インフルエンザの怖い合併症にインフルエンザ脳症があります。インフルエンザ脳症は子どもに多くみられ、後遺症リスクや死亡率が非常に高い疾患です。日本での発症率が高いのですが、原因は判明していません。
発症状況を見ると、2014~2015年のシーズンから2018~2019年で計845件のインフルエンザ脳症が確認されました。インフルエンザが流行するとそれに比例してインフルエンザ脳症の患者も増加傾向にあり、患者数は11月末から12月で増加し、1月末から2月にかけてピークを迎えることが判明しています。
インフルエンザ脳症は急激に症状が進行する為、早期に命を落とすケースもあり、注意が必要です。今回は、インフルエンザ脳症について詳しくご紹介いたします。
インフルエンザ脳症とは

インフルエンザが重症化し、インフルエンザ脳症を発症することがあります。インフルエンザ脳症は致死率、後遺症リスク共に高い為、インフルエンザのもっとも怖い合併症と言われています。以前は約30%の致死率、約25%に後遺症のリスクがありましたが、現在は致死率が約7~8%、後遺症は約15%まで改善しています。しかし、それでも注意しなければならない疾患には変わりないでしょう。
インフルエンザ脳症を発症する年齢は、3~13歳が多いようです。子どもが発症しやすいのですが、成人もインフルエンザ脳症を発症し、死亡するケースがあるので注意が必要です。
インフルエンザ脳症の患者数は、インフルエンザの流行に左右されます。例年、インフルエンザは11月下旬から患者数が増加し始め、2月上旬でピークを迎えますが、インフルエンザ脳症の患者数も類似しているのです。
インフルエンザ脳症は急激に発症し、症状が進行する疾患です。インフルエンザが長引いて症状が現れるわけではありません。主な症状は38度以上の高熱、全身倦怠感、筋肉痛、咳や鼻水等インフルエンザの症状に加えて、けいれんや意識障害、異常行動、頭痛、嘔吐等です。けいれんに関しては、熱性けいれんを起こしやすい4歳以下の子どもに多くみられます。インフルエンザの症状以外に気になる症状が現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう。早期に適切な処置をすれば、致死率を下げることができるのです。
インフルエンザ脳症を予防するには

インフルエンザ脳症を予防するには、インフルエンザワクチン接種が最も効果的です。インフルエンザワクチンは、インフルエンザの重症化を予防する効果が期待されているからです。また急激に発症する疾患なので、インフルエンザの診断を受けた時には既に発症を防ぐことができません。インフルエンザ脳症を防ぐのではなく、インフルエンザを予防することを意識するといいでしょう。
インフルエンザ脳症は、脳からウイルスが検出されるわけではありません。現状では、インフルエンザ脳症が発症する詳しいメカニズムは判明しておらず研究段階です。インフルエンザ患者は毎年11月以降に流行し始めるので、事前にインフルエンザワクチンを接種し、予防に努めましょう。
まとめ
・インフルエンザ脳症は致死率、後遺症リスクが高い疾患
・インフルエンザ脳症とインフルエンザの流行は類似している
・子どもが発症しやすいが成人も発症し死亡することがある
・インフルエンザが長引いて発症するわけではない
・インフルエンザ脳症を防ぐにはインフルエンザワクチンが最も効果的
参考サイト
◆一般社団法人日本小児神経学会「小児神経医がお答えします!小児神経Q&A」
◆NIID国立感染症研究所「インフルエンザ脳症について」
◆NIID国立感染症研究所「インフルエンザ脳症の新しい治療法について」
◆NIID国立感染症研究所「急性脳炎(脳症を含む)サーベイランスにおけるインフルエンザ脳症報告例のまとめ」