災害は季節を問わず、いつでも起こりうるものです。特に冬場の災害は、体調管理や食事など、様々な面で困難が予想されます。いざという時、慌てず的確な行動を取るためには、日ごろの訓練や正しい知識を積極的に取り入れることが大切です。
今回は、冬の災害に備えて、避難体験をシミュレートするためのノウハウをまとめます。
冬の避難所は見えない困難がいっぱい!
1995年1月に発生した阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)では、真冬の災害となり、避難所ではインフルエンザの流行やエコノミー症候群、誤嚥性肺炎など、多くの震災関連死につながる健康被害が見られました。
真冬の時期、避難所の体育館などでは暖房器具もあまり効果を発揮せず、地べたに座り続ける時間が長くなるため、運動不足を引き起こします。また、災害によるストレスもあり、免疫力が著しく低下し、風邪やインフルエンザの流行にもつながりやすくなります。つまり、冬の避難所生活は、寒さや災害のストレスで体調を著しく崩しやすいのです。
せっかく助かった命を、その後の避難生活で失うようなことになってしまうのはとても残念なことですよね。
冬場の避難所生活を快適に送るためには、前もっての「体験」をしておくことが実はとても役立ちます。
仮設トイレ・非常用トイレを使ってみよう
トイレを我慢すると、エコノミー症候群を引き起こしやすくなり、健康にも悪影響を及ぼす恐れがあります。しかし、避難所生活ではトイレを我慢しがちな傾向にあるようです。その原因の一つが、「和式トイレ」にもあるようです。
仮設トイレは避難所にもよりますが、「和式」トイレが設置されることが多いです。工事現場や屋外でのイベントなどで設置されるようなトイレが使われることが多いようです。
ここで問題となるのが、「和式トイレを使ったことのない子ども」と「高齢者」です。近年の住宅や商業施設、学校などでも和式トイレの数は著しい減少傾向にあります。また高齢者は、かがむ姿勢が足腰に負担をかけるため、和式トイレを避ける傾向にあります。
そのため、和式に慣れていないお子様には、和式トイレのトレーニングをさせるのもいい防災訓練の一つと言えるでしょう。実際に、屋外イベントなどで仮設トイレを体験してみることも有効です。
また、近年は段ボールやプラスチックなどで簡易的に作れる「非常用トイレ」も市販されています。こちらは腰かけ型になっているので、高齢者の方も利用しやすくなっています。しかし、普段の洋式トイレとは高さや座り心地がかなり異なりますので、一度は体験しておくことをお勧めします。
災害時のトイレ事情は、まだまだ改善の余地があります。子ども、高齢者、女性など、それぞれの立場によっても「トイレに行きにくい」という声があります。避難所では、皆が協力して「トイレはきれいに使う」「プライバシーを考える」ことを共有することが大切です。また、災害が来る前に、地域のみなさんでこのようなことを話し合う機会を持つことも重要です。
避難に必要なものを見極める
非常用持出袋を備えているご家庭も多いことと思います。しかし、その中身、冬の災害に本当に役立ちますか?
必要なものを見極めるのにお勧めなのが、「防災ピクニック」や「防災キャンプ」です。屋外で、実際に備蓄している食料を食べてみたり、熱源を使ってみたり、非常用ラジオを手回し電源で使ってみたり、ホイッスルを吹いてみたり。普段の生活では、なかなかやる機会のないことを「屋外で」やってみましょう。
屋外で食事をする際、スプーンがなくて不便だったり、熱源がうまく使えなかったり、また、冷たいままだとまずくて食べるのがつらいことが分かったり、いろいろな気づきがあるはずです。その気付きを活かして、備蓄食料や非常用持ち出し袋の中身を再考してみましょう。
また、非常用持出袋が重くてすぐに疲れてしまう場合は、「重すぎて避難が困難」になってしまいます。家族で分担したり、自分に合った重さにすることも避難の際は重要です。実際の災害時は、普段の道路とは様相が一変し、がれきの中を歩くことが予想されるからです。
さらに、冬の屋外で長時間過ごすことで、「防寒対策」も見えてきます。カイロがあるともっと良い、ブランケットがあると良いなど、寒さ対策も改良できます。
まとめ
・冬場の避難所生活では寒さやストレスで体調を崩しやすいということを知る!
・和式トイレや非常用トイレの体験をしておくことで、避難所のトイレも怖くない!
・屋外での食事や手回しラジオを使う体験を通じて、今の備えに足りないものを体感して、活かそう!
参考サイト、参考文献
◆Yahoo!ニュース:「避難所のトイレとストレス:工夫してキレイに使い続けよう:キレイなトイレは命を救う:熊本地震」
◆子どもを守る防災手帖:「MAMA-PLUG編・著」KADOKAWA:2016年版