今度は前回の「普通救命講習」に続いて、東京防災救急協会の上級救命講習(東京都では総じて応急手当講習という)を受けてまいりました。
救命技術だけではなく、この際どういう応急手当(ファーストエイド)があるのかという事に興味を持って申し込みました。
普通救命講習を受けた時の体験記はこちらをご覧ください。
この記事は東京消防庁が実施する上級救命講習を基礎にして執筆しておりますので、他の道府県の読者様は受講申し込みの際はあらためて各実施主体に問い合わせてみてください。
また、体験記なので受講内容は主観を交えた抜粋であって、指導要綱に定められたものに正しく準拠しているかは保証できません。
受講の際にはきちんと指導員の指導に従ってください。
上級へステップアップ講習
今回は上級救命講習をそのまま受けるのではなく、ステップアップ講習を受けました。
これはどういうものなのかというと、上級救命講習の中身は普通救命講習に応急手当の講習が加わったものになるので、普通救命技能認定証を持っている人(普通救命講習を受けた人)は上級救命講習の内、救命の講習を免除されて応急手当部分より途中参加する事ができる制度です。
ステップアップ講習のメリットとしては文字通り途中参加になるので、その日の講習時間が8時間拘束から4時間となります。
なかなかまとまった時間が取れない方は普通救命講習4時間を受けて、さらに別日に上級救命のステップアップ講習4時間と柔軟にスケジューリングできる様になっております。
今回、私はこの様に分けて受講しました。
デメリットとしてはそれぞれ教材費・交通費が別々にかかりますので、上級救命講習で一度に受けた方がお財布には優しくなります。
それでは、当日体験した流れをご紹介します。
●受講申し込み
まず地元消防署や防災協会などに、上級救命講習受講の申し込みを行います。
そこで実施日時と受講場所を選択します。
これは普通救命講習と同じ流れです。
当日の持ち物(テキスト代)などを教えてもらえますので、忘れないようにしましょう。
遅刻・早退は講習を受けた事にならない場合がありますので、注意が必要です。
●集合~復習~いきなり試験
当日、講習場所となる防災館や消防署に集合します。
ステップアップ講習でしたので、当日既に救命技術の講習を受けた人とは別に指導員の元、まずは復習を行います。
救命技術は5年に1度見直しがされます。
一緒にステップアップ講習を受けた人の中には、改訂前の技術で演習を行った方がいました。
そういった普通救命技能証明書を持っている受講生は、文字通り最新の技術へステップアップ指導を受けていました。
この復習時間が15分。
そして先に救命講習を受けている方に混じって、いきなり救命技能検定試験が行われます。
久しぶりなので、アップアップしながらも無事合格しました。
実際にバイスタンダー(たまたまその場に居合わせた一般市民)になった際にも、この様に焦りながらも一生懸命に思い出して救命措置を行うのかなと感じました。
本当の救命処置では焦ってはいけないのですが、普段の訓練が大事という事が身に沁みました。
●講習開始
次はいよいよ応急手当の講習が始まります。
内容は「包帯法による外傷の応急手当」です。
まず座学で、包帯法による外傷の応急手当の目的を教わります。
それは
・包帯で傷を圧迫して止血する
・包帯で傷を被覆して傷の保護と感染を防ぐ
・損傷部位の固定
という事でした。
まさに救命処置に至らない状態の傷病者への応急手当です。
東京都では普通救命講習も上級救命講習も、総じて応急手当講習と呼びます。
ただの言葉尻の問題なのですが、ようやく普通救命講習とは違って、応急手当講習に参加したという実感を持った事を覚えています。
●包帯法の実習
さて、座学が終わったら次は包帯法の実習です。
ここで使われるのはなんと三角巾!
三角巾と聞くと、薬局で売っているところも見ないしどこかレトロな感じもして、三角巾に対して持っていたイメージは太平洋戦争でした(失礼)。
指導員に聞いてみると、救急車には大量に積まれているそうです。
現代においてもきちんと使われている生きた道具だとこの時に初めて知りました(これまた失礼!)。
さて、実習では受講者2人1組になって、お互いに三角巾で具合を確かめていきます。
そしてこの三角巾の偉大さを知りました。
頭部から手足とその関節部・指までをそれぞれしっかりと圧迫できる他、被覆・固定する事ができます。
その多様な使用方法に大変驚きました。
座学で教わった様に、止血には圧迫・火傷には被覆・骨折には固定と様々な外傷に対応する事ができます。
この三角巾と人工呼吸用のマウスピースがあれば、バイスタンダーとして大分出来る事が違うのではないかと、実感を持つことができました。
しかしながら方法や手順が無数にあるので、ロープワークなどと同じで普段からやっておかないと、その日の内に忘れてしまうでしょう。
せっかく上級救命講習を受けたのに、災害時に三角巾があっても思い出せない。
そんな事にならないように普段から練習しておこうと思いました。
●傷病者管理と搬送法の実習~修了試験
そして包帯法の次は傷病者管理と搬送法です。
衣服を緩めたり、保温したり、体位管理を行います。
搬送法も傷病に応じて様々な方法があります。
これらは指導員実演の元、ポイントを整理していきます。
ここまで終わったところで修了試験が行われます。
今回も無事修了試験をパスして、上級救命技能認定証を頂きました。
上級救命講習を受けてみて
今回上級救命講習を受けて感じたのは、さすが上級というだけあって教授される知識や技術も膨大であって(途中参加なのに)、講習終了後も定期的に自主練習をしなければ、この技能認定証は意味をなさないな……というものでした。
実際に災害になれば、普段目にしない三角巾が大量に用意されるでしょう。
しかしながら使い方が思い出せずにそれらは有効な使い方をされずに、隅に置かれるかもしれない……そんな嫌なイメージが頭に浮かびました。
そういった意識改革を促された講習でした。
防災グッズの中に三角巾があっても、使えないのではあまり意味を成しません。
家族の為にも講習に参加してみる事をオススメいたします。
まとめ
・三角巾を扱えるだけで、傷病者にできる手当てが格段に変わる
・書籍で知った知識と体験では、実感がさらに大きく異なる
・救命の連鎖の重要性がさらに身に沁みる