厚生労働省は2017年7月24日に、野良猫に噛まれた50代女性が「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染し、死亡したことを発表しました。この事例のように、身近にいる動物が思わぬ感染症や病気を持っている可能性があります。
今回は身近な動物から移る可能性のある感染症(動物由来感染症)の種類について解説するとともに、その感染症の予防法についても解説します。子どもは動物に触れる機会が多いので、親子で理解を深めておきましょう。
身近な動物から移る可能性のある感染症
①狂犬病
狂犬病は犬などの哺乳類に噛まれることによって感染する感染症です。狂犬病に感染すると、麻痺や錯乱といった症状があらわれ、100%の確立で死亡に至ります。日本国内では1956年を最後に人の感染例がないものの、海外で犬にかまれた日本人の死亡例が2件確認されています。また世界中では毎年5万人の死者が出ており、恐ろしい感染症と言えるでしょう。
狂犬病の予防法として、日本では飼い犬に狂犬病の予防接種が義務付けられています。だからといって安心するのではなく、「野生動物にはむやみに近寄らない」「海外渡航をする時は狂犬病の予防接種を受ける」といった予防法を心がけてください。
②猫ひっかき病
猫を飼っている方は、猫にひっかかれた経験はありませんか?猫ひっかき病は猫に噛まれる・ひっかかれることから細菌感染を起こす感染症です。猫ひっかき病に感染すると「傷口が腫れる」「リンパ節が腫れる」「発熱」といった症状を引き起こします。猫ひっかき病は自然治癒するケースがほとんどですが、稀に脳炎などの症状があらわれることがあるので、注意しましょう。
猫ひっかき病は、「猫の爪を切る」「傷口を消毒する」「猫に触った後は手を洗う」といった初歩的な感染症の予防法を行うことで防ぐことができます。
③オウム病
オウム病は鳥類の排泄物に含まれる病原菌を吸い込む、口移しで餌を与えるといった濃厚な接触をすることによって感染する感染症です。オウム病に感染すると、1~2週間の潜伏期間を経て、高熱や咳などの症状が現れます。ペットに鳥類を飼育している方は、オウム病を予防するために、「ゲージをこまめに清掃する」「排泄物の処理をする時はマスクをする」「定期的に部屋の換気をする」ようにしましょう。妊婦は重症化しやすいので、妊娠している方は、鳥類との接触を避けるようにしましょう。
④サルモネラ感染症
サルモネラ感染症はサルモネラ菌によって引き起こされる感染症で、感染すると急性胃腸炎などの症状を引き起こします。サルモネラ症というと肉や卵を原因とする食中毒の印象が強いですが、幼児や高齢者を中心にミドリガメやイグアナなどペットの爬虫類からの感染報告があります。
サルモネラ症を予防するためにも、「爬虫類を触った後は手洗いをする」「ゲージの掃除をする時は周囲の汚染にも気を配る」などの予防法を行いましょう。
⑤寄生虫
寄生虫も身近な動物から移りやすい感染症です。動物由来の寄生虫がもたらす感染症の種類の中では、北海道に生息するキツネが感染源となる「エキノコックス症」や、猫の排泄物から感染する「トキソプラズマ症」が代表的です。エキノコックス症は10数年の時を経て肝機能障害をもたらします。トキソプラズマ症は、妊婦が感染すると流産や死産に繋がるとともに、胎児の神経系統に影響を及ぼすと言われています。
これらの感染症の予防法としては、「手洗いを徹底する」「ペットの排泄物の処理は迅速かつ清潔に行う」「猫は室内飼いにする」などの方法が有効です。
野生動物への接触は特に注意する
野生動物は感染症の元となる病原体を持っている可能性があります。ですからたとえ身近な動物であっても、接触を避けるようにしましょう。また、動物の死骸を見つけた時は決して触れず、最寄りの保健所や市町村役場に連絡をするようにしましょう。
子どもは好奇心から野生動物に触れてしまいがちなので、「動物にはむやみに触らないようにしてね」「動物が死んでいた時は触らないでパパやママに教えて」など、わかりやすい表現を通じて感染症の予防法を教えてあげましょう。
まとめ
・犬、猫、鳥など身近な動物から感染する感染症がある
・動物に触れた後は手洗いを徹底する
・ペットの排泄物の処理やゲージ掃除の際は「迅速に行う」「マスクをする」「換気をする」といった行動を心がける
・妊婦は動物への接触を控える
・野生動物には触れないようにする
参考サイト
◆厚生労働省:「動物由来感染症を知っていますか?」
◆厚生労働省:「狂犬病に関するQ&A」
◆猫感染症研究会
◆国立感染症研究所:「オウム病とは」
◆日本産婦人科医会:「妊娠とオウム病」
◆国立感染症研究所「サルモネラ感染症とは」
◆国立感染症研究所「エキノコックス症とは」
◆国立感染症研究所「トキソプラズマ症とは」