いじめ防止対策推進法は、平成25年6月28日に公布された日本の法律です。いじめから子どもを守る為、いじめを防止する為の基本方針が定められています。学校や行政は基本方針に基づき、いじめを防ぐ為の取り組みが必要となります。
ですが、依然としていじめはあります。法律が施行されても、いじめによって苦しむ子どもは多くいます。いじめは深刻な社会問題の一つです。一人でも多くの子どもが救われるように、いじめの現状について関心を持ち、保護者だけではなく地域全体で協力していくことが大切でしょう。
今回は、いじめ防止対策推進法といじめの現状について詳しくご紹介いたします。
いじめ防止対策推進法とは
平成25年に公布されたいじめ防止対策推進法とは、学校や行政に対するいじめ防止や対応についての責務を規定したものです。学校や行政は基本方針に従い、いじめを防ぐ環境づくりや指導、いじめの早期発見、相談体制の整備等を行う他、いじめ防止や対処に必要な組織を置く必要があります。重大事態となった場合は調査及び報告が義務付けられ、必要に応じて警察に通報します。
いじめ防止対策推進法が施行された背景には、2011年(平成23年)に起きた大津市中2いじめ自殺事件があります。この事件をきっかけに国会でいじめに関する議論がされ、施行されることになりました。
いじめ防止対策推進法は子どもを守る為の法律なのです。
いじめの実態
いじめ防止対策推進法が施行された後のいじめの実態について知る為、2016~2018年のいじめ追跡調査を年齢・内容別で見てみましょう。
まずは小学校4~6年生の調査結果についてですが、仲間はずれや無視、陰口、からかう、悪口の行為は、いじめ行為の中でも被害経験率が高い傾向にあります。経験したことがあると答えた人数に関しては、3年間で大きな変動はありません。男女別では女子に多いことが判明しました。
被害経験率が増えたり減ったりしているのは、軽くぶつかる、叩く、蹴るという行為です。ひどくぶつかる、叩く、蹴る、金銭強要や器物破損等についての被害経験率は低い傾向にあり、人数は増減を繰り返しています。男女別でみるとぶつかったり、叩いたりする行為は男子に多い傾向にあります。
中学生の調査結果を見ると被害経験率が高いのは、小学生と同じく仲間外れや無視といった行為です。被害経験率が低い行為についても小学生と同じくぶつかる、叩く等の行為となり、人数は増減を繰り返しています。
今度は警察庁によるいじめ関連の事件件数を見てみましょう。いじめによる事件件数は2016年(平成28年)に146件、翌年の2017年(平成29年)には148件、2018年(平成30年)は155件でした。近年の件数を見ると令和元年が192件、令和2年は130件となり、増えたり減ったりしています。
いじめに起因する事件の罪種別を見ると、最も多いのは暴行でした。次いで傷害、恐喝、強要となります。他にも強制性交や強制わいせつが発生しています。
今回ご紹介した通り、いじめの件数に大きな変動はありません。法律が施行された後も、依然としていじめの被害に遭い、苦しんでいる子どもがいるのです。
いじめは深刻な社会問題です。一人でも多くの子どもがいじめで悩むことがないように、大人もいじめの実態に関心を持ち、地域全体で取り組む必要があります。
まとめ
・いじめ防止対策推進法は学校や行政に対するいじめ防止や対応についての責務を規定したもの
・法律が施行された背景には大津市中2いじめ自殺事件がある
・小学校4~6年生では仲間外れや無視等の被害経験率が高い
・軽くぶつかる、叩く等の被害経験率は低く、人数は増減を繰り返している
・中学生のいじめの内容や被害経験率は小学生とほとんど同じ
・いじめ関連の事件件数には大きな変動がない
参考サイト
◆文部科学省 国立教育政策研究所 いじめ追跡調査2016-2018
◆警察庁 令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況