2016年11月30日京都府舞鶴市の海岸に北朝鮮から漂流してきたと考えられる木造船が見つかり、付近から8人のご遺体が見つかりました。
全長約10メートル幅3メートルほどの船で冷たい日本海を漂流するのは、非常に困難な旅であったと考えられます。
現在も内戦が続くシリアが面する地中海では、ヨーロッパへの避難を求めてボートに乗り込んだ難民が危険な航海を余儀なくされています。
日本でも漂流するといった事故が起こっていますが、万が一映画のように孤立無援の状態で漂流してしまった場合、助かる方法があるのか調べてみました。
代表的な海難遭難事故
良栄丸遭難事故に学ぶ
日本人が実際に犠牲となった事故でも詳細な記録が残っているものに1926年12月から11か月間漂流し発見された良栄丸遭難事故があります。
乗員12名全員が亡なられた事件であり、日記に記された内容から遭難事故の辛さが伺い知れます。
国立国会図書館デジタルコレクションより読める木内省吾編著の「国際エピソード」と日高孝次著の「海流の話」で詳しく内容が紹介されています。
良栄丸は和歌山県に船籍を持つ42トンほどの小型漁船で、マグロ漁の為に神奈川県の三崎港より銚子沖へ出ていました。
そして悪天候により港へ戻ろうとしていたところでエンジンが故障し漂流する事になったのです。
当時は無線が装備されておらず、風によって東に大きく流されてしまいました。
帆走によって戻る事を試みますが季節風が西から東へ吹く為上手く戻れず、途中行き交う船にも気が付いて貰えないまま、食料が尽きるまで流れが向かっているアメリカへ向けて漂流し、最期まで日記に詳細を記載していきましたが5月に記述が途切れています。
そして1927年10月31日にアメリカのシアトル沖にて貨物船に発見されるのです。
漂流時に必要な物
充分な食料と水と通信手段
良栄丸遭難事故から伺える最も大切な装備としては通信設備が挙げられます。
もし、良栄丸が無線を持っていて付近の船や陸地に対してSOSを発信出来れば救助されていた可能性が高かった事でしょう。
遭難時に真っ先に行うべき事は救助の要請です。
次に重要なのは食料と水です。
良栄丸では食料が真っ先になくなり、釣り上げた魚や渡り鳥、海藻を中心に食い凌いでいますが、栄養失調等を引き起こしています。
海水を飲む事は出来ませんから、真水も貴重な存在です。
救援を要請出来ても、その到着まで身を持たせる事が出来なければ生還は難しい事なのです。
他にも船が沈んでしまった場合に備える救命ボートといった装備があれば万全です。
漂流者の救助体制
海上保安庁や自衛隊が担当
日本における漂流事故の救難体制は海上保安庁と自衛隊が担っています。
2013年6月21日、宮城県金華山沖南東約1200kmにてニュースキャスターの辛坊治郎氏と全盲のヨットセーラー岩本光弘氏がヨットにて航海中に接触物により浸水、ライフライトという荒れた海でも使える救命艇で漂流するという事件が発生しました。
直ぐに救難要請が行われ、通報を受けた海上保安庁は長距離救難になるという観点から海上自衛隊に人命救助に係る災害派遣を要請しました。
海上自衛隊は厚木基地に所属するP-3C哨戒機を離陸させ、救命艇を確認すると共に最新の救難飛行艇US-2を岩国基地より出動させるも、一度目は波が高く断念しました。
夕刻に再度救難を実施して無事に救出し夜には厚木基地へ2人を送り届けています。
海上自衛隊の救難飛行艇は日本が世界に誇る技術で造られた飛行艇であり、船よりも早くヘリコプターよりも遠くへ進出する事が出来ます。
長距離海難救助は非常に難易度が高く優れた装備が求められます。
US-2は最高の能力を持った救難飛行艇としてインドなどへの輸入が検討されています。
客船事故や飛行機の不時着といった出来事で、海難事故に遭い漂流する可能性はゼロではありません。
日本では万が一に備えて日々訓練した人々が待機しています。
まとめ
・漂流事故では救助を要請出来ないと長期間助けが期待出来ない
・SOSを出す通信設備と生きながらえる食料・飲料水は必須
・日本では海上保安庁や自衛隊が救難体制を整えている
参考サイト
◆防衛省・自衛隊 > 報道資料 > お知らせ > 宮城県金華山(きんかさん)南東方沖における人命救助に係る災害派遣について(最終報)
◆国立国会図書館デジタルコレクション