隊員へ引き渡すまでに出来る救命技術を学びます。
また各講習を受講すると修了証をもらう事ができますが、期限付きの技能証明です。
延長する場合は3年に1度、再受講する必要があります。
これは救命技術の見直しは頻繁に行われており、常に最新の技術を習得している必要があるためです。
講習受講までの流れ
それでは「普通救命講習」の受講の流れです。
わたしは「普通救命講習(1)」と「普通救命講習(2)」を受講しました。
申し込み
まず地元消防署や防災協会などに、普通救命講習受講の申し込みを行います。
そこで実施日時と受講場所を選択します。
当日の持ち物(テキスト代)などを教えてもらえますので、忘れないようにしましょう。
遅刻・早退は講習を受けた事にならない場合がありますので、注意が必要です。
集合
当日、講習場所となる防災館や消防署に集合します。
いずれも受付の消防隊員さんが、訓練室の場所を教えてくれます。
訓練室の前には指導員の方が待機案内してくれるので、不安はありません。
テキスト代を支払い、テキストや訓練に必要な物品を受け取り、自由に席につきます。
私が普通救命講習を受講した時は、老若男女と実に多様な方々が20名ほどいらっしゃいました。
講習開始
普通救命講習(1)は3時間、普通救命講習(2)は4時間の講習でした。
普通救命講習(1)と(2)の違いは、AEDを繰り返し使えるか否かの違いです。
AEDの使用は一般市民に開放されましたが「反復継続」するためには資格が必要だとご存知でしたか?
医師行為資格を持たない一般市民がAED(自動体外式除細動器)を「反復継続」して使用すると医療行為にあたり、医師法違反で刑事罰が適用される可能性があります。
それはAEDを使うに当たって、下記3点の医療的に注意すべき点があり、専門知識が必要になるからです。
〔1〕 呼吸や意識の状態を確認する
〔2〕 対象者がペースメーカーなどの医療機器を使用している場合の使用方法
〔3〕 水や薬品などの伝導性物質の有無など
体育教師や保育士など「反復継続」して使用するケースが考えられる「AED設置事業従事者」は、普通救命講習(2)を受ける事でAED使用における医療的専門性の知識を持っていると判断されるので、医師法違反から除外されます。
「反復継続」せずに、たまたまその場に居合わせるかもしれない一般市民(バイスタンダー)は、AEDの使用が1回あるかないかなので医師法違反にはならないのです。
それでもAEDを使用するに場合は先にあげた3つの注意点は知っておく必要があるので、一般の方は普通救命講習(1)を受講することをオススメします。
普通救命講習の内容
講習内容はおおまかに以下のような流れでした。
1. 座学
まず座学で・応急手当の目的・応急手当の必要性・突然死とその兆候などを学びます。
『成人では、子供では、どんな突然死の兆候があるのか?』や『応急手当の目的は、救急隊員が到着するまでの間の「救命」「悪化防止」「苦痛の軽減」としていること』、
『応急措置をすることで傷病者が生き残る可能性が高くなること』、『誰もが傷病者の命を救える可能性を持っていること』などを具体的な数値や例を挙げながら説明してもらえます。
2. 実技
救命処置である「心肺蘇生」と「AEDによる除細動」を実技で教わります。
【実技の流れ】
▽対象者発見! 周囲の安全確認。周囲に応援を求めて119番通報とAEDを持ってくるようにリーダーシップを持って依頼。
▽呼吸を確認。心肺蘇生開始。胸骨圧迫(心臓マッサージ)を30回、人工呼吸を2回を1セットとして、AEDが来るまで継続する。
▽AEDが到着したら持ってきた人に指示を出して、胸骨圧迫を変わってもらう。
▽AED準備開始。AEDの音声に従って、スイッチを押す。
この流れとおさえるべきポイントを指導員の方から教えてもらいながら、他の受講生と協力して行います。
感想は、様々なテクニックを教えてもらえるので覚えるのが大変なほどでした。
胸骨圧迫は体力を使うので(自分は講習時間内に600回位は胸骨圧迫をしたらしいです。1分回に100回の早いテンポで30回を1セットとするのが望ましいとされています)、運動しやすい服装でいかないと思わぬ疲労を抱える羽目になります。
当然、救命のリーダーシップも学ぶので、声出しや組編成、実技を恥ずかしがっていたら出来ません。
とは言っても、指導員がきちんと体で覚えられるようにわかりやすく反復して教授してくれるので、受講修了時には心地いい疲労感と達成感があります。
普通救命講習(2)は普通救命講習(1)に比べて1時間多く、みっちりと教え込まれる印象でした。
3. 再び座学(+試験)
「気道異物除去方法」「直接圧迫止血法」「救急蘇生法と民法」を座学で教授してもらい、終了となります。
普通救命講習(2)は加えて修了試験があります。
そして、それぞれの講座の修了証明書をもらう事ができます。
講座を受講してみて
全体の個人的な感想としては、「市民が出来る救命方法と、市民がしてはいけない(事態を悪化させる)救命方法」がある事に新鮮な驚きを覚えました。
映画やドラマで見る救命方法には「してはいけない救命方法」も情報として混在しているので、あらためて正しい知識を知る事、共有することが必要と感じました。
また、「テキストを読んで知る救命方法と実際にダミー人形を使った実感」には大きな開きがあり、テキストを読んだだけでは理解できた事にはならないと痛感しました。
「3年に1度受講すれば、家族に何かがあった時でも体は動きそうだ」という実感を持てたのは、大きな収穫でした。
事故や病気・災害など予期せぬ出来事で家族の身に危険が及んだとき、自助共助を行う技能があるのかないのかでその後の結果は大きく変わるかもしれません。
また、通りすがりの人(バイスタンダー)として災害時にも共助しあえれば、救命の連鎖がつながり助かる人も増える事でしょう。
受講して良かったと思える講習会でした。
まとめ
◆普通救命講習受講で身につけた救命方法はドラマや映画とは違う場合がある
◆書籍で知った知識と体験では、実感が大きく異なる
◆普通救命講習を受講することで、救命の連鎖の重要性をあらためて感じることができた
参考
◆総務省「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」
◆平成19年度実績評価書
◆非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書
◆東京防災救急協会
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